麻倉怜士のCESレポート


 最悪の経済情勢で開催されたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)だが、蓋を開けてみると、例年同様、今後のデジタルAVの展開のさまざまなトレンドが、明確に見えてきた。それをまとめるとTQSだ。TはTHREE DIMENTION、つまり三次元の立体映像がたいへんな話題であった。QはQUALITY、つまり画質の新傾向。SはSERVICE、テレビがネットワークに接続し、リモコンの簡単操作で、さまざまなサービスが受けられるようになる。TQSを解説しよう。


◆3D映像の饗宴・協演・競演
 例年はテレビ画面の大型化が話題だが、昨年、パナソニックが150型を発表してしまうともう先がない。それより今回のCESは、テレビ画面の内部の変化がとてもなく大きい。それが奥行き方向の3D映像だ。パナソニック、ソニー、LG電子、サムスン電子、ドルビーなとがテレビで3Dを楽しむ体験の提案を行なった。
 パナソニックは、記者会見の多くの時間を3Dの説明に費やし、ブースでは、映画やCG、実写などを編集した3D映像を流し、来場者に強い印象を与えた。編集が上手く、3Dの波に心地よく乗れた。ソニーブースではPS3による3Dゲーム、20世紀フォックスのアイスエイジなどの3D映画のデモンストレーションをしていた。ドルビーは現行のBDプレーヤーを使っての3Dワールドを提案。これは解像度がフルHD以下のものだが、一方、Blu-ray Discのフォーマット化では、フルHDの解像度を保ちながらの3D映像が規定される方向だ。
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▲ソニーブース。PS3で3Dゲーム映像をデモしていた。
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▲サムスン電子のメガネ無し液晶3Dディスプレイ
◆ネット接続テレビが一大トレンドへ
 
 アメリカの家庭では、パソコンとテレビを繋いで、パソコンに接続した映画やニュース映像などをテレビの画面で見るのがごくフツーになっている。それならば、パソコンなしで直接テレビがネットと接続し、パソコン向けと同じか、それ以上のサービスをテレビ画面で享受したらどうかというトレンドが明確になった。単にインターネットに接続するテレビではなく、サービスを画面に映すことで、天気予報、ニュース、株価などのさまざまな情報を得て、映画や音楽を楽しむというものだ。
 これにはサービス業者からみと、ふたとおりの系統がある。ひとつがインテルとヤフーが開発したプラットフォーム「ウィジェット・チャンネル」。リモコンでさまざまな情報が呼び出せ、すぐに画面に映すことができる。ウィジェットはオープンな環境で開発するソフトウェアで、開発キットも公開されている。ウェブ2.0的な環境にて、企業や個人などが開発に参加でき、さまざまなバラエティのソフトウエアが生まれる環境にあるという。東芝、ソニー、サムスン電子、LG電子などが、「ウィジェット・チャンネル」を支持。
 これはヤフーのテレビ陣営への浸透の証だが、その誘いにのらないのが、パナソニック。いってみれば反ヤフーのグーグル派だ。昨年のCESでYouTubeが受信できるプラズマ・テレビで注目を浴びたパナソニックは、グーグルと組み、今年はさらにアマゾンビデオを加えた。
 オンデマントで好きなプログラムが見られることが、テレビ視聴で当たり前になったことが分かった。
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▲サムスンのウィジェットチャンネルサービス。
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▲東芝でHDD&DVDレコーダーを開発してきた片岡氏もテレビサービスの担当へ。
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▲パナソニックはグーグル陣営と手を組む。
◆高画質化は4K×2Kの時代に
 フルHDの次は3Dと4K×2Kである。4K×2Kは、放送コンテンツがないので、実現性は薄いといわれていたが、CESで東芝が超解像でのアップコンバートを実現してみせた。次世代のテレビの画質向上策として、大いに注目だ。超解像作業は超高速プロセッサーのCellが行う。現在、東芝の液晶テレビにも第一弾の超解像技術が入っているが、本命は「1920×1080のフルHD→→4K×2K変換」だ。技術的には、いまのレグザでも採用されている再構成法をベースにしているが、ハイスピードのCellだから、今が一回のフィードバック・ループのところ、三回回せるという。実際にブースで通常のやり方での変換と比較しながらチェックしたが、細部の解像感がかなり違うことが分かった。 ここまで飛ばなくても、現行のフルHDテレビとしての画質改善の方向も、CESで明らかになった。液晶テレビは240Hz、ローカルディミンング付きのLEDバックライトが当たり前になり、著しく画質改善が進んだ。プラズマ・テレビはパナソニック以外にはめぼしい話題がないのが残念であった。