描いた絵を動かし「録画」してアニメーションにできるソフトPICMO


「10分でアニメーションが作れる」という触れ込みの、新しい発想で作られた画期的なアニメーションツール。アニメーションを作るといえば、絵が動いて見えるのに膨大な枚数の絵を描く必要があった。アニメーション制作ソフトでは、オブジェクトの移動や拡大・縮小などは自動化してくれるものの、キャラクターのポーズの変化などはやはり何枚もの絵が必要だ。しかし、この「PICMO」(ピクモ)は、たった1枚の絵を動かしながら「録画」して、それを再生すればアニメーションになってしまう。ちなみにPICMOとは「ピクチャーモーション」の略。


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PICMOの生みの親は、アーティストユニット「うるまでるび」。NHK「みんなのうた」で放映され人気を呼んだ「おしりかじり虫」の作者で、伝説の子供番組「ウゴウゴルーガ」の「しかと」など数多くのアニメーションを手がけてきた。うるまでるびが開発リーダーとなり、2Dで描いた図形を3D化するモデリングプログラム「Teddy」の開発者である東京大学情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻・五十嵐健夫准教授と、エディターソフト「VZ EDITOR」の開発者である兵藤嘉彦氏らが協力して、5年ほど前から開発がスタートした。
開発当初は「うるまでるび(UD)ペイント」と呼ばれていたPICMOの大命題は、「どうやったら楽しく描けるか」。これまでさまざまなソフトを用いてアニメーションを作ってきたが、なかなかいいものにめぐり合えない。メインで使ってきたFlashにしても描画機能や一部の操作性に不満があった。なるべくコマンド操作を意識せず、描くことに専念したい。そのためにはまず、細かなウィンドウがたくさんあるという煩雑さを解消する必要があった。
PICMOの基本的なインターフェイスは白いキャンバスがあるだけで、ツール類は普段隠れていて必要なときだけ表示される。いかにも描くことに専念できる設計だ。しかも絵柄をキャンバス内に厳密に収める必要はなく、どんどんはみ出しても描ける。
上手下手に関係なく、試行錯誤を楽しむ
もう一つ、PICMOの重要な命題は、絵の上手下手に関係なく「絵を描いたり動かしたりする」行程を楽しめること、さらに作品の完成度よりも「あれこれ試行錯誤する」楽しみを味わえることだった。そのための機能がいろいろ盛り込まれている。
例えば「いい子いい子ペン」は、描いた線をなでるようになぞっていくと徐々に線がきれいに整っていく機能。これを使えば絵が苦手な人でもそれなりの絵が描けるし、いびつな線もきれいに整えてくれる。描いた線を引っ張って動かせるが、通常のスプラインと違ってポイントを意識する必要がない。また元の形状を記憶する基本性質があり、「形状記憶ひっぱりペン」を使って元の形状や性質を活かしつつ、いい按配に動かしたり変形したりできる。PICMOは2Dのソフトながら実は3Dのアルゴリズムでできており、これらの機能には申請中のものを含め複数の特許技術が盛り込まれているという。
着彩用のパレットは最小限の色が並び、適当な色を選んであとでRGBスライダーで色を変えられるようになっている(ダイナミックカラーチェンジ)。このスライダーを使えば、通常の「色を選び直して塗り直す」作業が省略できる。また、一度使った色はキャンパスの横にパレットとして残るので、塗り残しに気づいたら素早くそこから選択できる。
1枚の絵が動き出す
PICMOの最大の目玉は「アニメクリップ」機能である。これは1枚のマウスで動かしてアニメーションにするもので、絵を自然に変形させる特許技術と、マウスで動かした軌跡を「録画」する機能で成り立っている。通常のアニメーションは1秒間に12コマの絵を使用する。1分間の作品を作るとすれば720枚の絵が必要になるわけだが、この機能はそれを1枚でも可能にしている。
描いた絵をエリアで囲み「アニメクリップ」を選択すると、その絵が「キャラクター」として宣言され、動かせるようになる。動かしたいポイント(手足など)に赤いピンを打って、ドラッグして動かす。「録画」ボタンを押して動かすとその動きが記録される。別の動きをする際も前の動きが記憶されていて繰り返されるので、例えば左足の動きを先に作って次に右足を動かして歩いているような動きにすることが可能だ。
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PICMOで描いたシマウマの絵を「アニメクリップ」で動かす作業画面。四角で囲まれた部分が「キャラクター宣言」されている。赤いピンで制御点を設定し、ドラッグして4本の脚と首に動きをつけていく。キャラクターの位置を動かして画面を横切るようにも設定できる。PICMOの解説サイトで、この制作プロセスが見られる。



ビットマップの画像や写真も取り込めるので、実写素材を使ったアニメーションも作れる。複雑な動きを作りたい場合は、「タクト(指揮)モード」を使って動きの途中のポーズを作り登録し、タクトを振るようにマウスを動かすとスムーズに動きをつないでくれる。さらに、その際にマウスを動かした軌跡を編集して動きを整えたり変えたりもできる。Flashなど従来の動画ソフトのようにキーフレームを指定する必要もない。
効果音やBGMをつけることもできる。PICMOにはさまざまな音素材や背景素材、キャラクターまであらかじめ登録されているので、それを使うことができる。通常、背景や音などはタイムライン上に配置して編集管理するが、実はPICMOにも普段は隠れているがタイムラインは存在しており、複数のキャラクターや背景などをレイヤーで重ねて配置したりもできる。1コマ1コマ描いて動かす通常のアニメ手法も可能で、その際には前のコマを透かして見るいわゆるオニオンスキンの機能もある。
作った作品を手軽に公開
完成したアニメ作品はFlashやQuick Timeに書き出すことができる。また、メニューから選ぶだけでダイレクトにYouTubeにアップロードできる。すでに個人でYouTubeアカウントを持っている人はそれを利用してもいいし、持っていない人もPICMO共通アカウントを利用することができる。このチャンネルではすでに先にアップされた他人の作品を見ることができる。
発表会の席でうるま氏は、「多くのコンピューターソフトはすでに頭の中にあるものを形にする機能では優れているが、いじりながらだんだんイメージができていくようなソフトはあまりなかった。コンピューターで絵を描いたりアニメを作るなんて考えもしなかった人にもぜひ使ってほしい」と挨拶。今後は小学校低学年や幼稚園児に向けたキッズ版やiPhoneアプリ版、さらに将来的にはこれをベースにしたプロ向けソフトも作りたいと展望を語った。現在は海外向けに英語版を用意中だという。

ダウンロード版 ¥9,800
パッケージ版 ¥12,800
※対応OS:Windows XP/Vista/7, Mac OSX 10.5以降
問:チェリコ・エンターテインメント info@chelico.net
http://picmo.com/