連載【旅の鉄道ムービー】第10回 ズームで見せるか、カット割りするか?


前回まで列車を追うフォローやズームについて書いてきました。今回は周辺の風景と列車を繋ぐフォローとカット割りです。
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場所の雰囲気を伝えるには
ズームだけでなく、カット割りで見せることも必要


美しい風景の中で撮影をして帰り、映像を見たときに、映像を見せた人に周辺の風景や雰囲気が伝わらないということはないでしょうか? 
自分でも経験がありますが、本人としてはまわりの風景を充分見てきて頭に入っているので、その中の1シーンを見ただけで周辺の空気感まで再現して映像を見ることができます。それに対して初めて映像を見る人にはそれを感じられずにギャップが生まれます。
「きれいな花の横を走る列車」「昔ながらの町の横を走る列車」「荒波の横を駆け抜ける列車」・・・などを見せる時に、印象的な部分と鉄道風景をズームやカット割りで、うまく繋いで見せることで場所の雰囲気を伝えることができます。
 今回の作例は埼玉県八高線の東飯能~金子の鉄橋付近に咲いていた曼珠沙華の花を入れて撮影をしたシーンです。曼珠沙華の花は複雑な形のためやや引いたルーズなアングルだけで撮影すると赤い固まりにしか見えません。いかにも秋らしい印象的な形と鉄橋を見せるために二つの方法で撮影してみました。ひとつ「花のアップ」から「花と鉄橋のルーズ」のアングルへズームを使って見せています。位置関係がはっきり分かって現実性があるのと同時に説明の要素が強く出ていて、「曼珠沙華が鉄橋の下に咲いています」ということが分かりやすい映像です。

 もうひとつは「花のアップ」「花と鉄橋のルーズ」をそれぞれフィックスで撮影して画面を切り替えて見せています。こちらがカット割りです。曼珠沙華の形をしっかり認識した上で花のある鉄橋に進み自然に見ることができます。撮影を開始する前に、どちらの撮り方が作ろうとする作品のイメージなのか考えながら撮影をすることが大切です。

今月のおすすめ路線 予讃線


予讃線は香川県高松駅から愛媛県松山駅(ここまでが電化)を経由して宇和島駅に至る路線。電化の区間には特急しおかぜなどが走っています。初冬の愛媛といえばもちろん愛媛みかんです。沿線の各地には段々畑に黄色のみかんがたわわに実ります。秋も深まるとミカンも黄色くなってきます。作例の畑は夏みかん系なのでしばらくは木になっているのですが、オレンジ色の温州ミカンはお正月用に年末までには収穫されます。従って12月上旬から中旬が撮影しやすい時期です。作例は予讃線の浅海~大浦間の農道から撮影しました。この付近のほか宇和島に近い下宇和~立間にある法華峠もみかん畑の中を走るディーゼル特急宇和海が撮影できます。

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【筆者プロフィール】佐々倉 実
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鉄道映像作家。小学生の頃から鉄道写真を始め、大学生の頃、当時鉄道員をしていた今井洋氏と出会って以来、製作活動をともにする。現在は、佐々倉氏が撮影、今井氏が編集を担当し、雑誌やDVDパッケージを中心に鉄道ビデオを製作している。DVDに『魅惑の蒸気機関車 四季SL紀行』、『日本の鉄道 新幹線・特急編/蒸気機関車ローカル線編』などがある。2010年7月に『感動の美景鉄道』(MAXAM)が発売された。
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