鉄道ムービーの愉しみ「鉄道風景 春の撮影」2011年3月号


鉄道風景 春の撮影


南北に長い日本、春の風景が広がる時期は地域によって大きく異なります。春の代表「桜」も高知や九州で3月下旬に咲き始め、青森では4月下旬の開花と、大きな開きがあります。
もちろん春の風景は桜だけではありません。菜の花に始まって、梅、桃の花、花壇に植えられた春の花、田植えや山々の芽吹きなど題材は数多くあります。春の撮影は長期にわたって日々の変化が激しい時期、先週と今週では同じ場所も見違えるような景色になることも多いです。春の変化を追いかけての撮影は楽しいものです。


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▲肥薩線 渡―西人吉


 春と言えば桜。近年は開花の時期が年によって変わり、予想が難しくなりました。ただ、インターネットで情報が手に入りやすくなったので、撮影の日程だけ決めておいて、桜の情報で行く先を考えるくらいのほうが撮影しやすいかもしれません。
 また、桜の花の輝度は意外と高く、列車や緑に露出を合わせると花が白く飛んでしまうため、基本は花に露出を合わせて、列車によく日の当たる場所を選んで撮影するように考えたほうが良い結果になります。
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▲樽見鉄道 木知原駅付近

菜の花


 菜の花は地域や種類によって花の時期がまったく違い、鹿児島県の指宿枕崎線沿線では1月から満開になり、作例の青森県の大湊線沿線では5月中旬頃一面の花畑になります。菜の花の輝度はものすごく高く、花に露出を合わせてしまうと他のものが真っ黒になるほどです。菜の花の露出を基準に少しずつプラス補正して、花の色がしっかり残るぎりぎりに露出を決めるのがコツです。
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▲大湊線 陸奥横浜―有畑


 桃の花には大きく二つあって、長野や山梨など果樹園に見られる桃の花と園芸種の花桃です。場所や品種によっても異なりますが、一般的に桜よりも少し遅れて咲きます。果樹の桃では、花が開いて数日すると花の数を減らして大きな実を付ける摘花作業が始まるので、摘花前を狙います。
 花桃は比較的花の期間も長くて、撮影しやすい春の風景です。作例の神戸(ごうど)駅は4月中旬に美しい花を咲かせて観光客やカメラマンで賑わう駅です。

▲わたらせ渓谷鉄鉄道 神戸駅付近


 早春の花の代表は梅。画像は梅の名所水戸偕楽園に沿って走る風景です。梅の木には早咲き、遅咲きがあって木によって開花時期が異なり、また場所によっても大きく違います。紀伊半島や伊豆などでは1月下旬には開花して2月が見頃、作例の偕楽園では3月後半まで咲き続けます。
 大きな梅園などの開花情報はインターネットなどで確認できますが、小さな梅林や畑に沿って植えられる梅の木はなかなか情報として入ってきません。春の撮影中は、清楚な白い花が咲いていないか、注意しながら撮影地を探してください。
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▲常磐線 赤塚―水戸

田植え


 里の春の風景と言えば田植えです。田に水が入り、代かきをして水田の地面をならし、泥水が澄んだ頃が田植え風景一回目のチャンス。風のない日には、水鏡になって列車や風景を映してくれます。
 次は田植えのシーン。おじいちゃんから孫まで一家揃って田植え作業をしている後ろを駆け抜ける列車。兼業農家では田植えは休日に行われることが多いので、週末の撮影でタイミングよく出会える風景です。そして小さな苗がきれいに並んだ田植え直後の水田もきれいです。
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▲五能線 鶴泊―板柳

今月のお奨め路線 御殿場線


神奈川県の国府津から箱根の北側を廻るようにして静岡県の沼津駅を結ぶ路線で、昭和9年に箱根を貫く丹那トンネルが開通するまでは東海道本線の一部でした。現在はローカル線の風情ですが、広い駅などに特急「燕」などの優等列車が走った当時の面影を残しています。山北駅に近いこの撮影ポイントも、元々複線だった広い切り通しがローカル線らしからぬスケールです。
桜の開花は標高が高い割に早く、東京都市部の桜とほぼ同じ時期です。風景写真雑誌などでも取り上げられて鉄道ファン以外も多数訪れるため、跨線橋の上は混雑します。できれば平日の早めの時間に行くのがお薦めです。なお、切り通しの下は立ち入り禁止になっています。また、桜に沿った道から撮影できる場所も多いので、そちらのアングルを探すのも良いでしょう。


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【筆者プロフィール】佐々倉 実
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鉄道映像作家。小学生の頃から鉄道写真を始め、大学生の頃、当時鉄道員をしていた今井洋氏と出会って以来、製作活動をともにする。現在は、佐々倉氏が撮影、今井氏が編集を担当し、雑誌やDVDパッケージを中心に鉄道ビデオを製作している。DVDに『魅惑の蒸気機関車 四季SL紀行』、『日本の鉄道 新幹線・特急編/蒸気機関車ローカル線編』などがある。2010年7月に『感動の美景鉄道』(MAXAM)が発売された。
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