手作り&カスタム機材で野鳥を撮る! 取材レポート/2011・7月号連動


ビデオサロン7月号では、村崎譓一(けいいち)さんのハンドメイド&カスタム機材を紹介する記事を掲載しています。村崎さんは野鳥映像作家として活動中ですが、野鳥撮影のために便利なよう、機材にさまざまな工夫を凝らしています。ここでは、その機材の一部をご紹介するとともに、誌面では紹介しきれなかった話題と、村崎さんが撮影したフクロウの一種「トラフズク」の映像をお楽しみください。


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撮影中の村崎さん。今回出かけたのは、野鳥の宝庫として知られる渡良瀬遊水池。
村崎さんはもともとCGベンチャービジネスの経営に携わっていて、そこでは1枚の絵から3Dデータを起こして、そのデータをもとにアニメーションやフィギュアにまで展開するというビジネスをしていたそう。さらに、20~30代にかけては玩具のデザイナーをしていたというから、映像撮影とジャンルは違えど、ずっとクリエイティブな仕事を続けてきた人なのですね。
野鳥の観察と撮影を始めたのは2005年頃、そんなに昔のことではありません。毎日コンピューターと向き合う“デジタル漬け”の生活の中で、自然の中に身を置くような趣味を探し求め、ここにたどり着いたという話。そこからは毎週のようにフィールドに通うようになり、ついには会社の運営を若手に譲って一線を退き、現在は野鳥撮影に専念するというのめり込みよう。
野鳥撮影は基本的に超望遠の世界で、カメラを上に向けたままにしておくことが多く、しかもチャンスがいつ訪れるかわからないので、すぐ撮影が開始できるように電源は常にオンにしてスタンバイしておかなければなりません。そんな特殊な撮影条件のため、通常のアマチュアのみならず、プロが使うような機材でも、機能や使い勝手の面で「そのままでOK」というものがなかなかないのが実情。創意工夫して機材を改造したり、ないものは自作するという、村崎さんの「もう一つのビデオライフ」はこうした事情で始まっているわけです。
ここで、玩具デザイナー時代の経験が大いに役立っているそうです。おもちゃのデザインは、ただデザインするだけではなく、作成した設計図をもとに手作りで試作品を作ることまでが仕事で、当然試作の段階では専用の部品などないので、比較的容易に入手できる既製パーツを工夫して使いながら作っていくそうです。工作は得意中の得意というわけ。ちなみに村崎さんは、タカラトミー(当時トミー)から発売され世界的な人気を博した「ゾイド」シリーズの開発担当者だったのです。今回誌面で紹介している機材の多くも、東急ハンズや家電量販店などで簡単に手に入る素材を使って作られています。
撮影のときに感じた不便や、「こうだったらいいのに」というアイデアをもとに機材を改造、自作し、それを持ってまたフィールドへ出かけ、使い勝手を確認。何か問題点があればさらに手を加えて、使い勝手がいいように改良していきます。こうやって自作機材はどんどん熟成され、使いやすくなっていくのです。フィールドで出会う仲間から「それどうやったの?」「どこで手に入れたの?」と訊かれることもしばしば。そんなときはどんどん教えてしまっているそうで、村崎さんのアイデアを採り入れたオリジナル機材を使う仲間が増えている、というわけ。
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野鳥撮影に出かけるときはこのようなスタイル。村崎さんは運転免許を持たず、もっぱら鉄道などの公共交通機関で移動しています。したがって、荷物はなるべく少なくして、機材も軽量でコンパクトに抑える必要があります。オリジナル機材もそれに則り、なるべく小さく軽くというコンセプトで作られています。それにしても、ビデオカメラ2台(望遠撮影用とサブの全景撮影用)にビデオ三脚などがすべてこのザックに収まっているのだからすごい。
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これは野鳥を驚かさず接近するためのブラインド。市販のものはテント型をしているのですが、それでは重くてかさばり移動が大変、しかも夏は内部が猛烈に暑くなるということで、三脚に取り付けるタイプのものを考案しました。これは周囲でも評判になり、野鳥観察の専門店「ホビーズワールド」(http://www.hobbysworld.com)から製品化もされています。製品版は全面メッシュになっているなど、仕様が異なっています。
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前後に取り付けたスプリングがカウンターバランスの役割を果たすビデオヘッド。野鳥観察用で、ほぼ真上までバランスがとれるようになっています。カウンターバランスのついたヘッドに比べ、圧倒的に軽くて小さいのが特徴。
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これは、ベルクロ固定式の周辺減光防止NDフィルター。望遠撮影では、光の入射角によって画像の中心部と周辺部の明るさに差が生じて周囲が暗くなる「周辺減光」という現象が起こります(広義ではケラレの一種だが、レンズフードなどの物理的なケラレとは異なる)。これを緩和するには、レンズの前玉のところでNDフィルターで減光して光を平均化するのが最も効果的。カメラを素早くセッティングするのに、ねじ込み式では間に合わないので、外からはめ込む方式であらかじめ取り付けておいて、ヒンジの開閉だけでNDフィルターの着脱ができるようになっています。
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録画のオンオフの際、直接カメラに触れると振動が起こる(望遠なので増幅されてしまう)ので、リモコンを使うのですが、村崎さんが使用するキヤノンHV20は家庭用カメラで、業務用のようなLANC端子はなく赤外線リモコンになっています。日差しの強い屋外では、赤外線リモコンはほとんど使い物になりません。そこで、市販の光ファイバーでリモコンとカメラの受光部をつなぎ、「有線風」にして確実に動作するように改造しています。
誌面では他にもいくつかオリジナルの機材、改造ポイントを紹介しています。なお、付属パーツなどはメーカー指定外のものを使ったり、指定された使用法以外の使い方をする場合、保証の対象外になります。そこはあくまでも自己責任で。また、村崎さんはカメラやレンズ本体には一切加工をせず、周辺パーツの工夫で使い勝手を改善しています。これにより、カメラとレンズは常にメーカー保証が受けられる状態になっています。

ロケに同行した日の撮影ターゲットはフクロウの一種、トラフズク。村崎さんが何度も通いつめてものにしたトラフズクのさまざまな表情です。
yachoyoku.jpg村崎さんは野鳥撮影を通じて知り合ったハイアマチュアの仲間と作家集団「夢山水」を結成し、その代表を務めています。その夢山水のメンバーがムービー、スチルの撮影、プロデュースを担当したのが、シンフォレストから発売されている「野鳥浴」というBDソフト。http://www.synforest.co.jp/dvd/RDA05/