第9回上映 中平悠里 監督作品 『猫と少女の物語』


テレビ局の仕事、特に朝の報道番組の仕事は忙しいらしく、打ち合わせのために、会社からの帰りがけに(といってもお昼!)に編集部に寄ってくれる中平さんの目は、徹夜続きのためかショボショボしている。そんな中平さんは映画監督の師匠である故・槙坪夛鶴子(まきつぼ・たづこ)監督のもとで2年間、助監督を務め、現在はテレビ局で働きながら、映画制作を続けている。
 忙し過ぎる毎日を過ごす彼女が貴重な遅い夏休みを全部注ぎ込んで撮影してくれたのがこの作品。「どうしてそんなに頑張れるの?」と聞いたことがあるが、「だって好きな映画を創らなくちゃ、つまらないじゃない!!」と返って来た。好きなことができなければ仕事で稼ぐ意味もない…そうだ。いやはや恐れ入る。
 そんな中平さんが監督した作品はこれまでにない映像作品。物語はあるがセリフはない。少女や猫の肌や髪の質感、繊細さ、無邪気さ、美しさを表現する。そんな作品を実現するために一役買っているのが、撮影のホンダさんの常識に囚われない撮影テクニック。その手法は驚きでした。さて、上映時間になりました!


『猫と少女の物語』



あらすじ
古びた洋館に一人の少女(藤沢)が入ってくる。部屋は空っぽ。ふと気付くと毛玉が転がっている。それに触れた瞬間、少女時代の自分(齊藤)が猫と戯れる光景を思い出し、そして…。●カメラ:キヤノンEOS 5D Mark II / ●編集:Final Cut Pro 7 / ●上映時間:7分03秒
脚本・監督・編集●中平悠里
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▲本誌では「映像業界のなでしこたち」や映画『海のみる夢』でお馴染み。現在はテレビ局のディレクターを務めながら映画を制作中。
撮影・編集●MAASERHIT HONDA
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▲マサヒット ホンダさん。ファッション写真などを手掛けるフォトグラファーだが、ムービーの仕事も多くドキュメンタリーも撮る。
主演/少女役●藤沢玲花
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▲セリフもない、相手役もいない…イメージの世界を演技で表現。実はこのシリーズ初のゴースト役。何を探して彷徨っているのだろう。
藤沢玲花さんの公式HP(ジェイライブ) ●http://jlive.tv/reika.html
少女の子供時代役●齊藤映海
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▲どことなく玲花ちゃんに雰囲気が似ているエイミちゃん。猫と遊ぶシーンが大半だったため、重ねたテイクは数知れず。でも頑張った。
齊藤映海ちゃんの公式HP(ウォーターブルー) ●http://waterblue0420.info/g-esaito.html
制作スタッフ
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子役の齊藤映海ちゃんがアップするのに合わせて撮影したスタッフ写真。ちょっとお疲れの猫ちゃんは中平監督に抱かれて眠たそう。後列右が録音の小黒健太郎さん。映画の現場が多いそうで、今も全国を飛び回っている。
●プロデューサー:高遠 瑛
●音楽:NAMED RED
●協力:Yamanashi Hemslojd/犬猫ものがたり、Rencontrer Mignon
●友情出演:猫のアゴちゃん 里親募集中 http://mignonpics.web.fc2.com/

制作後記 / 中平悠里


「シンプルなストーリーにしよう」…この企画のお話が決まった時そう決めました。セリフもなく、大きな展開もない。「主人公の少女の表情や仕草で伝えられるものを、ただキャプチャーしてみたい」そう思って、はじめました。
 それで撮影してみて感じたのは「人を撮る」という行為は、実は自分をさらけ出すことなのかもしれないということです。撮る側、カメラの後ろに立つ側が出す空気感があって、演じる側の美しさや人間味を見せてもらうことができたり、それを写すことができるのかと。今回の撮影は私が経験した撮影の中で一番印象的でした。
 その不思議な空気感について、完成した作品から、その一片でも感じてもらえればと願っています。それによって少女と猫の気持ちが伝わる作品になればいい…。
 この作品は、映像監督をしているマサさんに撮ってもらいました。出来上がった映像を見れば、とても主観的な画になっていることが分かると思います。光が溢れ、ピ
ントを探しながら、本当に「誰かを探している」ような映像になりました。レンズをわざと外して光を入れたり、ペットボトルの中の水の反射を使ったり。実験的に作られていく過程はもっと冒険的だった学生時代を思い出してとても新鮮でした。
 今回、実は一番苦戦したのは時間制限でした。撮影の5日前、カメラマン、ロケーション、キャスト、衣装、小道具の全てが白紙でした。それまで仕事をしながら準備をしていましたが、思うように進みません。
 映画の制作っていうのは、考えただけで気が遠くなります。要素が多すぎて、段取りが下手な私にはとても荷が重いのです。それで追い込まれた私は、ともかくパソコンを閉じました。ネットに頼るのをやめて、電話で話を聞いたり、足を直接運んで、一つひとつ必要なものを集めていきました。迷ったら、まず体を動かしてみる。結局はそれが一番早いということに気がつかされました。