HD映像をリアルタイムに加工し、
ライブ・スイッチングする次世代の映像演出


GROUNDRIDDIMの事例
http://www.groundriddim.com/
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FUJI ROCK FESTIVAL ’11でYMOライブの映像演出を担当


 映像の分野で活躍する高野良和(たなか・よしかず)氏と松本剛(まつもと・ごう)氏、そしてグラフィック・デザイナーとして活躍する田中祥文(たなか・よしふみ)氏を擁するGROUNDRIDDIM(グラウンドリディム)は、ミュージック・ビデオやCM、グラフィック・デザイン、イラストレーションなど、様々なコンテンツの制作を手がける気鋭のクリエイティブ集団である。
高野氏と松本氏は長年、HIFANAのVJとして活躍していることでも知られ、そのユニークな映像表現は世界中で高く評価されている。
 そんなGROUNDRIDDIMが手がけたのが、FUJI ROCK FESTIVAL ’11(開催:2011年7月29日~31日/新潟県湯沢町苗場スキー場)のYELLOW MAGIC ORCHESTRA(以下、YMO)のライブでの映像演出。ここ数年、毎年8月に開催されているWORLD HAPPINESSには毎年出演しているものの、日本を代表するライブ・イベントであるFUJI ROCK FESTIVALでは初の公演となる。その注目のライブで、映像演出を行うアーティストとして指名されたのが、GROUNDRIDDIMだった。
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 高野氏は「正式に依頼があったのは、ライブのわずか2週間前でした」と笑う。
「だから準備は大変で、もうライブの直前まで作業していました。現場には前日入ったんですが、その後もホテルに籠って作業をして、外に出たのはリハーサルが始まる直前(笑)。本当にギリギリという感じでした。でも、YMOさんの映像演出を手がけられるというのは、僕らのように長年VJをやってきた人間にはとても光栄なことだと思うんですよ。だからスケジュール的には大変でしたけど、仕事としては最高におもしろかったですね」(高野氏)

ATEM 1 M/E Production Switcherによるライブ・スイッチング


 YMOのライブの映像演出を手がけるにあたって念頭に置いたのは、ライブの映像をその場で加工する“リアルタイム性”と、いまの時代のテクノロジーを活用した”最先端感”の2つだと高野氏は語る。  「お客さんはあくまでYMOさんのライブを観に来ているので、僕らが作った映像を流し続けても邪魔だったと言われるのがオチ。だからライブの映像を上手く使って、それをその場で加工して見せようと。
 あとはYMOさんなので、映像から最先端の匂いが感じられないとダメだなと思いました。事前にYouTubeで過去のライブ映像をチェックしてみたんですけど、やっぱり凄いんですよね。常に優れたアーティストが関わっているので、その時代の最先端のテクノロジーを使ったカッコイイ映像で演出しているんですよ。だから僕らも、いまの時代のテクノロジーを使って”最先端感”を醸し出そうと思ったんです」(松本氏)
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 “リアルタイム性”と”最先端感”―――。この2つのテーマを実現するため、GROUNDRIDDIMがフル活用したのがBlackmagic Designのビデオ・コンポーネント群だ。中でもシステムの中核として活躍したのが、ライブ・プロダクション・スイッチャー ATEM 1 M/E Production Switcherで、複数の映像素材はこのコンポーネントによって切り替えられ、スクリーンに送出された。ATEM 1 M/E Production Switcherのオペレートを手がけた松本氏は、「ライブ・スイッチャーの活用は、GROUNDRIDDIMにとって、新しい映像表現に向けたチャレンジでした」と語る。
 「普段、HIFANAのVJではアナログのSD機器を組み合わせた、いわゆるVJ的なシステムでやっているんですけど、いつかはHD-SDIでHDでやってみたいと前々から思っていて。今回、YMOさんの映像演出というまたとない機会を得たので、ライブ・スイッチャーを使って初めてHD-SDIでやってみることにしたんです。   Blackmagic Designのライブ・スイッチャーに関しては、もうかなり以前から注目していたんですよ。Blackmagic Designがライブ・スイッチャーの会社を買収したのを知って、これは絶対コスト・パフォーマンスに優れた製品を投入してくるのではないかと。
案の定、ATEMシリーズが発表されて、すぐにでも試してみたいと思いました」(松本氏)
 ATEM 1 M/E Production Switcherには、4台のビデオ・カメラとそのスイッチング・アウト、そして各種映像素材がすべてHD-SDIで入力され、松本氏のオペレートによって演奏に合わせてリアルタイムに切り替えられた。  「今回は専用のコントローラーであるATEM 1 M/E Broadcast Panelが間に合わなかったので、すべてキーボードのショートカットを使って操作したんですが、まったく問題なかったですね。
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ATEM 1 M/E Production Switcherには、ATEM 1 M/E Broadcast Panelとほぼ同じデザインのソフトウェア・コントロール・パネルが用意されているので、キーボードからでも快適に操作することができるんです。黒バックで抜いてあるロゴなんかは、スペース・バーにアサインしておいて、ビートに合わせてポンポン叩いて送出したり。  こういうライブ・スイッチャーを使った映像の切り替えとVJって、映像を扱うという点では同じなんですけど、実際のオペレーションは似て異なるものだと思うんです。
ATEM 1 M/E Production SwitcherのようなM/EミキサーとVJ用のミキサーでは、操作体系も大きく違いますし。だから最初は不安だったんですけど、ATEM 1 M/E Production Switcherはそんな僕でもすぐに使いこなすことができた。コンピューターのソフトウェアにはない、専用ハードウェアならではの安心感もありますし、これは今回のような仕事には最高の機材だなと思いました」(松本氏)

ライブ映像のリアルタイム処理用入出力としてDeckLink SDIを活用

 
ATEM 1 M/E Production Switcherにはライブ映像のほかに、田中氏がデザインした素材にアニメーターの大野悟(おおの・さとる)氏が動きを付けたモーション・グラフィックや、ライブ映像をリアルタイムに加工したエフェクトなども入力された。  「やっぱり、こういうライブで流す映像って、デザイン性が高くないとカッコ良くなかいんですよ。だから田中くんに静止画のグラフィックを何点か用意してもらって、それを大野くんにアニメーションしてもらいました。大野くんはもともと手書きのアニメーターで、コンピューターで動かすのではない、その手書きのアニメーションの良さを加えたかったんです。  
ライブ映像のリアルタイム・エフェクトには今回、TouchDesignerというソフトウェアを使用しました。TouchDesignerはWindows PC上で動作するソフトウェアなんですが、他のツールでは得られないグッとくるエフェクトが作れるんですよ。なのでTouchDesignerのプロである高橋正教(たかはし・まさのり)くんにお願いして、エフェクトのプログラムをいくつか作ってもらいました」(高野氏)
 「TouchDesignerは、リアルタイムで映像を加工できるソフトウェアなんですが、いわゆるVJソフトウェアではない。インタラクティブ・アプリケーションという感じのもので、メディア・アートっぽい機能が充実しているんです。オブジェクトをノードで繋いでプログラムを作っていくという点ではMax/MSP/Jitterに似ているんですけど、3Dオブジェクトが使えるというのがTouchDesignerのポイントですね」(高橋氏)
 TouchDesignerでライブ映像を加工するためには、コンピューターの中にHD-SDIの信号を引き込んで、処理後の信号を再び送出しなければならない。その映像の入出力として用いられたのが、Blackmagic DesignのHD/SD-SDI対応ビデオ・キャプチャー・カード、DeckLink SDIだ。
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 「TouchDesignerの中に何を使ってHD-SDIの信号を引き込むか、それは大きな問題だったんですが、まずはBlackmagic DesignのDeckLink SDIで試してみようと。でも、インターネット上のフォーラムなどを検索しても、TouchDesignerとDeckLink SDIの組み合わせで動作したという前例が無くて。これは無理そうだなと思ったんですが、試してみたら呆気なく動作して(笑)。これはとても助かりましたね。おそらく、DeckLink SDIのドライバがよくできていて、汎用性が高いんだと思います」(松本氏)

今後はミュージック・ビデオのプロダクションもライブ・スイッチングで


 FUJI ROCK FESTIVAL ’11でのYMOの公演は大成功のうちに終了。その内容は各メディアで大きな評判となり、TwitterやFacebookなどでは、YMOの演奏とともにGROUNDRIDDIMによる映像も大きな話題となった。
 「終わってみたら、驚くくらいの反応があって。やっぱりYMOさんは凄いなと、正直ビックリでしたね。映像に関しては、YMOさんも喜んでくれましたし、たくさんの友人にも褒められました。  2週間という仕込み期間で、最初はどうなることかと思ったんですけど、そのプレッシャーが自分たちを一段上のレベルに引き上げてくれたと思います。またこのような機会があれば、ぜひ手がけてみたいですね」(高野氏)
 ライブ・スイッチングを手がけた松本氏は、今後はATEM 1 M/E Production Switcherをミュージック・ビデオのプロダクションなどにも活用していきたいと語る。
 「10bitの非圧縮の映像を、こんなに簡単に切り替えられるのなら、ミュージック・ビデオの制作にも使えるのではないかと思っているんです。ちまちま編集するのではなく、気合いいれて2~3回スイッチングすれば、きっとおもしろいものができる気がするんですよね。コンピューター編集にはない良い意味での雑さと、リアルタイム操作ならではのノリが映像にも現れるのではないかと。  
 それにしても今回のライブでは、ATEM 1 M/E Production SwitcherとDeckLink SDIのほかにも、Mini Converter Analog to SDIやMini Converter SDI to HDMI、それにMini Converter HDMI to SDIなど、Blackmagic Designの機材が大活躍でした。実際に現場で使用して、そのクオリティの高さを改めて認識したので、今後もガンガン活用していきたいですね」(松本氏)
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