【現場レポート】東海大学の学生、教職員の有志が 金環日食の模様を生中継!


 首都圏で見られるのは173年ぶり。そして次回、首都圏で見られるのは300年後とあって、実に貴重な機会となった今回の金環日食。5月21日の朝、東海大学湘南キャンパスでは、全国7ヵ所と中継を結んで、日食の解説を交えながら配信する生番組が行われるということで取材に行ってきました。


文学部に生中継スタジオが!


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 現場に到着してみると、カメラチェックや中継テストなど本番前の最終チェックの真っ最中。緊張感のなか威勢のいい掛け声が響き渡っていました。話を聞いてみると、彼らは文学部の学生なんだとか。文学部にこうしたスタジオがあるということに、まずビックリ! 
 今回の配信を手がけたのは東海大学文学部広報メディア学科の学生、教職員の有志のみなさん約80名で、2009年の皆既日食でも海洋調査船から大手メディアに先駆けて、生中継の映像を発信したことでも話題になったそうです。
 スタジオでは模型やフリップ、図解などを使った日食の説明も丁寧に解説されていて、日食初心者の編集部員にもわかりやすい内容で作られていました。
 
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 スタジオ機材も放送局並みの充実ぶり。ミキサーやスイッチャーも完備されていて、今回の中継ではテロッパーとしてTricaster TCXD300も使用されていました。スタジオでは日頃、授業の一環としてドキュメンタリー番組やインタビュー番組の収録も行われており、番組は全国14のテレビ局で放映されているそうです。

全国7ヵ所を学内のテレビ会議システムで中継


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 日食の中継映像は、大学内に設置されたテレビ会議システムを使用して、スタジオのある湘南の他、東海大学のキャンパスのある札幌、浦安、清水、高輪に加え、他大学とも連携し、和歌山(和歌山大学)、鹿児島(志學館中高等部・志學館大学)の中継映像も盛り込まれました。中継各所の連携は、総合情報センター情報システム管理課がとりまとめ、最終的な配信の部分は、Yahooとの協業で行われました。

Ustreamで同時5万人、のべ43万人が視聴!


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 番組の配信にはUstreamが使用され、Yahooに特設サイトも作られました。開始直後で既に1万にの視聴者が見ているという注目度の高さ。これがいざ金環日食の局面にさしかかると、それが4万、5万と増えていき、最終的にはのべ視聴者が43万人を記録するまでの大盛況ぶり。
*追記*
後ほど、こんなニュースが飛び込んできました。
延べ157万人が「Ustream」で金環日食を観測
~61番組で金環日食がライブ配信~
http://www.ustream-asia.tv/news_20120521.html
これによると、Ustream全体で
 番組数 61
 各番組のユニーク視聴者数合計 1,166,388人
 各番組の延べ視聴者数合計 1,568,171人
そして、東海大学の番組は各番組の視聴者数でトップを獲得!(おめでとうございます!)
 ユニーク視聴者数 384,906人
 延べ視聴者数 440,755人
つまり、全体の約3割がこの番組を見ていたということ。すごいです。

日食撮影用のカメラには専用フィルターを用意


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 当日の湘南は、あいにくの雨でしたが、番組終了間際に、奇跡的に晴れ間が見えはじめ、あきらめかけていた中継にも湘南の金環日食を盛り込むことができました。日食撮影用のカメラは、太陽撮影用のフィルターも取り付けたソニーEX1。

生中継を終えて


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 約1時間の生番組を終えて、スタジオ外に飛び出してきた学生のみなさん。終了直後の達成感に満ちた表情が印象的でした。そして、日食グラスをかけて自分の目でも日食を堪能。
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 配信に関わったみなさんで記念撮影。
 

感想を聞いてみました


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 番組のディレクションを勤めた文学部広報メディア学科の中島聖斗さん(写真手前)。広報メディア学科では、日頃の授業の集大成として、年に1度生中継を行うのが恒例になっていて、今年は3月に震災関連の特番を配信。その頃に金環日食の配信の話が持ち上がり、チャレンジしてみることになったのだとか。
 3月から準備を進め、番組本番前は連日、深夜に及ぶリハーサルが続いていたそうで、今回導入したTricasterも一週間ほどで操作方法をマスターしたとのこと。本番開始までは天候だけが心配だったそう。
 「奇跡的に晴れて本当によかったです。普段、授業で番組を作っても視聴者からの反応がわかることは少ないんですけど、今回の配信では、これだけ明確に視聴者数がわかって、なおかつTwitterを通じて、多くの視聴者の方々からコメントをいただけたので、ぜひ参考にさせていただいて、今後に活かしていきたいと思っています。」
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 学生のみなさんの相談役となりながら、今回の中継をサポートした准教授の五嶋正治先生。
 「今回、金環日食帯に入っていなかった地域に関しては、他大学にも協力いただいて、ジェット機よりも早いと言われている月の影を、通信回線で追いかけることができたのは、非常に意義のあることだと思っています。たくさんの視聴覚や映像の機器を結集して、ウェブを使って生中継するというのは、今風だと思いますし、映像の文化の究極の実践ですよね。」
 今回、配信された番組はDVDに残して、資料として学校に残しておく他、参加した学生に配布するそうです。
 「社会に出て何か辛いことがあったら、これを出して見てみろと。そうしたら、きっとその時の悩みなんか吹っ飛ぶだろうと。学生時代にこれだけのことができたんだと。僕からの卒業証書として渡そうと思うんです」
 きっと、いい思い出になることでしょう。
 最後に、こうした実践的な映像制作を授業に取り入れている訳を聞いてみました。
 「映像を作り出すため、撮影するためには、これだけの仲間が必要なんですね。そこで、仲間に対する感謝、協調が学べるんです。自分が作る映像のために出演交渉したり、カメラの撮影を頼んだり、仲間を説得するということも大切な経験なんです。企画力や協調性、そしてひとつのものを作りあげていくプロセス、メディアを作り出すプロセスには、そういった人間の基礎的力を養えるものがあると思うんです」
 確かに取材してみると、学生のみなさんは、編集部員よりも、だいぶしっかりされていて社会人顔負けな状態でした・・・。しかし、最近何かと暗いニュースが多いなかで、元気な学生さん達の姿を見ることができて、元気をいただきました。ありがとうございました。
 
◎東海大学金環日食観測プロジェクト
http://www.u-tokai.ac.jp/eclipse2012/
◎配信が行われたUstreamチャンネル
http://www.ustream.tv/channel/annulareclipse2012-tokai-univ
◎Yahooの金環日食特設サイト
http://event.yahoo.co.jp/eclipse2012/index.html
◎東海大学 文学部 広報メディア学科のホームページ
http://media-studies.bm.u-tokai.ac.jp/index.html

vsw