トリタイ映像研究所No.24「Kiss the bear」


今月の動画『Kiss the bear』


撮影・編集:タイム涼介/助手ガール:松井琴乃
映画も撮る漫画家・タイム涼介さんの連載「トリタイ映像研究所」。今回はAfterEffects(CS6)で動くぬいぐるみと人物の合成映像を作ってみました。後半では熊の目と口に人間の目と口を合成し、ちょっとしたホラーに。今回は前半の動く熊の作り方を解説します。

『Kiss the Bear』の作り方(クマが机に上るまで)

【STEP1】撮影はカメラを動かさずワンカットで
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▲ヌイグルミは写真のようにテグスで操作した。
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▲撮影中にカメラを動かしてしまうと合成がうまくいかなくなるため、決して動かさない。助手ガールの琴乃さんに呼ばれて机に上るまでの一連の動作をワンカットで撮影。そのままカメラを止めず、机や椅子など周りの物も動かさないようにして人物とクマをはけて空舞台を撮影した。
【STEP2】撮影素材を分割する
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STEP1で撮影した素材を読み込む。

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タイムラインを分割したい位置に配置して「編集」から「レイヤーを分割」を選択する。
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レイヤーが分割された。
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不要箇所をドラッグ&ドロップでトリミングする。
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同様の手順で最後に撮影した空舞台の素材を分割する。
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上からクマ(素材2)、少女(素材1)、空舞台(素材3)の順で配置する。
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レイヤーの名前をわかりやすく変更してみた。
【STEP3】各素材の尺やタイミングを合わせる
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少女の演技とクマが机に乗るタイミングを合わせるために「エフェクトコントロール」で「ヌイグルミ」レイヤーの不透明度を50%に下げて、その下にある「少女」レイヤーも透けて見えるようにして確認した。
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「ヌイグルミ」レイヤーの尺が長いので、時間伸縮で早回し。レイヤー上で右クリック。「時間」>「時間伸縮」を選択し、次に表示されるウィンドウで「伸縮率」を70%に設定した。
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「少女」レイヤーの尺に合わせて、他のレイヤーの不要部分をトリミング。一通りの作業が終わったら「ヌイグルミ」レイヤーの不透明度を100%に戻す。
【STEP4】マスクを切って、ヌイグルミの操演者を消す

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「ヌイグルミ」レイヤーを選択した状態で、ペンツールを使い、ヌイグルミを囲むようにマスクを切ると、下の写真のように操演者が消える。
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単にマスクを切っただけでは、ヌイグルミが動いてその範囲から出た場合、このように切れてしまう。
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ヌイグルミが切れてしまう位置にタイムラインを合わせて、パス選択ツールでマスクの範囲を変更し、「マスクパス」の「シェイプ」にキーフレームを設定する。この操作を繰り返して、クマが切れないようにマスクの範囲とキーフレームを設定する。
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「マスクの境界のぼかし」で素材同士をなじませる。ここでは数値を「30.0,30.0 pixel」に設定した。

連載開始から丸2年、初心に帰って初歩的な技術で作ってみた

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文・タイム涼介
 トリタイ映像研究所の連載開始からなんと丸2年が経った。ありがたいやら申し訳ないやら! 私自身もこの2年間で技術の成長と体力の減退をひしひしと感じている。技術面で言うと、誌面上でやや前進しすぎてVFX初心者には難しくなりつつある。その点を考慮しつつ、この節目に今一度「初心者が初めて触れるVFX」という地点まで立ち戻りたい。
 というわけで今回からまた、一番ベーシックな映像合成の方法を学んでいこう。絵コンテ上はこうだ、「女の子が声をかけると、クマのヌイグルミがひとりでに立ち上がり机に上がる」というもの。今回の作品で合成が必要なのは、ヌイグルミを操演する部分で、操演する人間を消すのが目的だ。
 ちなみに操演とは読んで字の如し、操って演じるという意味で今回はヌイグルミの手と頭にテグスを繋ぎ上からマリオネットのように動かした。随分原始的だと思われるかもしれないが、キングギドラの首と尻尾も同じ方法で操演しているから由緒正しき方法だ!
 撮影と編集方法を大まかに説明すると、まずカメラを三脚で固定し、決して動かないように注意しつつ、ヌイグルミのいない背景のみの映像素材を撮影し、次にカメラをズラさぬようにヌイグルミを配置しテグスで操演しながら撮影。アフターエフェクツに取り込んで、背景のみの素材を下位のレイヤーに配置し、ヌイグルミの居るレイヤーを上のレイヤーに配置する。
 ヌイグルミのいるレイヤーの見切れた操演者をマスクで切り抜く。切り抜いた部分には下位の背景のみのレイヤーが露出するので、あたかも操演者が居ないように見えるというトリックだ。ただし撮影中に動く人の影等で撮影素材ごとに若干の違いが生まれるのでマスクの切り口をぼかすことで微調整する(撮影順は実際と異なるので制作記事を参考にしてほしい)。
 本来今回の合成は、その部分だけでよかったのだが、少女とヌイグルミも別撮りで合成した。理由は読者の皆さんが一人で撮影することを想定したからだ。つまり自分で録画ボタンを押し、少女の役を演じ、ヌイグルミを操演した後に、ヌイグルミを撤去して、背景のみを撮影する。コレをワンカットで行い、素材を切り分けて合成すれば一人で制作可能だ。
 今回それを女性モデルに課すのは無謀に思えたので操演は男性が担当。勿論私一人で実践して見せれば、記事として明快だったが、私とヌイグルミの戯れで皆さんは記事を読むか? そこでわかり易さよりカワイイを選んだ。今後もそうするだろう。ブレないトリタイ映像研究所を今後ともよろしく!


●ビデオSALON2016年3月号より転載
http://www.genkosha.co.jp/vs/backnumber/1550.html