カールツァイスの新しいマニュアル単焦点レンズシリーズ
Milvusを4Kムービーで試す


Report◎ 丁 龍海(R&Y Factory)
一眼カメラ用のカールツァイスレンズと言えば、これまでOtusやLoxiaなどがあったが、充実なラインナップを揃えたMilvus(ミルバス)が発売された。そのフォルムはOtusやBatisのような流線型のスタイルで近年のツァイスレンズらしいもの。フルサイズ対応のレンズなのでフルサイズの4Kムービーカメラでテストしてみたいのだが、ニコン、キヤノンともにフルサイズセンサーのカメラでもクロップしているものがほとんどなので、ソニーのα7SⅡにメタボーンズの変換アダプアー(ニコンからソニーE)をつけてテストしてみた。
テストはソニーα7S IIにマウント変換アダプターを利用してニコンZF.2タイプで検証した。
マウント変換アダプター協力:METABONES(デジタルホビー)、宮本製作所


Milvusシリーズ


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 Milvusの良さはラインナップの充実ぶりだ。「2.8/21」「2/35」「1.4/50」「1.4/85」、マクロ対応の「2/50」「2/100」と幅広い種類が用意されている。価格帯もOtusの半分ほどでありとても魅力的に感じる。また、同社Batisシリーズとは違い金属製のレンズフードが少し高級感を醸し出している。 ZF.2(ニコンマウント)にはLoxia同様のデクリック機構(絞りのクリックを外して滑らかに可変する)が備えられており、動画収録には重宝する。

動画収録での使用感


 Milvusはツァイスの中では、動画向けともされているが、基本的には写真撮影の比重が高いように感じる。その一つの要因は、フォーカス送りの回転幅にある。業務用のB4レンズやシネマレンズなどを使っているユーザーにはおわかりだが、これらのレンズのフォーカスリングの回転幅は大きい。
しかしMilvusは比較するとその回転幅が少ないので、フォーカス送りや微妙なフォーカス合わせが困難に感じた(とはいえ、一般のAFレンズに比べると回転幅は大きいのだが)。また、絞りリングに関してもデクリック機構を用いると、粘り感がなく、回転幅も小さいので操作が難しい。実際4K映像になってくるとフォーカスもシビアになりがちで7インチ程度の外部モニターでも山がわかりづらい。このレンズではじっくりと絞りとフォーカスを決めていく、風景撮影などに向いているかもしれない。
 レンズはずっしりした重さがある。手持ち時には安定感を増すのだが、長時間は厳しいだろう。とくに85㎜になると1129gとなり結構な重さになる。

画作り


 収録段階では、外部モニターを見ながらフォーカスを合わせるのに必死で、さほど気にならなかったが、編集に入った段階で違和感を感じた。今回、Milvusの検証比較でLoxiaシリーズも使用したのでその差を見てみると一目瞭然。
21㎜の広角においても色収差は多少はあるが、歪曲収差では比較すると分かる。αシリーズには「レンズ補正」というメニューがある。これはαがレンズからその個体情報を入手しそのレンズの癖を補正してくれるもの。Loxiaとα7SⅡでは電子接点でその情報をやり取りしているが、Milvusはマウントアダプターを付けたせいでそのやり取りはなくなり補正されなくなる。Loxiaでもレンズ補正の有無で大きく変わる。いまや多くのカメラがデジタルにより様々な方法で補正を行っている。アダプターを使用しての撮影は、それを利用できなくなるということを理解して使う必要があるだろう。
編集部注:画像は4Kムービからの切り出しです。ただし4Kではサーバーにアップできなかったので、フルHDに落としました。ご了承ください。クリックするとHD画素サイズで開きます。
Milvus 2.8/21
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Loxia 2.8/21
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さすがに同メーカーだけあり、描写は近いものがある。ただ全体にLoxiaはコントラストがたk前。大きく違いが出たのが21mmで、フランジバックの違いによる設計の違いとボディ側の補正の有無で、周辺はLoxiaのほうが良好。
Milvus 1.4/50
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Loxia 2/50
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 フルサイズ4K収録であるα7SⅡの場合、21㎜などでは周辺に色収差、歪曲収差がでてしまうが、D5やD500では、ドットバイドットのサイズでクロップされるのと、マウントとレンズの情報のやりとりで気にはならなくなるのではないかと思う。今後はニコン、キヤノンでこのレンズの実力をフルに引き出せる4Kフルサイズムービーが出てきてほしい。
 全体の画作りからすると、収差類はあるものの、画作りはとても滑らかな感じで、ボケもしっかりしている。一眼レフカメラのテイストが感じる描写で、表現としては水彩画のような感じを受けた。Loxiaではハイライトの飛び気味の部分がMilvusでは抑えられている。
 さすがはツァイスと感じたのは光の処理で、逆光時でもフレア、ゴーストが見当たらず、抜けが良い。コーティングやレンズの組み合わせ技術で、光をクリアに演出してくれる。
 一方、Loxiaもボケ具合は出ているのだが、Milvusほどの感じはない。コントラストも高く「バキバキ」とした画作りであった。今後Milvusのようなラインナップも増えることを期待している。そうすれば、映像に合わせてレンズを変えることも考えられるだろう。
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▲ソニーα7S IIにマウント変換アダプターを利用してニコンZF.2タイプのMilvusを装着した。リグはMOVCAM(ケンコープロフェショナルイメージング)。