【連載】LONESOME VIDEOの流儀 第17回


電動ジンバルで撮るのか、手持ちで撮るのか?
動きの質を理解して使い分ける


Report◉ふるいちやすし


映像のブレとか揺れというものは、視聴者にとっては厄介なものだ。撮影者は自分自身が揺れているのだから、その身体と同じように映像が揺れてもごく自然に感じられるが、それをイスに座って見ている者にとっては、景色が予期せぬ方向へグラグラ揺れたりするものだから、これはもう急に目眩を起こしたようなもので、個人差はあるが、特に大画面で見ている時には気持ちが悪くなって見続けることが困難になることもある。
これは例え撮影者本人であってもじっとして見ていれば同じ目に合う。そんなこともあって、お堅い商業映像等ではオールフィックス、つまりすべてのカットで三脚に載せることを義務付けられることさえある。
こうなると当然お堅い、面白みのない作品になってしまうことは想像がつくが、面白みを優先させ過ぎて視聴者の体調を害していいわけもなく、このあたりのサジ加減は微妙なところだろう。特に表現を重んじる作品においては安心、安定が必ずしも正解とは限らないからだ。
 フィックスか手持ちの二択であればそんなに悩むこともないだろうが、この二つの間に様々な方法があるから選択をより複雑にしている。三脚から一脚、ジンバル、肩載せリグ、そして手持ち、また最近飛躍的に進歩している手ブレ補正機能も含めると安定と自由の間に数多くの選択ができるようになった。もちろん撮影者の腕力や体幹といった身体能力も関係するわけだから、果たしてそのカットで何を表現するべきかをよく考えて撮影方法を選びたい。
以前にもこのコラムで取り上げたが特にジンバルの進歩は目覚しく、ちょっと前まではGoProのような小型のアクションカムでしか使えなかったものからデジタル一眼でも使えるようなしっかりしたものまで各社から発売されるようになり、レンズの交換、そしてカメラそのものの進歩も相まって、充分な映像表現をしつつ、手軽に安定感を得ることが可能になっている。
 この「手軽に」というのがロンサムビデオにとっては肝で、最近発売されているジンバルのほとんどの機種がコンパクトなケースに収められており、それを持って行くだけで映画のレールを敷いたようなカットが撮れる。デジタル一眼であればほとんどの機種でマニュアルで細やかな画作りもできるし、それに好みのレンズを付ければ、例えメインに業務用のカメラを持って行ってたとしても、同じような画質で撮れるということだ。ただし、各機種に設定されている積載可能荷重はレンズも含めてのものなので、重いレンズを付けるとあっさり超えててしまうこともある。電動ジンバルのモーターはナイーブなものなので、無理は禁物だ。
 また、基本設定でバランスをとらなくてはいけないので、あまり長いレンズも使えない。機種によって前後のバランスがとれる範囲に限界があるので、まずは自分がジンバル撮影で使いそうなレンズを付けた状態で、荷重、バランスが適合するかどうかを調べてから手に入れるべきだろう。今回フィルムパワーのNebura(ネブラ)4200をお借りしてソニーのα7Sを載せて使ってみたが、比較的重いクラシックレンズを付けた時には前後バランスをとるのがギリギリだったこともあった。こういった小型カメラ用のジンバルでも価格帯も十万円台から約40万円と幅があるため、慎重に選んだほうがいいだろう。
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 そして例によってしっかり練習を積み、挙動を理解した上で使ってほしい。
ただ本番では「ここぞ」という時に使うくらいにしたい。使いすぎるとなんだか機材のテスト映像のような作品になってしまいそうだ。
やはりここでも「何をどういう動きで撮るべきか」をまず考え、必要ならば電動ジンバルを使い、また、必要ならば苦労をしてでも手持ちで撮るという決断をしなければならない。単純に手持ちのサポート機器とは考えず、それぞれの動きの質を理解し、使い分けてほしいと思う。

冒頭のカットは手持ち撮影。たとえ被写体が静物であっても、それと対話をしながら撮りたい時がある。そんな時は迷わず手持ちで撮る。被写体との距離、細かいフォーカスのコントロールができるのは結局この方法しかない。そういう時には無理に止めようとはせずに、美しい揺れを作ることを心がける。
 砂地や山道等、足場の悪いところでは片手を空けておきたいのでシングルハンドルは便利だが、重いカメラとレンズを載せての長時間撮影には無理がある。また、この日は物凄い強風が吹いていたため、満足なコントロールはできなかったが、それでも砂地を歩く際の縦揺れはきれいに吸収してくれているのが分かる。