LONESOME VIDEOの流儀 第18回


気軽に近場を撮影するのに向いている
私のカメラ、レンズ、バッグ、三脚を紹介しよう

Report◎ふるいちやすし


美しい時と場所を求めて旅をするのもいいが、鍛錬ということに限れば見慣れた街、日常を撮るのも効果がある。普段はただ通り過ぎる場所や何でもない物を撮ろうとすると、必ず強い思いが必要になる。まず立ち止まってそこで思いを膨らませば何らかの美しさは浮き出てくるはずだ。
それを捉えるためにレンズを選び、数センチのカメラの位置、一絞りの被写界深度にこだわってみる。携帯電話で撮ってみても何の面白味もない、撮る気も起こらないような場所でも、自分の思い通りに何かにフォーカスを合わせ、何かをボカして漂わせる。大判センサーのお陰でビデオでもそういう表現が可能になった。普通に撮っても何の意味もない所だからこそ、思いと表現の鍛錬、作画のセンスが磨かれるはずだ。
 私も来月に大きな旅を控えているので今回はごく近場を撮ってみた。これは特別なことではなく、お気に入りの普段使いのバッグにいつもカメラと数本のレンズは入れてあるし、三脚を持ち歩くこともある。ただし、そのどれもが仕事と生活を邪魔せず、気軽に持てる物というのが鉄則だ。大袈裟に構えるとついつい置いて行きたくなるし、そもそも日常ではなくなってしまう。
 私の場合は昔の16‌mmフィルムとほぼ同じサイズのセンサーを持つニコン1 V2と、同じく16‌mmフィルム用に作られていたCマウントのクラシックレンズ数本をいつも持ち歩いている。中でもアンジェニューの17-68mm/f2.2のズームレンズと日本製の広角レンズKINOTAR12.5mm/f1.4はずっと使い続けているお気に入りだ。
このセンサーサイズでは35‌mm換算で約2・7倍になるので12・5‌mmと言っても33・75‌mm相当の画角になってしまう。トーンはどちらもとても柔らかく、優しい表現が得意なレンズだと言えるが、携帯電話や今のレンズには決して真似できない表現力があると感じている。
 三脚に関しては正直軽量コンパクトを最優先させ、「ないよりはマシだろう」と完全に割り切っているのだが、最近見つけたVANGUARD Espod CX234AGHは実に面白い雲台を持っている。いわゆるガングリップと呼ばれる自由雲台は今までも幾つかのメーカーから発売されていたが、動画の撮影を意識したのか、その動きに粘りがあり、慣れればスムーズなカメラワークができるようになるだろう。また自由雲台の特徴を活かし、一脚として使う時にも水平を保ちながら動かすことができ、ちょっとしたスライダーのような動きも可能だ。まぁ、脚のほうは「ないよりマシ」というレベルを超える物ではないが、こういう雲台は、もっとちゃんとした三脚でも作ってほしいものだと思う。
 「普段使い」「持ち歩き」という点では何かを割り切らなくてはいけないが、その中でも何にこだわるかは人それぞれだと思う。たとえ会社に持って行くビジネスバッグの底に目立たないように入れておく必要があっても、そのこだわりは忘れないでほしい。それがなければ携帯電話で充分だ。日常の中にも二度と訪れない時と場所と出会いはある。それを撮り逃さないためにも、ともかく日常カメラを持ち歩き、足を止め、向き合い、心を膨らませて撮ってみる。それがロンサムビデオの流儀だ。

【マンフロット STREET バックパック】


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私の普段使いのバッグ。嬉しいのは荷室が上下に分かれており、パーテーションも自由に区切れる。Cマウントのレンズのような小さな物でも中でガチャガチャせずに裸でほうりこんでおける。上の荷室には行き先によって違う物を入れるが、下のカメラはいつもこのセットだ。背中にはパソコンや書類を入れるスペースも確保されており、三脚も固定できるようになっているれっきとしたカメラバッグだが、仕事の打ち合わせでもこれで出かけて行く。それにしてもこの装備でフルHD+クラシックレンズの映像が撮れるとは、いい時代になったもんだ。
https://www.manfrotto.jp/shop-by/collections/bags/street-collection

【VANGUARD Espod CX234AGH】


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上のマンフロットのバッグに合わせて普段持ち歩くのに苦にならない軽量コンパクトな三脚を探していたので、正直に言うとあまり期待はしていなかったのだが、この雲台は面白い。グリグリと動かせるボールには適度な粘りもあり、また多少その粘りを調節することも可能だ。それとは別にクイックシューの部分も水平回転し、そこにも適度な粘りがあるので、カメラを持って動かせばパンもできる。もちろんちゃんとしたビデオ三脚のようにはいかないが、日々持ち歩く道具としては魅力的な物だ。
http://www.vanguardworld.jp/photo_video_jp/products/tripods/espod-cx-234agh.html#go-sectionTop

いつもいつも通る道でも季節が巡り、天気が変わり、一瞬たりとも同じ風景はなく、そこに行き交う人の表情や所作はドラマそのものだ。そこに放たれた作り物のアニメキャラを追いかけるのもいいが、ただし、良いカメラマンを目指す人には言っておく。街を見ない人には空気の色は見えず、人を見ない人には心の動きは撮れない。カメラや機材をどうするかとか技術がどうかと言う前に、ひと時でも多く、人や街を見て、目と感性を磨き養うことが大事なのだ。