航空カメラマン・野口克也の 前略、空からお邪魔します vol.8 「ドローン操作のために知っておきたい電波のキホン(前編)」


vol.8「ドローン操作のために知っておきたい電波のキホン(前編)」
文●野口克也(HEXaMedia)

東京都生まれ。空撮専門会社「株式会社ヘキサメディア」代表。柴田三雄氏への師事の後、ヘリコプター、モーターパラグライダー、無線操縦の小型ヘリなど、空撮に関わるすべての写真、映像を区別なく撮影。テレビ東京系地上波『空から日本を見てみよう」、BS JAPAN『空から日本を見てみようPlus』などTV番組やCM等の空撮を多数手がける。写真集に夜景の空撮写真集「発光都市TOKYO」(三才ブックス)など。http://www.hexamedia.co.jp/


周波数が高いと直進性は高いが障害物に弱い

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▲周波数の高い電波は直進性に優れており、開けた場所で明瞭な電波を届けることができるものの、障害物に弱いという特性もある。また、周波数が高ければ高い程、大容量のデータを伝送できる他、長距離の伝送も可能になる。
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▲周波数の低い電波は伝送できるデータ容量や距離は短くなるものの、障害物を回り込む性質があるため、建物などで電波が遮られるようなシチュエーションでもドローンが操縦電波をロストすることはない。

 空撮用ドローンは操縦しながら映像を確認できる「カメラ付きラジコンマルチコプター」です。操縦はもちろん、手元でほぼリアルタイムに映像が見られるFPV。ドローンではこの2つに電波を使っています。今月はドローン操縦のための電波の基本知識を解説します。

2.4GHz帯が主流

 電波は周波数帯ごとに「こういう用途で使いましょう」という割り振りが電波法で定められていたり、細かい電波特性などがありますが、それらについては専門書におまかせするとして、おおまかでいいのでどなたにも必ず知っていていただきたいのが「周波数」です。ドローンの操縦には主に2.4GHz帯、900MHz帯、5GHz帯の3つを使用しています※。2.4GHzというのは電波の振幅が1秒間に24億回あるという意味ですね。
※この3つのうち免許不要で使えるのは2.4GHz帯と900MHz帯。5GHz帯に関しては無線局免許や従事者資格が必要になる。ドローンレースでは、アマチュア無線を取得して5.8GHz帯を使用する人もいるが業務用途の空撮では使えない。総務省では5.6GHz帯を新たにドローン等無人機に開放する動きもある。
 一昔前のアマチュア無線からみると、昨今のドローンはとても周波数の高いレンジの電波を使用しています。周波数が高いほど伝送できるデータ容量が増えるので、操縦信号の送信や映像の受信が明瞭になります(ただし障害物には弱い)。反対に周波数が低いとデータ容量は少ないものの、障害物を回り込みやすくなります。

送信機と受信機

 以前のラジコンは「操縦信号をコントローラーが発信し、ラジコン本体が受信する」という図式のものがメインでしたが、ドローン世代は「ラジコン本体も映像を発信して、コントローラーで受信をする」という機能が追加されているので、送信機・受信機という呼び方はしなくなりました。コントローラー、ラジコン本体の双方向で、電波の送受信をしています。

ドローンでは操縦と映像伝送に電波を使う

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▲ドローンでは機体の操縦とFPV用途の画像転送に電波が使用されている。現在主に使われているのはWi-Fiなどで使われている2.4GHz帯。900MHz帯はDJI Phantom 3 Standardなどの機種で採用されている。
●技適マークのないドローンは国内では飛ばせない
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▲技適マーク とは 「技術基準適合証明マーク」 の略で電波法で定めている技術基準に適合している無線機であることを証明するもので技適が取れたドローンのコントローラーに表記される。海外からの並行輸入品や個人輸入したものは、電波法の基準を満たしていない場合があるので要チェック。

電波障害となる電波源

 実際の撮影現場では周囲に様々な電波源があり、ドローンの操縦の障害になるものもあります。高出力のトランシーバーをはじめ、周波数の同じ帯域のデータ通信機器、映像送信のOFDM機器のパラボラの前等は、特に気をつけてください。撮影本番前、事前に他の通信機器の電源を入れた状態でテストをできる場合は、なるべくテストをしておくべきです。また、携帯電話を持った人がたくさん訪れるイベント等では、人が増えることによって映像信号が想定よりも届かないことが多々あります。

アンテナの向き

 ドローンのコントローラーの多くは「ホイップアンテナ」という棒状のアンテナを採用しています。このアンテナの特徴は棒の部分から横に電波が出ること。棒を上から見て、360度ドーナツ状に横方向に電波が出ます。言い換えると、根本と先端の縦方向は電波がかなり弱いということです。
 たまにホイップアンテナの先端をドローンに向けたほうがいいと勘違いしている方がいますので今一度ご確認を! そうしてしまうと、アンテナの特性的に一番電波が弱い(途切れやすい)ので、くれぐれも間違わないようにしましょう。
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▲DJI Phantom 4の場合、2本のアンテナは平行に開いて設置し、飛行の際は機体とアンテナを結ぶ線に対して直角になるように向けるのが理想的な電波状態。機体が操縦者の背後に回るなどした場合には機体に電波が届くように操縦者も振り返ってプロポを機体に向けるようにする。
 またホイップアンテナ以外でも先にアンテナそれぞれの特性を理解しましょう。それぞれ電波を飛ばす方向が違うので、撮影対象に正しくアンテナを向けることが大切です。
 そしてFPV運用でたまに見かけるのが、操縦者が気づかずにアンテナと撮影対象の間に入ってしまって、電波を邪魔しているパターンです。自分の体という電波的障害物のせいで、ドローンの電波到達距離の本来の性能を妨げてしまっていないか、常に意識しましょう。

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★○ 改正航空法概要ポスター
http://www.mlit.go.jp/common/001110369.pdf
★ 「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」国交省HP
http://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html
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◆この記事はビデオSALON2016年9月号より転載
http://www.genkosha.co.jp/vs/backnumber/1596.html
◆連載をまとめて読む
http://www.genkosha.com/vs/rensai/sorakara/