Videographer’s Night@京都「ビデオグラファーが登場の背景と今後の活躍の場」伊納達也氏


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 ビデオグラファーのためのイベント「Videographer’s Night」。過去9回、東京で毎月開催されてきた同イベントが9月14日に関西地方で初開催された。ここではそのイベントの中で行われたトークセッションの模様を書き起こしする。登壇者はVideographer’s Nightの主催者でもあり、ドキュメンタリーや広告映像を中心に活動するビデオグラファーの伊納達也さん。
取材協力◎Vook(http://vooook.com/

ビデオグラファーの定義

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今回、「Videographer’s Night」ということで「ビデオグラファー」という名前をつけてるんですけど、僕らが定義しているビデオグラファーというのはこういう定義でやっています。これまでの映像制作のスタイルだとディレクション、撮影、編集など各工程に専門家がいて、それぞれ細かく分業していました。そうした役割を少人数・マルチタスクで行なって映像作品を作って発表するというスタイルの人達をビデオグラファーと呼んでいます。
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これまでの映像業界は映画業界、TV業界、TVCM業界というのがメインの業界としてあって、その他はビデオパッケージ…VPと呼ばれるような形で、例えば自動車のディーラーで配るDVDとかだったり企業の…要するにコマーシャルやテレビでは流れないけれども、製品紹介であったりとか、プレゼンテーションに使うようなビデオだったり、会社紹介というものは全部VPとひとくくりにされていました。
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今、WEBで動画が観られるようなって、VPと呼ばれていたTVCM、TV番組、映画以外の映像を作りたいという企業や自治体などが増えてきているように思います。例えば、WEBで流すような企業のCMだったり、CMだけじゃなくてWEBメディアでのニュース映像であったり、そういうものがどんどん増えてきていて、これまでの映画、TV番組、TVCMというものとは違った流れでの映像のニーズが増えています。

今、世の中にある映像作品の分類

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これは今、世の中にある映像をマッピングした図です。縦軸がメジャーなのか、マイナーなのか…つまり、ターゲットとする視聴者が多いのか、視聴者が少なくニッチでフォーカスした層をターゲットにしているのかということで。横軸はコンテンツなのかコマーシャルなのか。「コンテンツ」というのは視聴者が観たいと思って観に来る映像ですね。「コマーシャル」というのはどちらかというと映像を作る側だったり、スポンサー、クライアントとなるところが観せたいと思って作るものになります。
メジャーでコンテンツ寄りなもので、一番大きなものは劇場映画であったりとか、ワールドカップとかオリンピック、もしくは野球とかサッカーとかのスポーツ中継。みんなが興味を持っていて、世界中の人がコンテンツとして観に来るというものだったり、またはテレビ番組。みんながチャンネルを合わせて観るといったものは、これまでと同じように大規模スタッフで従来型のスタイルで制作されていくと思っています。
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一方、コマーシャルのほうではメジャーなターゲットの視聴者数の多いものというと、まぁベンツやナイキとかみたいな世界的なブランドや国内の大手企業がTVで流すようなもの…これも従来型の大規模スタッフによる制作スタイルがさらに進化したような形で進んでいくとは思うんですが、そういうターゲット視聴者が多い部分ではなくて、より細かいジャンルに絞って。ターゲット視聴者数が少ないけれども熱狂的なファンがいるとか。そういったところに向けて映像がどんどん作られるようになっていまして、そうした映像の制作を行うのがビデオグラファーというスタイルになっていくのかなと考えています。
例えば、WEBメディアでのルポニュースや簡単なドキュメンタリーのようなものだったりとか、WEBで流すようなCM。今YouTubeではどういった年齢層で、どういった趣向の人に向けてこの映像を流すという的が絞れるようになっています。しかし、このように細分化されたターゲットに向けたWEBのCMだったりというものは、なかなか大きな予算がかけられません。もしくは「コンテンツ」的な側面を持つドキュメンタリーの場合は、できるだけフレキシブルに機動性を高めて撮って行かなければならないということになってくると、これまでの大規模スタッフではなくて、一人や数人で回せるスタイルというのが必要になってきているのかなと思っています。

従来までの大規模スタッフによる映像制作とビデオグラファースタイル

(スライドには、映画監督が俳優に演技指導をし、撮影監督と助手複数人がカメラを囲う写真)
写真で見るとどういう風になるのかというと・・・この写真は、グーグルでひっぱってきたヤツなんですけど、いわゆる「映画制作」という形でイメージする写真だと思います。監督なんかはコーヒー片手って感じで、自分でなにか機材を動かすわけじゃなくて、演技指導であったり、全体の中身を見ていくっていうやり方をしています。カメラを回すのはDP(撮影監督)だったりとか撮影チームが分業してやっていました。そして、撮影チームの中でもDPが必ずしもカメラを回さずに、アシスタントが3人くらいいて、それぞれが露出や照明部とのライティングの調整を行うチーフやフォーカス操作やレンズ・フィルターを管理するセカンド、三脚や機材の運搬など清掃などを行うサードと、オペレーションですら分業していたというのが映画やTVCMの世界でした。
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ビデオグラファーは写真のイメージで言うと、こういうような感じで、比較的小型のカメラを持つ人が最近多いのですが、自分で撮りながら、全体の構成や編集のことも考えて、撮影していくマルチタスクなスタイルかなと思っています。なんでこういう人たち・・・僕らみたいな人たちが登場したのかと考えてみると、これはもうみなさん当たり前に感じていることだと思うんですけど、改めて整理をさせていただきます。

ビデオグラファー登場の背景

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ビデオグラファー登場の背景は3つあると思っていまして、まず一つ目は、先ほどもお話しましたが、やはり「WEB動画」というのがあると思います。YouTubeの登場以降、巷に様々な動画が溢れてシェアされています。映像を観る場やチャンネルが爆発的に増えて、それによって映像をどんどん作りたい、見せたいという企業が増えました。そこでは企業のWEB CM的な動画もありますし、WEBメディアの動画化という流れもでてきていて、そういったところで映像のニーズが高まっています。そして、供給をもっとしなければいけないという状態があるのかなと思っています。映像制作需要の拡大があるということですね。そして、それもものすごい大きな予算をかけて、いいものを作るというのではなくて、いいものなんですけど、比較的早く、かつそれほど予算をそれほどかけずに、どんどん作っていくということが時代的に求められているのかなと感じています。
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もう一つは「機材のデジタル化」だと思っていまして、これはここ何十年も進んできたことだと思っているんですけど、かつての編集作業は、フィルムの頃は手でつながなければいけなかったですし、テープでもリニア編集機など専用の機材でやらなければならなかったものが、今ではこのMacBookProだとかノートパソコンなど一般的にその辺で売っているパソコンでみんな作業できるようになりました。
撮影もフィルムの頃はファインダーを除いているDPしか、本当の画を見ることはできなかったけれども、今はデジタル化になって監督が除いている画もクライアントが除いているモニターの画も基本的に同じものが出るようになっています。また、フィルムのように撮影時間が限られたり、高価で限られた場面でしかカメラを回せなかったりすることもなく、何回もトライ&エラーが可能になりました。
それまで専用の高価な機材でしかできなかったものは、専門に勉強を積んでいって、やっとその一人前になる直前くらいに触らせてもらえるようになるという状況で、機材に触れる機会が圧倒的に少なかったのですが、汎用の機材でできるようになったことによって、誰でも練習ができるようになりました。専門家ではなく、ディレクター的な人でも自分で実際の作業もトライ&エラーしながらやってみることが可能になったので、マルチスキルな人が増えてきたのかなと思います。
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背景の3つ目としては「ノンフィクション需要の急増」です。小型カメラを使用し、少人数で動くということで、その機動力を活かして、役者さんにスタジオで演じてもらうのではなくて、外のロケで現地の人の生の声や表情を捉えるという映像作品が多いと感じています。
コマーシャルでも完全に「これがおいしいですよ」、「これがいいですよ」という情報を発信するよりも、誰か実際の人が体験した声やリアルな体験に共感するという流れになってきているので、コマーシャルでもノンフィクション的な要素が増えてますし、なおかつドキュメンタリーで世界のいろいろなことを知りたいということもあるので、ノンフィクションの需要が急増しているというのは僕らビデオグラファーが登場した一つの背景なのかなと思っています。

ビデオグラファーの今後について

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今後、ビデオグラファー達はどこを目指して、どういう風になっていくのかというところなんですが、先ほども見ていただいたマトリックスの図でルポニュースなどのジャンル、映画、番組とかWEBのコマーシャルなどと書いてるんですけど、
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例えば最近、NetflixやHuluのような月額でお金を払って視聴する動画配信サービスもどんどん増えてきて、当たり前になってきています。そういったところはやっぱりオリジナルでどんどんコンテンツを出そうとしていて、必ずしもそれはブロックバスター(大規模予算)な映画だけじゃなくて、比較的ニッチなところのドキュメンタリーというものもどんどん増やしてきています。なので、そういったところにもビデオグラファーの活躍の場があるのかなと思います。
大手のメディア、これまで映像をやってなかった新聞とか、海外だとNEWYORK TIMESとか、日本でも日経とか朝日新聞など増えてますけど、そういったところでもウェブで動画を使い始めているので、そうしたジャンルだとまさに僕らのようなスタイルじゃないと難しいのかなということで活躍の場はあるのかなと思ってます。
それから、インターネット専門の動画メディア。今も「VICE」みたいに有名なところはいくつかありますけど、そういったところも増えていって、これからもそういったスタイルで制作が進められていくのかなと思っています。
そして、あとはコマーシャルですよね。コマーシャルもテレビだけではなくて、WEBで一本の動画というよりもシリーズで一つの企画として10秒とか20秒の動画を作っていって、WEBでシリーズ全体を見せるというような企画も出てきていますし、こうしたWEBというか、テレビじゃないところの良さを生かした、映像の見せ方というのも増えてくると思うので、そういったところは僕らが戦う土壌なのかなと思います。
あとは、IKEAの例を書いてますけど、コマーシャルだけじゃなくて、実際に製品を買った後にどうやって使うのかとかこれまでの取扱説明書のような部分も映像に変わっていって、そういった映像も作るという形もビデオグラファースタイルなのかなと思います。そんな感じでこれからいろんな活躍の場は広がっていくと考えています。

◆Videographer’s Nightについて
http://vooook.com/2801
◆同日のイベントで行われたビデオグラファーの岸田浩和さんのトークセッション
http://www.genkosha.com/vs/report/entry/videographers_night.html
◆ビデオSALON2016年11月号より新連載「ビデオグラファーという生き方」スタート。
http://www.genkosha.co.jp/vs/backnumber/1599.html