航空カメラマン・野口克也の 前略、空からお邪魔します vol.12 「冬場のドローン運用の秘訣」


vol.12「冬場のドローン運用の秘訣」
文●野口克也(HEXaMedia)

東京都生まれ。空撮専門会社「株式会社ヘキサメディア」代表。柴田三雄氏への師事の後、ヘリコプター、モーターパラグライダー、無線操縦の小型ヘリなど、空 撮に関わるすべての写真、映像を区別なく撮影。テレビ東京系地上波『空から日本を見てみよう」、BS JAPAN『空から日本を見てみようPlus』などTV番組やCM等の空撮を多数手がける。写真集に夜景の空撮写真集「発光都市TOKYO」(三才ブックス)など。http://www.hexamedia.co.jp/

寒いとドローンは飛ばない!?

東京に11月としては数十年ぶりの雪が降り、冬の訪れを感じながら原稿を書いています。今回はドローンの冬場の運用の秘訣についてお話しましょう。通常の撮影機材の場合、メーカーは寒冷状態での入念な検証をして、動作確認をしてから世に送り出しています。しかし撮影機材としてのドローンは、一部の愛好者の間でのラジコンヘリコプターから普及したため、世に出始めてから日が浅く、検証も入念とは言えない状況です。市販された機体でさえ、気象条件によっては様々なトラブルが起こります。そんな寒冷時のトラブルもドローンを飛ばす人には悩ましい問題です。

 

バッテリーの構造と特性

現在のドローンは特殊なものを除いて、一般的にリチウムポリマーバッテリーで動作します。リチウム他の化学物質が染み込ませてある冷えピタシートのようなゲルが何層もアルミパックされたような形状で、ここに電気を溜め込み、放電をします。化学反応で電気を溜め込む特性なので、温度が低くなるとその特性は低下します。
外気温5℃以下になると性能の低下が顕著で、フライト可能時間が通常の半分以下になったり、バッテリー性能の低下予測を外すとバッテリーの電圧降下が早すぎて、ドローンを墜落させたりするケースが多発するようです。そのため、現在のDJI等が発売しているインテリジェントバッテリーの多くは、バッテリー本体温度が15℃以下だと起動しない仕組みが追加されました。これで、バッテリー性能低下で墜落する機体は少なくなりましたが、冷えたバッテリーではそもそもフライトできない事になってしまったので、寒冷地でのドローン撮影の際はバッテリーの加温、保温が必要となりました。
バッテリーを温めると離陸温度をクリアできるだけでなく、バッテリーの効率が上がりフライト時間が伸びたり、バッテリーを酷使した際の急激な電圧低下を防げたりします。そこで様々なドローンオペレーターがそれぞれに知恵を凝らし、バッテリーの保温、加温グッズを工夫しています。

バッテリーと温度の関係

バッテリー保温方法あれこれ

【車のヒーター】
大抵、ドローンでの撮影の場合は機体運搬のため自動車での移動となることが多いので便利です。フライト少し前にヒーターをデフロスターモードにして、温度設定を高温にし、バッテリーを数本温めて使用します。ただし車から離れてさらに移動する場合、保温材などがないと徐々にバッテリーの温度は下がり、やがて起動温度を下回ります。

【DJI専用バッテリーヒーター】

▲DJIから発売されている Inspire 1専用バッテリーヒーター(2,600円)。Phantom3用のバッテリーヒーターも発売されている。

DJIから1本ずつ挿入してバッテリーの電気を使い、ケースに仕込まれたヒーターで加温するバッテリーヒートシステムが発売されています。サーモスタットが搭載されていて、温度が上がりすぎたりしないようになっています。ひじょうに便利なので、他の保温手段があっても1〜2個あったら便利に使えるグッズです。

【クーラーボックス+保温材】

市販のクーラーボックスに保冷剤ならぬ保温材を入れる方法です。保温材の量によって保温する時間をコントロールできます。予め保温材を温めておくので電気や電池がなくても保温できます。車や電源から離れた場所でバッテリーを保温するのに一番適しています。

【レジャー用保温庫】

▲車のシガーソケット等から電源が取れるレジャー用保冷庫。バッテリーは5〜6本入る。 ツインバード D-CUBE X HR-DB07GY。温度計をとりつけて温度管理する。

市販の12Vや100Vで駆動し、車のシガーソケットなどから電源を取り保温をします。サイズも様々で、バッテリーを5−6本入れるのに丁度良い大きさのものもあります。しかし1万円以下の比較的安価なレジャー用保温庫の多くはペルチェ素子を使った省電力なものが多く、保温庫もバッテリーも冷えた状態から30℃前後まで加温するには機能不足です。

まずは暖房の効いた部屋でバッテリーを保管し、保温庫自体も前の晩から予熱しておいて、車でも常時加温するようにします。こうした保温庫では、温度設定が細かくできないものが多いのと、発熱部だけが熱くなりすぎるものもありますので、要注意です。私の場合は、内部温度がわからないものも多いので、温度計を蓋裏に貼り付けて、内部の温度監視をしています。

【カスタム保温庫】

▲フライトに適さなくなったバッテリーを電源として秋月電気のシートヒーターをつなぎ、プラスチックケースに入れて使っている(12V降圧)。

私は普段、バッテリーの保管、運搬をペリカンケースもどきのプラスチックケースに入れていますが、その中に12Vで駆動するフィルム状のシートヒーターを敷き詰め、Inspire 1などのフライトに適さないくらい傷んでしまったバッテリーを12Vに降圧して、このシートに繋いで使っています。フライトするには傷んでいますが、プラスチックケースをホカホカにするにはもってこいの容量と使い心地です。
沢山のドローンオペレーターの方が様々な創意工夫でバッテリーの保温の方法を考えておられます。私の紹介したものはほんの一例ですが、この方法を複数組み合わせて安全にフライトしています。皆さんのご参考になれば嬉しいです。