第6回 初心者でも作りやすい作品テーマ


文=長谷川修(大和映像サロン会長)
タイトル=岩崎光明

旅の映像以上に巧拙がはっきり判るジャンルが「祭り・イベント記録」ではありますが、被写体として撮る機会も多く、気軽に撮りやすいテーマでもあります。その意味ではビデオを始めたばかりの人にとってお薦めの題材です。

作品づくりには起承転結が大事とよく言われておりますが、作品づくりの経験が少ない人に、いきなり起承転結と言ってもどんなもんでしょうかね? とにかく、理屈抜きで「祭り」の様子の一部始終を夢中で撮ってみてください。祭りは基本的に起承転結の要素があらかじめ備わっているものです。時間軸に沿って撮影すれば、意識せずとも起承転結がつきます。

何回か祭りの作品を作るようになりますと、その人なりの制作スタイルが出来上がってきます。他人の祭りの作品を観る機会も増えてくるでしょう。そこでひとつの壁にぶつかり「何かが違う」と感じたら、それが進歩です。そんな人は必ず伸びます。

違う「何か」を求めて、ほんの些細なことでもいいから実行してみましょう! 祭りの参加者や見物客の声を拾うのもいいかもしれません。そこで思わぬハプニングが起きるというものです。ハプニングを活かすと作品が生き生きと輝いてきます。勇気を出して声をかけましょう。インタビューなんて思わないで気楽にね!

一言にイベントと言ってもこれまた多種多様。「ディズニーランドのパレード」に「阿波踊り」、「日本三大花火」ときて各地の「よさこい」もあり。まあ忙しいこと。また地元の市や町内会のイベントも盛んとなれば、被写体はさらに身近になります。祭りと同様、とりあえず撮ってみましょう。

また、イベントにはパレードがつきもの。可愛い子供さんの鼓笛隊に始まり、マーチングバンド、極めつけはサンバの裸(?)踊りです。それぞれ楽しいのですが、難を言えば、この手の映像は"長い”と感じさせてしまいがち。人混みでそうそう移動できませんから、同じ場所で撮影することが多く、単調な映像になってしまうのがその原因。対策は複数のカメラで違う場所や角度から狙うことですが一人では難しい。

こんな時こそ“助監督(*第1回参照)”の出番ですぞ! 第一助監督から第三助監督まで、スタッフの活躍の場です。長回しは禁物ですが、サンバのパレードだけは例外。本場仕込みの裸踊り、母音じゃなかったボインでナイスバディの踊りは大歓迎!

そして「映像詩」もあります。誰でも取っ付きやすいものですが、そのくせ作品としてまとめるのが難しいジャンルです。このジャンルを語るには、8㎜映画全盛期にまで遡りませんと、映像詩の何たるかを語れません。もともとは「シネポエム」と呼ばれていたものから「映像詩」というジャンルが確立されました。

8㎜映画は基本的に、音のないサイレントフィルムに、後から音、つまりナレーションや音楽、現地音などをアフレコして完成させました。そして、撮影した風景に合った音楽をつけた作品を一般的に「シネポエム」と呼ぶようになりましたが、風景動画と映像詩とは異なります。映像詩は作者の想いがポエムとして映像に投影されていなければなりません。その辺の混同が、このジャンルの作品の評価を低くした一因になっているのでしょう。

ポエムとしての映像構成に加えて、BGMのアレンジまで考える複雑な作業の割には評価されず、現にコンテストでは最も入賞が難しいジャンルとされています。よく「映像に意味なくBGMを流しっぱなしにするのは如何なものか」との批判を聞きますね。確かに一理ありますが、ちょっと待って下さい、聞いて下さい。

まだ国産のテープレコーダーが開発されていない頃の上映会では、サイレントの映像にプレーヤーでレコードをかけてバックに流していたものです。当然曲は流しっぱなしになりますョ。不思議なもので今のビデオ作品で音楽が途切れてもそんなに違和感がないのはなぜでしょうか? バックに現地音が入っているからです。8㎜映画は曲が途切れると、まったくの無音状態です。

映写係はこの無音状態を避けるために、いかに素早くレコード盤を替えるかが腕の見せ所でしたね。そこで考えついたのがプレーヤーにレコード盤を2枚重ねておき、曲が終わると上のレコード盤を素早く抜いて針を落とす…そんな信じられないような時代があったのです!

“旅”と“祭り・イベント”が東西の横綱だとすれば、映像詩は堂々の大関です。それだけ美しい風景を撮ることはベテラン、ビギナーを問わない楽しみなのです。そのためにビデオを始めた人だっています。美しい風景に美しいメロディを重ねてハイビジョンで見るのも最高ですよ。

知人のNさんはコンテストの常連で、彼の作る作品は真似のできない才能溢れるものばかりでした。そんな彼が北海道を走るSLの作品を例会に持って来ました。いつもの彼の作品らしくなく、SLの映像に音楽をつけただけの作品でした。「いつものNさんらしくない作品ですネ?」と言ったら、少し恥ずかしげに「この曲大好きなんです。一度思いっきり使ってみたかったので…」。SLが疾走する北国の大地に、森山良子の「♪この広い野原いっぱい」のメロディが流れていました。そのNさんもいまは亡くなり、この曲を聞くとNさんのことを思い出します。

今は昔、児島範昭氏の心象映像が圧倒的な感動をもって観られた時代がありました。そして競うように、トップクラスのアマチュア達は映像詩に挑戦したものです。私はそんな映像詩にもう一度挑戦してみようと思います。どうです? あなたも一緒に映像詩を作ってみませんか?

月刊「ビデオサロン」2015年6月号に掲載