vol.17「シャッタースピードとNDフィルター」
文●野口克也(HEXaMedia)

東京都生まれ。空撮専門会社「株式会社ヘキサメディア」代表。柴田三雄氏への師事の後、ヘリコプター、モーターパラグライダー、無線操縦の小型ヘリなど、空 撮に関わるすべての写真、映像を区別なく撮影。テレビ東京系地上波『空から日本を見てみよう」、BS JAPAN『空から日本を見てみようPlus』などTV番組やCM等の空撮を多数手がける。写真集に夜景の空撮写真集「発光都市TOKYO」(三才ブックス)など。http://www.hexamedia.co.jp/

※この連載は2017年6月号に掲載した内容を転載しています。

昔からビデオ撮影をされてきた読者の方にとっては「いまさら」な内容ですが、最近ドローンからビデオ撮影を始めた方や普段オートしか撮れないビデオを扱っている方にとっては分かりづらかった、シャッタースピードとNDフィルターの関係を解説します。

まずフィルムでもデジタルでも、「露出」という概念があります。ここを深く掘り下げると見開き2ページでは足りないのですが、レンズから入った光をフィルムや撮像素子に当てることを「露出」と言い、撮影の際は “絞り” と “シャッタースピード” との相互関係で撮像素子に届く光の量を適正に調整します。また、シャッタースピードは倍数、絞りはルート2の倍数で表記されます。その段階を「1段、2段…」と表現し、「1段開ける」、「半段絞る」などという言葉の使い方もします。

ビデオ撮影での
シャッタースピードの意味

筆者はスチルフォトグラファー出身なので当初ビデオ撮影におけるシャッタースピードの意味がわかりませんでした。スチルの場合は、一コマ一コマにシャッタースピードと露出を割り当てて考えるのに対してビデオでは連続して映っているもののシャッタースピードをどうやって変えるのか? その意味がわからないまましばらく撮影していたものです。

ビデオでも一コマごとに撮像するという意識がなかったのかもしれません。映像とは連続して途切れず流れている動画なのですが、高速に連写された一コマ一コマから構成されています。そしてそれらを一コマで鑑賞するのではなく、常に連続した状態で鑑賞するものなので、気をつけるポイントがスチルとは自ずと違ってきます。

絞りとシャッタースピードの数値による露出(EV)値

▲EV値とは絞り値とシャッタースピードの組み合わせで得られる光量を示す数値。数字が大きいほど光量が少なく、小さいほど多くなる。表は絞りとシャッタースピードの組み合わせによる露出量を表したもの。例えば同じEV10でも絞りがF1ならばシャッタースピード1/1000、F8ならば1/15。露出量は同じだが、絞りの開き具合やシャッター速度によって表現が変わってくる。動画の場合はフレームレートの2倍程を目安に撮るのが理想とされており、日中屋外での撮影では光量を落とすためのNDフィルターが必須になる。

シャッタースピードが
上がることで起こる様々な影響

ドローン撮影の映像がテレビ放映に乗ることが珍しくない昨今ですが、映像を観てドローンでの撮影だと、ひと目でわかってしまうのがジャギーの多さとジェロ(CMOSセンサーによるローリングシャッター歪み。こんにゃく現象とも言う)と、動きがパラパラしているようなカットです。これはすべてシャッタースピードが速すぎる事に起因しています。

一般的にシャッタースピードはフレーム数と同じくらいか、倍数程度までが理想とされています(60fpsであれば1/60〜1/125秒程度)。前のフレームのシャッターが開いているタイミングと次のフレームのシャッターが開いているタイミングの間には、厳密に言うと必ず映っていない時間があるわけですが、シャッタースピードを速くすればするほど、その映っていない時間が増えることになります。この部分が多くなってくると、動きがパラパラして見えてくるわけです。

これを防ぐためにレンズに入る光量を落とし、適切なシャッタースピードの範囲内に収まるようにするのがNDフィルターです。また、一眼での動画などシャッタースピードを上げず、なるべく開放に近い絞りで撮りたいという場合にもNDフィルターを使用します。

シャッタースピードによる動く被写体の見え方の違い

ビデオカメラでも録画中はシャッターが1コマごとに開閉(電子的に)して写真と同様に撮影を行う。フレームレートが30fpsであれば1秒間に30回シャッターを切る。

【1/30秒の場合】▲静止画として一コマ単位の画を見るとブレて写っているものの、動画として見た場合は動きがつながり滑らかに見える。

【1/1000秒の場合】▲1コマ単位ではブレずに撮れるものの、動画として見た場合は動きがつながらずパラパラに。

ドローン撮影で
NDフィルターを使う意味

ココまでが一般的なビデオ撮影でのシャッタースピードと絞りの関係ですが、DJIのドローン搭載のカメラについてはどうでしょうか?

Phantom 4 ProやInspire 1、2ではシャッタースピードと絞りを両方コントロールできますが、Phantom 4やMavicも含め、それ以前のドローンは絞りがF2.8固定のためNDフィルターの重要性は高くなります。

F2.8固定だと、夏場の日中等では光量が多いため1/1000秒以上のシャッタースピードになってしまいます。シャッタースピードを60fpsの倍程度の1/125に落とすためには3〜5段程度減光させるNDが必要になります。3〜5段のNDは番号的にはND8~32になります。

絞りをコントロールできる世代の機材でも、夏場の日中等に適正露出を得るためには「絞り」をほぼ絞り切ってしまうため、回折現象(小絞りボケ)などを防ぐためにも3〜4段のNDの装着をオススメします。

NDフィルターで理想的なものは被写体の色合いが変わらず、単純に入射する光量を落とし、その分だけシャッタースピードを遅くして、絞りを開くことができるものです。

可変NDフィルターが便利

カメラを三脚に据えてキチンと絞りを操作できるならいざしらず、空撮の場合、コロコロ変わる天気や雲行き、暮れゆく夕暮れに近い時間等は適正露出も目まぐるしく変わります。その度に着陸させて、NDフィルターを付け替えるのは手間がかかりすぎるので、その場合に活躍するのが現時点では可変NDフィルターです。

一度機体を降ろす必要はありますが、一度着けたNDフィルターを取り外すことなくフィルターのリングを回すだけで明るさの調整ができて、テンポの早い現場などには重宝します。しかし、品質の悪い可変NDフィルターは色合いが変わったり、輝度ムラが発生したりすることがあるので、必ず本番前にテストをしておくことが重要です。

NDフィルターを装着して撮影をすると、基本的に滑らかな動きの映像が撮影できます。しかし一コマ一コマで言うと、実はブレのある映像になります。動いているモノを多少ブラして撮ることによって滑らかさが増し、結果として自然な映像になるのです。また、テレビ放映時特有のジャギーも減ります。ジェロも速すぎるシャッタースピードが原因ですが、これも低減できます。