第13回 楽しき哉、上映会~泣き笑いの舞台裏


文=長谷川修(大和映像サロン会長)
タイトル=岩崎光明

ビデオを趣味とする方は、自分が作った作品を他人様に観て貰いたいものなのです。貴方だってそうでしょう? いやあ~私だってそうですよ。ましてや公開映写会ともなれば、100人から400人ものお客様に観て貰えるのですから、張り切らざるを得ませんね。

日頃何かと口うるさい、またはまったくビデオに関心を示さない奥方を何とか映写会に連れ出し、貴方の作品が大観衆の前で拍手喝采を浴びて面目躍如! 新しい機材の購入に理解と協力を得るのにも効果抜群、年に一度の映写会が楽しみなのですな~。

先ずは会場の確保に始まって、案内葉書やプログラムの印刷、発送等々。そして天気予報に一喜一憂しながら上映会の当日を待つわけです。

とは言っても、その舞台裏には笑いあり涙あり、そこには生々流転、人生の劇場があった…とはいささかオーバーではありますが、正直その年の総決算に賭ける思いがあるのも事実なのですョ…ね!

8mm映画時代の公開映写会では、映写中のフィルムの切断とランプ切れが二大トラブルでしたね。ですから映写機の傍には必ずスペアランプとフィルム接合器を用意していました。

その頃のとあるクラブの公開上映会での出来事は、思い出すと今でも笑ってしまいます。それはある作品がクライマックスに差し掛かろうとしたとき、スクリーンの画面がカクカクしたと思ったら、ボワっと画面の中心から画像が崩れ始めました。フィルムが焼け切れたのですね。

場内が明るくなり、「大変申し訳ございません。フィルムが切れましたので、しばらくお待ちください」とのアナウンス。お客様も慣れたもので、静かに再開を待っていたのですが、どうも通常より修復に時間がかかっているなと思っていますと、「大変お持たせ致しました。それでは上映を再開いたします」…場内が暗くなり映写機が回転してパッとスクリーンに映し出されたのは「終」の文字。場内は大爆笑に包まれたのデシタ!

時は流れてデジタルビデオの時代になりますと、上映中のトラブルはまずお目にかかりません。それでも次のようなトラブルは結構ありましたネ。「そうそう、あったあった」なんて声が聞こえます!

現在ほとんどの作品はハイビジョンになりましたが、7~8年前はDVとHDVの作品が混在する上映会でした。そのため、映写係はDV作品とHDV作品を事前に確認しておく必要がありました。ところが往々にして作品の完成が遅れ、上映会の当日に持ち込まれるようなことになりますと、こんなトラブルが発生したものです。

スクリーンには4対3の画面サイズで祭りの模様が映し出されています。しばらく観ていると映っている人物が、なんだか足が長くスマートなのです! もしかしたら16対9の作品を4対3で映写? 心なしかお客さまも隣の人とひそひそ話…そのうちに太鼓が登場して「ありゃりゃ? 丸い太鼓が楕円形だぜ?」…ここでようやく皆さん気がつきましたネ! 喜んだのは登場していた女性達! なにせ皆様、細身の美人に大変身ですから。

またいつの時代でも公開映写会で悩むのがプログラムの編成ではないでしょうか? どのクラブでも上映順を決めるのが一苦労なのですね。そんな悩みを解消するために、「くじ引きにしたら?」と、一旦はくじ引きで決めたクラブもあったようです。一見平等に見えるこのくじ引き方式も、観客無視の構成でいいのか? 努力して傑作を作り上げた人とそうでない人を同列で扱うことが平等なのか? という不満が出て、結局くじ引き方式は中止となったそうです。

後日談として、くじ引き方式が中止となったために退会した会員がいたそうです。理由ですか? いやあ難しい問題で私には判りませんね。まあ、それだけ上映順のこだわり、即ち作品の評価に対する思いは大切なのでしょうね。

プログラムの構成は〝寄席型(*)〟が一般的でしたが、出品作品が多くなり、プログラムも三部構成が増えて参りますと、それなりの山場を考えて構成しなければならず、従来とは変わってきたような気がします。また、上映会の最後の作品、いわゆる〝とり〟の扱いですが、クラブでの役職やキャリアに関係なく、当日の上映作品の中で最も完成度や感動度の高い作品を選ぶようにするのがベストな選択ではないかと思うようになりました。〝とり〟に相応しい作品を目指そう! 会員の誰でもがそのような思いで制作に励む……って素晴らしいことだと思いませんか?

想定外の出来事として、どうしようもないのが台風です。地球温暖化の影響か、台風の発生件数も年々増え、関係者の頭を悩ます事案のひとつになりそうです。実際は台風でなくとも風雨には気を揉みますね。やはりお客様の出足に影響しますもの。

一度映写会の当日と台風が重なったことがありました。天気予報では午後から風雨が強まり、映写会の終わる頃に直撃とのこと。遠方の方には交通手段がなくなる恐れがあるのでご遠慮頂いたのですが、地元の熱心なお客様が100人ほどお見えになったので強行上映。案の定、終盤にかけ台風直撃。会場の係員から「早く終わらせてください!」と悲鳴に近い懇願に、作者、作品の紹介なしで連続上映し、何とか終了したこともありました。

年に一度の一大イベントは悲喜こもごも、でもそれが何よりも楽しみなのです。各クラブの上映会の様子がビデオサロンの「ビデオクラブ通信」で紹介されておりますが、その活字も心なしか踊って見えるのは気のせい!?

*「寄席型」とは最初に前座(初心者や入会したばかりの会員)、次に二つ目(中堅)、最後に真打(ベテランや会長)を配するスタイルのこと。

月刊「ビデオサロン」2016年1月号に掲載