映像制作現場で使うサンディスク エクストリーム900 ポータブルSSD


協力:サンディスク株式会社

Report ◉ 吉田泰行(アルマダス)

4年前に比べて50倍以上の記録容量が必要になってきた

筆者が航空自衛隊を退官して起業したのは2013年10月のこと。当時は4KやRAW映像編集は高価かつ時間がかかり遠い未来のように感じていた。起業当初はキヤノン EOS 5D Mark II から映像制作をスタートし、次にメイン機としてキヤノン EOS C100 そして C100 Mark II を導入した。EOS C100 はCanon Logを搭載しており、HDのエントリーカメラとしてはひじょうにコストパフォーマンスが高かった。また16GB SDカードを使っても90分近く収録できるためストレージや現場でのバックアップに困ることは特になかった。

あれから4年。私の使用機材は RED Weapon 8K や Inspire 2 ドローン用の DJI X5S 5.2K RAW カメラへと大幅に進化し、REDを使いフルHDの16倍の解像度の8Kで収録するようになった。EOS C100の時代に使っていた16GBのメモリーカードでは30秒も収録できない状態となり、カメラ収録用のメディアやバックアップ用のハードディスクの容量は4年前に比べて50倍以上の容量が必要となってきた。

長期保管に適したHDDは幸いにも価格が下落傾向にあり、8TBのHDDでも3万円程度である。よってデータ保管はRAW収録でも比較的安価、かつ確実に行える。しかし撮影現場でのバックアップはまた別の話である。

HDDの実質的データ転送速度は100MB/s前後であり、4K以上のRAWで収録する現場でのバックアップ手段としてはあまりに遅すぎるのである。RED や DJI X5S のような RAW収録カメラの映像データをバックアップするには転送速度に優れたSSDが必須となるのだ。

そこで今回 サンディスク エクストリーム900 ポータブルSSDとエクストリーム500 ポータブルSSDを用いて、4K以上のRAWファイルをどれぐらいの速度でバックアップできるのか、実際に私の収録の現場で検証を行なってみた。

使用カメラとビットレート

今回撮影に使用したカメラは RED Weapon 8KとInspire 2 ドローン用の DJI X5S 5.2K RAW カメラである。両機種ともにひじょうにダイナミックレンジが広く、高精細な収録が可能である。しかしそのトレードオフとして、家庭用カメラや一眼カメラで4K収録時に一般的な100Mbpsというデータ量に比べると数十倍のデータ量になってしまう。

RED Weapon 8K は圧縮RAWでの撮影が可能なため、データは比較的「軽い」がそれでも8K 24fps。5:1圧縮時のデータレートは約2Gbpsにも達する(240GBのSSDで16分収録可能)。一方DJI X5Sカメラの最大収録解像度は5.2Kであるが、データが非圧縮のRAWであるため、ビットレートはREDの倍以上の最大4.2Gbpsに達する(480GBのSSDで約15分収録可能)。

筆者が昔使用していたキヤノン EOS C100 シリーズのビットレートが24Mbpsであったのと比較するとデータ量はX5Sで約175倍と桁違いに多くなっている。

▲RED Weapon 8KのビットレートはC100の83倍、X5Sでは175倍にも達する。

SSDを選択する理由

EOS C100 を使用していた時代は16GBのメモリーカードでも90分の収録が可能で、市販のポータブルHDDでも10分以内にバックアップが完了できた。しかし、4K以上の解像度でRAW撮影をすると、どんなに撮影内容を絞っても最低500GB以上の容量は必要となる。これだけのデータ量になるとHDDではコピーに時間がかかり過ぎてバックアップ1つにつき数時間必要となってしまう。

USB 3.0の理論上のデータ転送レートは5Gbps(625MB/s)であるが、実際はこれほどのスピードでの転送は不可能だ。HDDの実測上の転送量は100MB/s前後で、Cinema DNGファイルの連番であると数万枚の写真データを転送する必要があるのでさらにスピードが遅くなる。最近はUSB3.0の2倍の転送レートを有するThunderbolt規格での接続に対応したHDDも出てきているが、HDDの仕様上、転送速度は120MB/s前後で頭打ちとなり、Thunderboltの理論上の速度を実現するのはまず不可能だ。Thunderbolt接続であれば何でもスピードが速いというわけではないのだ。

▲USB3.0接続(左)とThunderbolt接続(右)の転送速度の比較。
HDDがボトルネックとなりほとんど転送スピードに変化がない。

このデータ転送レートだと、家庭用ビデオカメラの4K映像であればそれ程時間をかけずに転送可能であるが、業務用のRAW映像を転送するには速度が遅すぎる。そこでデータ転送速度に優れ、耐久性に優れたSSDが必要となるのだ。

サンディスク エクストリーム900 ポータブルSSDの利点

サンディスク エクストリーム 900 ポータブルSSD は小型、軽量で、USB3.1規格に対応した数少ないSSDの1つである。USB3.1ポートを備えたMacBook Pro 2016 と組み合わせると圧倒的なスピードを発揮できる。

▲サンディスク エクストリーム900 ポータブルSSD。筐体は小型軽量かつ薄型で、電源が不要。

▲最新MacBook ProのThunderbolt 3はUSB-C(3.1)と互換があり、
付属のケーブルでエクストリーム900 ポータブルSSDと接続。

エクストリーム900 ポータブルSSDの容量は1.92TBとRAWカメラの長時間収録でも対応することができる。1.92TBあれば RED Weapon 8K の8K 5:1 24fpsの収録では126分、4K 5:1 24fpsでは503分、DJI X5Sでは5.2K非圧縮RAWを約60分収録可能だ。1日の撮影ではエクストリーム900 ポータブルSSDが1台で充分に対応できるであろう。

またエクストリーム 900の最大読み出し/書き出しスピードは850MB/sとHDDに比べ圧倒的に高速である。実際に、Blackmagic Disk Speed Testを使い計測を実施したが仕様上の速度をほぼ発揮できていた。

▲Extreme900は読み、書き出しともに800MB/s前後のスピードを
コンスタントに出しておりスピードは安定している。

エクストリーム900 ポータブルSSDは外部給電を必要としない点もひじょうに重要である。筆者は、大容量・急速バックアップ用にSSDを4枚組み合わせた Thunderbay Mini(最大転送速度:RAID5時書き550MB/s、読み900MB/s)も使っているが(写真下・右)、電源が必要で、すべての現場に持っていくことができない。またエクストリーム900 に比べるとかなり大型で、気軽に持ち運びはできない。


コンパクト、大容量の エクストリーム 900 はこれからますます増えていく4K以上の解像度を持つシネマカメラを使った現場を強力にサポートしていくに違いない。

HDDの3倍のスピードでデータコピーしている感覚

今回の作例撮影では蒲郡の竹島と新城市の千枚田の空撮でエクストリーム900を使用した。(撮影に際し、国土交通省、観光課など関係者の許可を取得している)

竹島の空撮ではワンカット20秒以内に抑えコンパクトな撮影を心がけたものの、それでもX5Sカメラのデータ量は185GBに達した。

X5SのCinema DNGファイルの連番は転送に負荷がかかり、通常よりも転送に時間がかかってしまう。HDDでコピーを行う時は通常50-80MB/s程度の速度まで低下してしまう。

さすがにエクストリーム900 でも負荷が多く、通常よりも転送に時間がかかってしまったが、それでも185GBの転送を10分前後で行うことができた。実感ではHDDに比べ3倍以上のスピードでデータのコピーしている感覚だ。実際10分程度の転送時間であれば現場の撮影や撮影の進行に大きな支障は発生しない。エクストリーム900 を使うメリットはまさしくそこである。

エクストリーム500 ポータブルSSDのメリットは?

筆者が撮影する現場はひじょうに多岐に渡る。企業PVで工場やオフィスで撮影する場合もあれば、観光PR用のコンテンツ制作で冬山や山奥の滝などで撮影する場合もある。オフィス内での撮影では エクストリーム 900でのバックアップで何ら支障ないが、山などでの遠隔地での撮影では万が一のことを考え耐衝撃性能を持ったバックアップ機材が望ましい。

今まで、このような現場では耐衝撃性の高いタイプのHDDを使ってきたが、転送速度が遅くデータの転送で数時間かかる場合もあるため、バックアップPCの電源を消耗してしまっていた。特に山奥では電源の確保ができないため、転送速度の遅さは致命的であった。

エクストリーム500 ポータブルSSDは手のひらに乗るサイズで、耐衝撃性能が高い。このような現場にはまさに最適である。また質量はたったの40gしかなく、ポケットにも簡単に収納できる。ポータブルHDDと比べてもそのサイズはひじょうに小さい。

エクストリーム500は耐衝撃性や可搬性を重視しているため、エクストリーム900 に比べ実測上の転送速度は落ちてしまうが、バックアップする元のREDやX5Sのメモリーカードの転送速度が最大300-400MB/s前後であるため転送速度の面ではそれほど問題にならない。

エクストリーム500 は容量のラインナップが最大でも1TBと、 エクストリーム900の半分となり、長時間の収録では容量が足りなくなる恐れがある。しかしエクストリーム500はひじょうにコンパクトなので、複数個現場に持っていけば、それは問題にならない。エクストリーム500の転送速度を測定してみると380.3MB/sであり、エクストリーム900には及ばないが、HDDよりは圧倒的に速い。

山中でのバックアップにエクストリーム500を使用してみた

新城市の阿寺の七滝でのテスト撮影で エクストリーム500を使用した。撮影はすべて RED Weapon 8K で行いスローモーション以外は8K 24fps、5:1圧縮で収録を行なった。移動を含め2時間程度の短時間の撮影であったものの、データ量は236GBに達した。

バックアップを現場で行なったが、236GBの転送を11分で行うがことできた(ちなみに同じデータをエクストリーム900にバックアップしてみると転送時間は8分とさらに短くなった)。

テストするうちに、転送する「データの違い」によりスピードが変わることが分かってきた。X5SのCinema DNGは連番ファイルであり、数万枚のファイルをコピーすることになるのに対し、REDのビデオファイルは同じくらいの大容量であっても数十個のファイルであり、ファイル数が少ないほうがデータのコピーに時間が掛からないようだ。

なお現場ではエクストリーム500の耐衝撃のテストとして7回ほど1mほどの高さからSSDを落下させたが、動作には何ら異常は発生しなかった。


SSDはHDDと違い可動部分がないため、衝撃には強い。野外の現場のバックアップで使う機材としては、ひじょうに頼もしいと感じた。

まとめ〜これから本格化するRAW映像時代を支えるエクストリーム900

数年前まではRAWのワークフローは一般的だとは言い難かった。編集ワークステーションのスペックがまだ低く、ストレージやカメラ機材の値段も高いためRAWを処理するにはハードルが高かった。

しかしストレージの値段が下落し、ワークステーションの性能も向上したためRAW映像のハードルは以前に比べて大分下がった。またカメラも Blackmagic URSA Mini 4.6K、キヤノン EOS C200、パナソニック AU-EVA 1など従来より低価格で、RAW収録を特徴とするカメラのラインナップが増えてきている。

今後シネマカメラは4K以上の解像度を持ち、RAWで収録するのが一般的となるであろう。その大容量のデータを迅速にバックアップするには現状SSDしか選択肢はない。

サンディスクの エクストリーム900、エクストリーム500 はいずれもコンパクトで信頼性が高く、今後の4K/8K映像制作を支える重要なツールとなる。

転送にかかる時間が従来に比べ1/3以下に短縮されたことで、撮影の柔軟性が高まりストレスを感じずに撮影に集中できるようになる。これはクリエイティブな撮影を行う上では非常に重要なことではないだろうか。

▼今回撮影した素材は以下のムービーで見ることができます。
(一部カットのバリエーションの関係上、昨年REDで撮影した素材を混ぜています)。

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サンディスク エクストリーム900 ポータブルSSD

サンディスク エクストリーム500 ポータブルSSD

吉田泰行(よしだ・やすゆき)/愛知県豊橋市生まれ。カリフォルニア州立大学ロングビーチ校で政治とロシア語を学び、卒業後は航空自衛隊に3年間所属。独立後、愛知県に映像制作会社アルマダスを立ち上げる。DJI Inspire 2 をはじめとしたドローン撮影、4Kデジタルシネマカメラを活用した4Kデジタルコンテンツ制作、水中撮影など多様な撮影を行なっている。