第9回 360度VR動画ソフトの進化 Autopano Video Pro3.0 α版が登場
写真・文●染瀬直人

写真家、映像作家、360度VRコンテンツ・クリエイター。日本大学芸術学部写真学科卒。360度作品や、シネマグラフ、タイムラプス、ギガピクセルイメー ジ作品を発表。VR未来塾を主宰し、360度動画の制作ワークショップなどを開催。Kolor GoPro社認定エキスパート・Autopano Video Pro公認トレーナーYouTube Space Tokyo 360度VR動画インストラクター。http://www.naotosomese.com/

※この連載はビデオSALON2017年7月号より転載

※2017年7月31日現在は、Autopano Video Pro3.0はRC版になっています。

 

D.WARPでより精度の高いステッチングが可能に

❶ Autopano Video Pro 3.0 の α版。今のところUIには大きな変化は見られないが、上のメニューに「D.WARP」の機能が追加。
 タイムラインには新たに「PARALLAX」の項目が追加。スパナマークをクリックすると ❸ の D.WARP の設定が表示される。
「D.WARP」のメニュー画面。GoPro Omniリグのための視差補正機能。ステッチを行う「スペース優先」と「時間優先」2つのプリセットがある。

 

60度VR動画のステッチング・ソフトウェアの代表格である Kolor GoPro 社の Autopano Video Pro(以下、AVP)のバージョン3.0が登場しました。5月17日に α版の1が、5月30日に α版の2が公開されています。

既にAVP2を登録しているユーザーは、3.0の登録ウィンドウにAVP2のライセンスキーを入力することで新バージョンを無償で一定期間試せます。最終版がリリースされるた時点で α版 、そして今後登場する予定の β版 ・RC版の動作が停止します。AVP2のライセンスキーを持っていない場合は、試用にいくつかの制限があるものの、試すことは可能です。

AVPの歴史

私は AVP が KAVA と呼ばれていた最初期のパイロット版からテストする機会がありました。当初は AVP だけでは作業を完結することはできずに、Autopano Giga(以下、APG)というパノラマのステッチング・ソフトを必ず併用する必要がありましたが、現在では AVP のみでも一通りのステッチのフローを行うことができます(今でも追い込んだステッチには APG が有用)。

その後、ディレクターズ・カットを作るためのオーサリング・タブの設置や、読み込み用の Omni Importer、Adobe Premiere Pro のプラグインの登場、ローリングシャッター現象の軽減機能(GoPro OMNI 使用時に限る)など、AVP 周辺では頻繁にアップデートが重ねられ、着実に進化を見せてきました。

AVP3の進化点

今回の新バージョンでは、新たにタイムコードをサポート。ゲンロックされたリグのビデオを同期のプロセスなしで AVP に直接インポートできます。また、無償のVRプレーヤー(MacOS / Windows)である GoPro VR プレーヤーで作業中の360度ビデオをプレビューできるようになりました。GoPro VR プレーヤーは Oculus および HTC Vive と互換性があり、VRヘッドセットでも映像をプレビューできます。

注目は新しいステッチ機能 D.WARP

しかし、何と言っても新機能の中でも最も注目すべき点は、「D.WARP」と呼ばれる新技術でしょう。この新しいステッチング方法により、後処理の負担が大幅に軽減されます。これにより視差に起因する多くのステッチエラーが解決されます。これは静的な内容でも、動的な場合でも機能します(現状は GoPro Omni を使用した場合に限る)。

D.WARP の仕組みは視差補間アルゴリズム。所謂コンピュータビジョンの技術で2つのカメラ間の視差を自動的に修正するものでシンクロやローリングシャッターの軽減にも有用とされています。Omni で撮影したショットなら、60cm の被写体距離の修正も可能としています(ただし、すべてのケースで成功するとは限りません)。

新しいステッチ技術を実装したソフトが続々と登場

実はこの D.WARP に近い技術に、今ステッチング・ソフトの世界で、注目されているモーション・フローやオプティカル・フローという任意視点補間の技術があります。私は昨年、初めて Google JUMP システムの GoPro Odyssey で撮影し、そのステッチングのスムーズさ、自然な3D効果の素晴らしさに驚きました。それは Google のアッセンブラーというクラウドで行うステッチに使用されるオプティカル・フローのアルゴリズムのなせる技でした。

このような方式でステッチを行う VRカメラは Jaunt ONE や、Facebook Surround 360 などがありますが、どれも高価でシネマティックと呼ばれる部類のものでした。

それが今年に入って、Insta360 Pro、Z cam、SONICAM など続々とこのステッチ方式を可能にした VRカメラが登場。またソフトウェアも Wonder Stich、レバノンの stereostich、スペインの Mistika VR などオプティカル・フロー(もしくはそれに近い技術)を採用し、しかもローカルなパソコン内で処理ができるステッチング・ソフトウェアが増えてきました。

ただし、オプティカル・フローも完璧ということではなく、処理時間がかかってしまったり、格子状の被写体のステッチが苦手などといった弱点もあります。D.WARP は3Dはできないものの、オプティカルフローの長所を部分的に活かしながら、レンダリング時間を短縮するような思想のもと設計されています。

下位バージョンは販売中止に

さて、AVP の下位バージョンである Autopano Video は、中央処理装置(CPU)のみを使用してレンダリングをしていました(AVP は GPUアクセラレーションに対応)。これは、必ずしも最適なものではなく、時には不満足なユーザーエクスペリエンスやパフォーマンスにつながります。Kolor GoPro 社は CPU を使う下位バージョン Autopano Video の販売を中止する判断をし、現在はライセンスを購入できません。

Nukeとの連携機能も

その他、AVP の新機能にはプロジェクトを主にハイエンドユーザー層で使用されているコンポジットソフト・Nuke にインポートすると、ノードが自動的に作成され、Cara VR にすぐに適用できるフローが提供されます。

今後の AVP3.0 のロードマップは、6月中旬にβ版、7月中旬にRC版が、9月の中旬にファイナルがリリースされる予定です。

AVP3.0は9月中旬に正式リリース予定

▲ IVRPA2017 で AVP3.0 を紹介する Kolor創設者、GoPro イマーシブ・メディア・シニアディレクター、Alexandre Jenny 氏

 

◆この記事はビデオSALON2017年7月号より転載