山本 学(やまもと・まなぶ)

「工業系ビデオグラファー」として製造業のPR・求人動画等を中心に活動。1973年生まれ。元々は家業の鉄工所で父親と共に働いていたが、2008年のリーマンショックの煽りで、仕事を請けても赤字になってしまうという状況に…。予てから趣味で映像を作っており、2011年に映像クリエイターとして独立。自身の会社・ライフインパクトジャパンを立ち上げる。

WEB●http://lij-movie.com/

 

取材・文●笠井里香/現場写真●津川絵美(emiphoto)

 

山本 学さんは、『工業系ビデオグラファー』として製造業の企業PR動画を中心に制作している。クライアントの会社にまるで社員のように通い、ミーティングを重ね、撮影したら、その場で編集まで行い、納品するというスタイルをとっている。

「映像を作る上で大切にしているのはストーリー性や感情です。人が何を訴えているのか、何を思ってこの映像に出ているのか、ちょっとした仕草や表情も大事だったりします。始めたばかりの頃はシナリオ作りに苦手意識がありました。だから、社員の皆さんと出勤し、いい加減にしろと言われるくらい会社に通いました」

 

不景気の煽りを受け家業がピンチに…

山本さんは2011年まで父親と鉄工所を営んでいた。2008年のリーマンショックは記憶に新しいが、この影響は大きく、製造業は軒並み冷え込んでいったという。

「請けると赤字になるような仕事が多く、それを打開しようと38歳の時、元々好きだった映像制作を仕事にしようと思うようになりました。父は鉄工所を僕に継がせるための準備を進めてくれていたので、猛反対されましたが、これからは映像が伸びると信じ、“日本トップクラスの映像クリエイターになる!”という志を持ってスタートしました」

 

尊敬する映像クリエイターの現場で学ぶ

映像を始めた当初の山本さんはキヤノンEOS 5D Mark IIで撮影を行なっており、実はレンズ交換さえおぼつかないほどだったという。

「僕の界隈で映像クリエイターとして注目を集めていたクリス・モアさんの作品を見て、もちろん会ったこともないのですが、“この人に教えてもらう!”と決め、誰彼構わずモアさんに会うと話し続けました。すると一ヵ月も経たないうちにFacebookで繋がっているという方が現れて、クリス・モアさんの大阪でウェディング撮影のアシスタントに呼んでいただいたんです」

山本さんはその現場で機材はもちろん、撮影のノウハウを目の前で見て吸収していったという。

 

映像と製造業を掛け合わせる

「初めて製造業の映像を仕事として作ったのは、ある工業組合の会合で会長さんからの依頼でした。僕自身が鉄工所を経営していたことを話すと周囲にいた人達の目が変わったんです。鉄のあの素材が格好いいとか、製造業あるあるで盛り上がりました(笑)」

他と差別化をつけるためには、映像制作にこれまでの自分の経験を掛ければいい、ここなら負けないと考えた。最近では映像制作のノウハウも蓄積でき、効率的に映像を作れるようになったが、とにかく現場を見て、その会社を好きになるというスタイルは変わらないという。

「出演してもらう会社の皆さんの心の扉を開く。“やらされている感”が出てしまうと良い映像にならないと思うんです。だからたぶん、よその人が見たらびっくりするほど正直にモノを言いますよ」

 

●現場での撮影・編集風景

▲ストーリー性を感じさせる動画作りが山本さんのモットー。「映像を作る会社のことを好きにならないとPR映像は作れない」という。事前のシナリオ作りにもまる一日時間をもらうようにしている。動画は撮影が終わった、その場で編集して、その日のうちに納品するということも増えているそうだ。

製造業の現場で働く人自身にも誇りを持ってもらいたい

「製造業にはネガティブなイメージがある人も少なくありません。そこで働く従業員さえもです。でも、溶接する姿、不可能だと言われるような加工を成功させた時、何かに没頭する男の横顔はすごくかっこいい。それを表現できたときは身震いしますね。今でも日本の中心は製造業だと思います。自分の仕事を好きになってもらいたい、そういう気持ちも込めて、仕事をしています」

経営者としての視点、そして鉄工所での経験を持つ山本 学さんの仕事は、もはや“映像制作”ではなく、“人の心をつかむこと”そのものなのかもしれない。

 

 

●山本さんの作品

【がまでん株式会社】 スタッフ募集動画

兵庫県加古郡にある電気工事・LED照明工事・太陽光発電設備等の事業を手がけるがまでん株式会社の採用動画。仕事のやりがいや日頃の仕事風景をまとめた一本。

【株式会社 奥谷金網製作所】 3分間PR動画

世界屈指の技術力を持ち、神戸でも老舗の金網メーカー奥谷金網製作所。山本さんが工業系ビデオグラファーとして活動を始めたのも同社の仕事がきっかけだという。

 

●最近のお気に入り機材

▲元々はキヤノンEOS 5D MarkⅡユーザーだったという山本さん。最近のメイン機はα7SⅡ。一脚やジンバルを活用しながらフレキシブルに撮影をしていく。

 

●よく使う機材リスト

 

※この記事はビデオSALON2018年4月号より転載