【BMDユーザーREPORT⑤】押し寄せるカラーグレーディングの波、「DaVinci Resolve」のメリット


今回のBMDユーザーREPORTは、製品のレポートではなく、8月30日に銀一で開催された「ビデオグラファーのための映像制作機器セミナー&展示会」での鈴木佑介さんのセミナーにおいて、DaVinci Resolveについて語った部分を抜粋してダイジェスト的にお届けする。

セミナーのタイトルは、『デジタル一眼動画のその先へ!〜「演色」から遡って考える機材考〜』。実は9月号の座談会でも語られているように、DaVinci Resolveは今の映像制作者にとって必修科目になりつつある。その理由とDaVinci Resolveの操作イメージ、8ビット素材でもここまでグレーディングできるということなどを紹介している。

鈴木さんのセミナーのプロットの一部をキーノートの画像を元に解説していくが、動画であれば語り口含めて一気に確認できるので(10分)、時間がある方はそちらをご覧いただきたい。

そして最後に鈴木さんからBMD(ブラックマジックデザイン)に対するコメントをいただいた。

 

一眼動画のその先に行くには

まず、一眼動画が世界を変えたことを振り返ってみると、以下のようなものになる。

一眼動画が始まったことにより、制作人口が爆発的に増えたことで、制作形態が一変したと同時に低予算化してきた。作り手側は生存競争により、差別化するためにセルフブランディングが必要になってきた。「なぜ僕に発注するのか」「なぜあなたに発注するのか」、価格ではなく、特徴がなくては差別化できなくなっている。そして動画が普及したことにより、これまでは単に「写す」だけでよかったのが、「メイクする映像」が求められるようになってきた。そしてそういった上質な映像を撮るには、一眼カメラ以上が求められるようになり、最近ではデジタルシネマカメラが増えてきており、ユーザーは撮影、編集機材を揃えなければならなくなってきた。クリエイターとしては大変な時代になりつつある。

2017年、ここからが本当の始まりだと思っている。ここで突き進むか諦めるか、各個人が判断する必要がある。機材投資をしても回収できないということもあり得るからだ。僕自身も戦々恐々としている。

今、求められるのは「メイク」する映像である

常々各所で書いたり、話したりしているが、動画には2種類ある。「テイク」とはあるものを撮る。記録とかドキュメンタリー。自分で流れを止めることができない状況の中で、持っている機材で最大限にカッコいい映像を撮る。だけどそれは言い訳ができる。自分で流れを止められないし、状況次第なのだから、仕方がなかったと。写真で言えば、スナップ撮影と言えるだろう。

一方で「メイク」とは、ないものを作る。ゼロベースで誰かのイメージを作り上げていく。ストーリーを決めてロケーションを決めて、キャストを決めて、衣装を決めて、撮り方を決めて、ライティングを決めて。すべてを決めなければならない。映画、ドラマ、コマーシャル、MVなど。写真で言えば、商用でのスタジオ撮影。つまりイメージがあってクライアントのOKがないと終わらない仕事である。

では、ウェディングの動画でこのテイクとメイクを考えてみると、

①スタンダードな記録映像、②エンドロール映像、③ダイジェスト映像、今は②③が主流になってきているが、これらは、あくまでイベントを撮影するという「テイク」の映像の範疇に入ると言える。

それに対して、④前撮りの映像というのは、イメージを撮影するわけだから、「メイク」と言える。

ところが実際問題、ウェディングのビデオグラファーでこの「メイク」する映像を作れない人は多く、各地域でメイクする映像の作り方のセミナーを依頼されたりした。それくらいビデオグラファーは「テイク」に依存していたと言える。たとえばフォトグラファーが作ったライティングの横から撮るとかしていたので、自分でライティングも考えてこなかったということもある。

ウェディングの映像は基本的には「テイク」する映像なのだが、決められた進行の中で、必要な画を撮らなくてはならない。

その「テイク」する映像にもふたつあって、ありのままを撮って収める「記録」という要素と、撮れた素材で作品を作る、つまりイベントを「記憶」に変えていくという要素がある。今は、後者の方が多くなっている、という現象が面白い。その背景としては一眼カメラでイメージ的な映像が撮れるようになってきたからだと思う。

では、そのテイクする映像の潮流だが、「音」(音楽)を使用した、ストーリー性を持つイベントダイジェスト(ドキュメンタリー)映像が主流になっている。

ただ「テイクする」影像に「メイク」の要素はいらないかというと、そんなことはなくて、ただテイクした記録映像を短く編集しても、ダイジェスト(ドキュメンタリー)にはならない。ドキュメンタリーには作者の「意志」があるわけで、どう見せたいのか、何を見せたいのか、という演出(メイク)の部分が絶対にある。今のテイクする動画は、「こういう1日だったよ」という他人事の記録映像を、撮影と編集の力によって、「素晴らしい1日でしたね」という記憶に残る映像を作る、という方向になっている。

つまり、「テイク」と「メイク」の中間が現在の映像の潮流だと思う。スタイルとしては、インタビューの音声をベースにして、そこに関連するイメージ的な映像をインサートしていくというドキュメンタリー風の映像が主流だと言ってよいだろう。そこに視覚的な刺激をどうやっていれていくか。ただ、それも最近はもっと「イメージ」寄りになって、さらに「短い尺」でたとえば「ショートドラマ」のようなスタイルでインパクトを出してほしい、というリクエストが増えてきた感がある。

つまり、どんどん求められるもののグレードが上がってきた。

これから映像作品で消えていくものとして、「意味のない被写界深度の演出」、「ヴィジュアルがしっかりしていない長い映像」、「被写体依存のインタビューベースのドキュメンタリー風映像」、「ロゴを入れ替えたら何かわらなくなるPR映像」、これらは終わって行くのではないか。最近の地方の映像は全部一緒に見える。機材に撮らされてきたところがあるわけで、もう機材の性能まかせではいけない。映像のすべてにおいて「創作理念」(ステートメント)が必要になってくると思う。

では、求められる表現力とはどんなものか。

「テイク」する映像は、作り手がやる仕事として、企画は被写体頼り、撮影、録音は現場依存、編集は撮れ高次第だったのが、「メイク」する映像では、もっと細かいことを要求されるようになる。つまり脚本を書いてください、照明もきちんとしてください、MAをちゃんとしてください、グレーディングをしてください、となってくる。つまり演出のやることが広がるわけで、甘えてはいられなくなる。

このセミナーではこの最後のゴール、演色から遡って機材を考えてみたいと思う。映像というのはまずゴールを考えるところからスタートする。どんなものを作りたいかというイメージがはっきりしないと、グレーディングもVFXもMAもできない。

「カラーグレーディング」の波が押し寄せている

面白いように多くの人たちがカラーグレーディングを意識し始めている。ビデオサロンでもDaVinci Resolveの特集するくらいである。各現場でももうDaVinciを使えなきゃだめなんじゃないかという風潮になりつつある。

では一体カラーグレーディングとは何か?

カラリストのワークショップを受けにいったときに聞いてみたら、カラーコレクションはあくまで色補正であり、撮ったものをどう補正していくか。カラーグレーディングとは、あなたがどういう世界にしたいのかという演出を加えること「Adding Create Image」だという。

それを聞いた時にピンときた。これはやらなきゃダメだと確信した。

たとえばこういった映像があったときに、

これがカラーコレクション。ベースの色に合わせて、人肌も綺麗に出している。

カラーグレーディングの一例。だいぶイメージは変わってくる。同じ撮影の映像でもこれくらい印象が変わってくる。自分がどういう世界を見せたいのかという意図が問われることになる。

そして、こういったカラーグレーディングを行うのであれば、定番のソフトがDaVinci Resolveであり、現在はバージョン14になっている。このソフトはMacではWinでもLinuxでも使える。ビデオサロン9月号でも基本操作を解説しているので、見てみてほしい。

DaVinci Resolveの何がいいのかというと、カラーグレーディングの機能はもちろん、取り込み、編集、グレーディング、音声、書き出しがワンストップでできること。下にマークがあって、それを押すだけで、このように画面が切り替わっていく。もちろん作業を戻ることもできるので、編集しながらカラーを直して、ということがやりやすい。

プレミアでもファイナルカットプロXでもカラーコレクションはできるが、細かいグレーディングがやりにくい。DaVinciならカラーグレーディングまでできるし、編集機能も切ってつなぐのになんの問題もない。今日はDaVinciの肝であるカラーグレーディングを行うカラーページの話。

特にRAWやLog素材でなくても、自分の望むルックを作ることができる。DaVinciではノードというものを使うが、これはフォトショップで言うレイヤーのようなもの。細かく作業を分けて、処理を重ねていくことができる。

頭に描いたイメージを作って行くわけで、ひとつの映像素材に対して、どんなルックを見せていきたいのか、演出を施していくことができる。

もちろん、複雑なカラーコレクションも可能。ウェディングをやっていると、すごく露出的に難しいシーンというのはたくさんある。背景がとんでしまったり、影が潰れてしまったり。写真は人はストロボをたけばいいのだが、ウェディング動画でしかも屋外だとライティングするのも難しい。そんなときでもDaVinciなら8ビットの素材であっても結構がんばれる。

たとえばパワーウィンドで人物だけマスクを切っておいて、そこだけ調整することができるし、DaVinciはそのマスクを動きに合わせて追従させることができるので、多少手持ちでカメラが動いても追いかけてくれる。こうやってノードで積み重ねていくと、イメージを作っていくことができる。

そのときの問題が素材で、ここで8ビットと10ビットとRAWでできる限界が変わってくる。8ビット、10ビットは圧縮ファイルであり、Logガンマでは階調は保たれるが所詮圧縮されているので、期待しすぎるのはよくない。一度RAWのデータを触ってみると、Logとは比べ物にならないくらいに自由度があることが体感できる。

8ビットは空の階調で撮った段階でもバンディングが起きてしまう。これまで8ビット素材が多かったが、なんとかがんばってグレーディングしていた。でも本当は厳しい。12ビットRAWをいじってみると、見えなかったものが見えてくるし、大きくグレーディングしても破綻しない。

この8ビット、10ビット、RAWのグレーディングにおける自由度を、ドラゴンボールにたとえてみると、

8ビット=ヤムチャ  256階調  見た目強そうだけど所詮は。。。

10ビット=クリリン 1024階調 最強!と思ったけどあくまで「地球人」最強

RAW=フリーザ様 ex:12ビット 4096階調   私の戦闘力は53万です

といったところだろうか。(編集部注:世代が違うとまったく理解できないと思いますが)

 

グレーディングは知っている前提の時代

グレーディングはできなくてもいい。もともとカラリストという存在がいてまかせるような特殊な作業だった。でも知らないとこれからはやっていけないだろう。知っている前提じゃないと通用しない怖い時代になっていることは間違いない。

DaVinciの編集環境

では、実際にDaVinciで編集環境を作ろうとした場合、どうしたらいいのか。まずOSはMac、Win、Linuxに対応しているので、ここは使う人と予算次第。ただアプリの特性上、GPU命なので、GPUのボードを組み込みやすいWindowのほうが快適なマシンを用意することができる。ストレージも高速で大容量のRAIDが基本。コントロールパネルはあると便利。

鈴木佑介の編集システム

参考までに私の編集システムはこうなっている。本当はGPUを強化したいのだが、Mac Proでは簡単にはそれができない。処理中はものすごく熱も発する。

 

DaVinci Resolveの詳しい情報はこちらから

https://www.blackmagicdesign.com/jp/products/davinciresolve/

DaVinci Resolve 14は無償

DaVinci Resolve 14 Studioは¥33,980(

 

動画は以下から。

(画面撮影でモアレが起きているのはご容赦ください)

私とBMD 〜鈴木佑介

テクノロジーは一種の黒魔術だ。
安価に「動画でRAW撮影」はおろか「自宅でカラーグレーディング」まで実現可能としたBMDは僕ら作り手の様々な「黒魔術」を「デザイン」してくれている。
そして、物を所有することが億劫な現代において、
きちんと所有欲を満たしてくれるプロダクトデザインを提案できるは現在、BMDだけな気がする。触ってみたい、手にしたい、使いこなしたい。そんな気にさせてくれる。
「デザイン」を冠する社名に偽りはない。

PROFILE

1979年神奈川県逗子生まれ、逗子育ち、逗子在住。役者を目指し日本大学芸術学部映画学科・演技コースに入学するも冷静に鏡を見て「自分は映る側じゃない」と認識し、制作する側へ華麗に転身。大学在学中から映像制作を開始するも、専攻が「演技」だったため映像制作の95%はすべて独学。大学卒業後、TV-CF専門の撮影スタジオに勤めた後、2004年からフリーランスの映像クリエーターとして独立、2013年より「a yusuke suzuki Wedding Film」として結婚式映像の独自ブランドを展開。最近は企業のプロモーションムービーやウェブCMの仕事も。精力的にセミナーを行い4K動画の普及に力を入れている。http://yusukesuzuki-weddingfilm.com/