【映像+】『亜人』─ アクションチームとVFXチームの完璧なチームワークで生まれた新たな映像の可能性


映像+(EIZO PLUS)
新しい映像が生まれてくる現場  vol.7

生身の肉体とCGキャラクターによる激しいアクション・シーン。アクションチームとVFXチームの完璧なチームワークで生まれた、新たな映像の可能性。

『亜人』

9月30日(土)全国東宝系にてロードショー

Ⓒ2017映画「亜人」製作委員会 Ⓒ桜井画門/講談社
製作:映画「亜人」製作委員会
製作プロダクション:東宝映画 Production I.G
配給:東宝

桜井画門による人気コミックを実写映画化した『亜人』。死んでも命を繰り返す新人類 “亜人” と、彼らの体から出現する黒い幽霊 “IBM” のダイナミックなアクションは、どのように作り出されたのか。実写、アニメで多くの人気作を手がけるヒットメイカー、本広克行監督がその舞台裏を語る。

 

STORY

新人類・亜人。彼らは一見ごく普通の人間だが、死んだ直後に復活する能力を持っていた。研修医の永井(佐藤健)は交通事故をきっかけに亜人であることが発覚、亜人を生体実験に使う政府機関に捉えられてしまう。そんな永井の前に亜人最凶のテロリスト佐藤(綾野剛)が現れるが圭は、佐藤が描く亜人の未来に共感できないでいた。やがて始まる、佐藤による衝撃の国獲りゲーム。衝突する人類と亜人、そして亜人と亜人。亜人たちは、永遠の命をどう生きるのか?―

INTERVIEW

IBM 問題

:『亜人』の実写映画化の企画についてお聞かせください

本広:東宝さんから、『亜人』を一緒にやりませんかとお話をいただいたのが最初です。ただし、具体的にどう実写化するかを考えると、IBM(黒い幽霊)が予算的にネックになる。そこをどうクリアするかが問題でした。そんな時に思い浮かんだのが、アニメ版『亜人』のこと。ポリゴン・ピクチュアズさんが制作したんですが、IBM を 3DCG で動かしていた。ということは、あのデータを借りられれば予算に収まるんじゃなかろうかと(笑)。そんな読みから動き出し、ポリゴンの社長から OK が出たことで「これならいける」と一気に動き出しました。

:最初からプロダクションI.G制作として請けたのですか?

本広:東宝さんにも製作部があるので、そこに僕が入るという方法もありました。ただ今回はアクションや CG が密接に絡み合うので、ひとりでやるのは相当しんどいなと考えていた。そこでアクションチームと VFX チームとの連携役で、監督補佐を立てようと考えていたんです。それもあり、チームとして I.G で参加させてくださいということです。アクションやVFXチームにお願いする部分も多かったので、僕もプロデューサー的な動きをすることが多かったと思います。

アクションシーンと肉体改造について

:キャスティングについてお聞かせください。

本広:まず主人公の永井圭に関しては、佐藤健くんがすぐ手を上げてくれました。ただし相手役の佐藤をどうするかで少し悩みまして。というのも原作の佐藤は初老の男なんですが、健くんとのアクションを考えるともう少し若い方がいい。映画版はどうしても原作とは世界観が変わってくるので、原作者・桜井画門さんの許可をいただき綾野剛くんに佐藤役をお願いしました。綾野君は漫画を読み込み表情を作ったり、アニメ版の口調を研究しキャラに取り入れてくれました。

:アクション面ではどのようなところにこだわりましたか?

本広:飛んだり落ちたりする上下の動きですね。横のアクションはやや限界を感じていたので、今回は縦でいきたいと。大内貴仁さんにアクション監督をお願いしたのも、上下の動きが印象的だった『るろうに剣心』のアクションに惚れ込んだからなんです。クライマックスで戦いながらビルを上へ上へと移動するのは、ブルース・リーの『死亡遊戯』のイメージで(笑)。カメラワークも、落ちたり昇ったり動きをどう撮るかにこだわりました。

:佐藤さん、綾野さん共に動けるので、長回しのアクションが楽しめました。

本広:最近の役者さんは、高いレベルでアクションができますからね。もちろんスタントマンも不可欠ですが、若い世代の人たちはできる限り自分でやりたがる人が多いんです。顔が撮れるので、僕らにとっても演出の幅が広くなる。そういう意味では、今後アクション映画はもっと増えるんじゃないでしょうか。今回の現場で驚いたのが、綾野くんのアクションのキレ味と健くんの空中でのバランス感。彼らのアクションはブレがないので感心しました。

:川栄李奈さんのアクションも見応えがありました。

本広:飛びつき腕ひしぎ逆十字固めまでやりますからね。最初にアクションの練習を見に行った時は、「私できなーい」と言ってたのに、2日もすればきちんとこなしていたんです。どうやったの?と聞いたら、ダンスの振付けをする感覚で覚えてますって(笑)。でも彼女がアクションをキメると「おお、できるじゃないか」と周囲もテンション上がるんですよ。顔が写らないカットはアクションウーマンが演じていて、彼女の動きもめちゃくちゃすごいんですが、合間に川栄ちゃんの顔出しカットが入ると相乗効果でよりよく見える。アクションのクオリティは全体にとても高いですね。

:現場で印象に残った出来事をお聞かせください。

本広:亜人がリセットすると全裸になるところですね。でも、そのシーンのために健くんや綾野くんに肉体改造してくれとは言えないし、事務所も絶対に嫌がるだろうし、当初はどうしようかと悩んでました。ところが撮影が近づくと、ふたりとも体を鍛えはじめてくれたんです。綾野くんはその前の仕事からジムに通って筋肉を付けていましたが、さらに筋肉隆々に仕上げてくれた。飲むのはオレンジ色の特製ドリンクで、撮影の45分前からパンプアップを始め、すごい筋肉を作って現場に入ってくるんです。いっぽう健くんは、体を見せる撮影のスケジュールに合わせ体作りをしてました。ある日、ふと健くんのペットボトル見たら、オレンジ色の液体が入ってる。綾野くんと同じやつですね(笑)

:クライマックスで戦うふたりの肉体は鋼のようでした。

本広:筋肉を万全の状態に仕上げていましたからね。撮影前には、控室からふたりが筋肉をいじめる声が聞こえてくるんですよ。「アーッ!」とか「ウー!」とか。あまりに声がすごいので、大丈夫か?って(笑)。たまに控え室を覗き、筋肉触ったり写メ撮らせてもらったり(笑)。いや本当にストイックな子たちだなと感心しました。それだけに、ふたりとも撮影が終わった後は気が抜けたような状態で。

:監督冥利に尽きますね。

本広:肉体的な面もそうですが、僕がいちばん驚いたのは役作りへの貪欲さです。ふつう役者さんは、汚れ役を演じていてもその役を良く見せようとするんです。悪いけれどかわいそうとか、憎らしいけどかっこいいとか、どこかで共感できるように。でも健くんや綾野くんはそんなことは気にしない。原作を読んだ時、共感しにくく嫌な奴だと思ったので、僕はそう演じますと言うんです。嫌な部分も思いきり演じますからと健くんに言われた時、絶対に面白い映画になると確信しました。彼らの本気でいいもの作ろうという気持ち、正直ちょっと感動しました。

 

本広克行(もとひろ・かつゆき)
映画監督。1965年生まれ。香川県出身。高校を卒業後、映画学校、映像制作会社を経て、1996年に初の映画監督作品『7月7日、晴れ』で劇場デビュー。2003年に公開された映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』では、日本映画(実写)興行収入記録歴代1位の座を獲得。その後もドラマ・演劇・アニメ・ゲーム・MV・ショートムービー・CMと、活動の場は多方面に渡る。2013年「さぬき映画祭」ディレクターに就任。最近作は2015年公開の映画『幕が上がる』(平田オリザ原作・ももいろクローバーZ 主演)。同作の舞台版でも演出を担当した。2017年9月30日に監督次回作『亜人』、2018年3月21日には『曇天に笑う』が公開予定。

《STAFF》

監督:本広克行
原作:桜井画門(講談社「good!アフタヌーン」連載)

脚本:瀬古浩司・山浦雅大
音楽:菅野祐悟
製作:市川南
エグゼクティブ・プロデューサー:山内章弘
プロデューサー:佐藤善宏・臼井真之介・牧野治康
プロダクション統括:佐藤毅・鈴木嘉弘
監督補:木村好克
助監督:山本透
アクション監督:大内貴仁
ラインプロデューサー:岡林修平
撮影:佐光朗
照明:加瀬弘行
録音:加来昭彦
美術:禪洲幸久
装飾:鈴木仁
衣裳デザイン:岡田敦之
メイク:葉山三紀子
編集:岸野由佳子

《CAST》

佐藤健
玉山鉄二
城田優
千葉雄大
川栄李奈
山田裕貴
浜辺美波
品川祐
吉行和子
綾野剛