【シリーズ特集】WEB動画の潮流とこれから Vol. 2WEB動画広告に力を注ぐ制作会社の制作スタイル ─ ③ CyberBull の場合


取材◉岡本俊太郎(Vook)/文◉青山祐介

CyberBull の場合

スタジオ・編集・MAまで社内に完備!
制作はもちろん企画や効果測定まで
徹底的な内製で作業効率を高める

今回、取材に協力いただいた株式会社サイバーブル・デジタルビデオクリエイティブ局 マネージャーの宇野晃平さん(写真左)、チーフプランナーの小野寺学さん(右)

 

ここまでは登録制のクリエイターと共に仕事を進めていく制作会社を紹介した。サイバーエージェントグループのWEB動画広告専門の代理店・サイバーブルではクリエイターを自社で抱え、自社内に撮影から編集までの環境を整備しているという。その制作スタイルについてお話を伺った。

「サイバーブルでは今のところ、TVCM を作っていくという考えはありません」と言う宇野さん。スマートフォンが普及し、SNS を見たり LINE で連絡を取り合うなど、テレビを見るよりスマートフォンの画面を見ている時間のほうが長くなっている現代人のライフスタイル。そうなると必然的に人が接触している時間が長いメディアに広告を流したほうが、効率がいい時代になっていると付け加える。そんなWEB動画広告を手掛けるサイバーブルの強みは、なんといっても広告代理業と映像制作の両方を手がけているということだ。

「例えば YouTube でこんな動画が流行っていて、それがどんな数字につながっているといった情報が全部入ってきます。それが動画を制作するだけの立場だと、情報が入ってこないので闇雲にアイデア勝負となって、本当に広告効果を考えたクリエイティブを作ることはできません」と宇野さんは指摘する。

サイバーブルで制作しているWEB動画広告と、従来のTVCMの大きな違いは “スピード感” だ。「制作スピードは圧倒的に速く、いままでの常識からすると5倍くらいでしょうか。例えば提案まで1週間でVコン作って資料作ってと、もはやスケジュール感は麻痺していますね。最近は “まだ1週間あるんだ。3日後じゃないんだ” って思いますから(笑)」(宇野さん)

こうしたサイバーブルのスピード感を支えているのが同社が独自に構築した『Video-Suite』という動画制作システムだ。「今までだと、録った素材をディレクターが再度見て、OK なのか NG なのかを判断して編集に伝えますよね。この部分を、iPad に QRコードを入れて映し込むことで、工数を減らしてスピードアップを実現しました」(宇野さん)

QRコードには「OK」「NG」という情報が入っていて、QRコードが写った映像をシステムが画像処理で分類。後から映像を見返さなくてもOKテイクだけを抜き出して、すぐに編集することができるというわけだ。さらに各カットに、その映像にどんな要素が入っているかをタグ付けすることで、最終的に CM を配信したときのレスポンスデータとしても活用できるようになっているというのも画期的だ。

さらにもう一つスピードアップ化に貢献しているのが、撮影素材をプロキシデータにしてサーバーに送るというシステム。プロキシデータは本データの 1/200 程の容量しかないため、撮影現場からモバイルルーターでも充分転送できる。さらに撮影が終わって本データをサーバーに移すと、ファイル名が同じプロキシデータと入れ替わってくれる。撮影しながらプロキシデータをサーバーに送ることで撮影と並行して編集を進めることができ、大幅なスピードアップを実現する。

「ウチは映像制作のほぼすべての役割を社内でまかなうことができます。編集はもちろん、MAで音を作る人もいるんですよ」と小野寺さんが言うとおり、Video- Suite のようなシステムも自前なら、撮影スタジオやナレーションブースも完備するサイバーブルのオフィス。「テクノロジーの発達のおかげで、今や大がかりなものは必要ありません。シンプルなもので充分なところもあります。ただ、映像の品質だけはしっかり担保していきたいので、かけるところにはお金をかけて、削れる部分は削ってという取捨選択をしながら、制作環境を整備してきました」(宇野さん)

自社内にスタジオを完備

1フロアに白ホリとセットスタジオを備える

白ホリのスタジオ。グリーンバックの布を貼り、クロマキー合成用の撮影にも対応できる。:簡易的なセットを組んで使えるスタジオも。

2のスタジオの壁は襖状になっていて、入れ替えることで背景を交換できる。:スタジオの奥にはナレーション収録用の防音室も備える。

スタジオの照明はARRIのLEDライト・SkyPanel。 :フレネルレンズを装備し、広範囲にフォーカス調節可能なLEDフレネルスポットライトARRI L-Series。

FS7でインフィード広告用の縦位置動画をシネマカメラで

左上・右上: SNSインフィード広告用の縦位置動画をFS5のグリップ部に自作で削り出したアタッチメントを取り付けて、三脚に縦位置で取り付けている。左下:カメラ映像を録画・モニタリングするアトモスASSASSINも縦位置に設置してあった。

ARRI AMIRAを自社で所有

▲TVCMや映画などハイエンドな映像制作現場で活用されているARRIのAMIRA。大手の制作会社でもレンタルで運用することが多いカメラだが、自社で導入し、より高品質な映像の需要にも対応できる体制を整えている。

広告効果のデータに基づいた映像づくり

「基本的に僕らはクリエイティブディレクターであり、プランナーであり、そしてディレクターでもある。一人で制作会社のことから代理店のことまでやらなければならないんです」(宇野さん)。そのため、クリエイターの立場であっても、常に映像が生み出す効果を考えながら制作にあたっているという。

「僕らの主戦場はSNS。再生数であったり、クリック数であったり、映像の離脱位置であったりと、すべてレスポンスデータが得られる。だからこそ、ただ面白い映像作品を作ればいいというのではなく、いかに商品を想起させて売れる映像に落とし込むか。これがとても大事なんです」(小野寺さん)

ここまで徹底してWEBというメディアの特性を知り尽くしたサイバーブルの映像制作への取り組み。確実に接触時間はテレビよりスマートフォンの方が増えているが、その一方で決してテレビはなくなることはないと言う宇野さん。

「広告の効果的な打ち方というのは、今後テレビとWEBで役割分担がより一層はっきりしてくるでしょう。今はまだ、その効果のデータが取れるというWEB動画広告のメリットが、まだお客さんにまでは浸透していきていないかもしれません。でも、その『動画広告の効果を数値化、可視化するのが当たり前』という時代が、そう遠くないうちにやって来るのではないでしょうか」(宇野さん)

オートメーション動画制作システムVideo-Suiteで徹底的な効率化を図る

▲サイバーブル社が独自に構築する制作システムVideo-Suiteの一連のフロー。企画・制作・効果測定までを一気通貫で手がけられるのが同社の強み。撮影・編集の制作フローだけでなく企画や測定も含めシステムを構築することで効率を高める。クリエイターも制作したコンテンツの効果を見ながら制作ができるため、ロジカルに動画制作を行える体制を徹底している。

撮影時にカチンコ代わりにQRコードを撮影してOKテイク出し

▲専用のタブレットにシーン内容を登録して、1テイクごとにQRコードを自動生成。カチンコ変わりにQRコードを写して撮影をスタート。そして、カット終わりにOKかNGかのQRコードを写す。撮影しながらにしてOKテイクの選定ができるため、作業効率が向上できる。

撮影と同時に圧縮データを自社内のサーバーに転送
それを元に常駐のエディターが編集を行う

1:撮影データはモバイル環境でも転送できる軽いデータに自動変換され、自社内のサーバーに送られてくる。

:1のデータを元にオフィスで待機するエディターは即座に編集作業に取り掛かれる。:オフィス内には編集以外に作曲を担当するスタッフも常駐する。

 

●この記事は2017年9月号より転載したものです。