航空カメラマン・野口克也の 前略、空からお邪魔します vol.21「ドローン撮影前のロケハンでチェックしておくべき7つの項目」


vol.21「ドローン撮影前のロケハンでチェックしておくべき7つの項目」
文●野口克也(HEXaMedia)

東京都生まれ。空撮専門会社「株式会社ヘキサメディア」代表。柴田三雄氏への師事の後、ヘリコプター、モーターパラグライダー、無線操縦の小型ヘリなど、空 撮に関わるすべての写真、映像を区別なく撮影。テレビ東京系地上波『空から日本を見てみよう」、BS JAPAN『空から日本を見てみようPlus』などTV番組やCM等の空撮を多数手がける。写真集に夜景の空撮写真集「発光都市TOKYO」(三才ブックス)など。http://www.hexamedia.co.jp/

※この連載は2017年 10月号に掲載した内容を転載しています。

 

私は現在、ドローンという、特機としては比較的新しい機材を運用しています。以前から長いこと空撮はしてきましたが、それは自らヘリ実機に乗っての撮影であり、地上でのロケハンなどには関わることは多くありませんでした。

しかし、ドローン運用ではCMや映画、番組の撮影など最初からチームの一部として動くことが多くなり、ロケハンやシナリオハンティングの段階から一緒に関わることが増えてきています。

今回はそういった現場で、ドローンのオペレーターとして必要な、様々なチェック項目について書きたいと思います。

筆者がロケハンで、いつもチェックしている項目

▲ロケハンでは撮影当日、スムーズに撮影が実施できるかどうかを判断するため、
主に上記のことをチェックしていく。

撮影許可は航空法申請以外にもロケ地の許諾も必要

航空法上の承認は、何よりもまず必要です。次に撮影場所の管理権限を有する自治体、省庁、個人、法人などにドローン撮影の許可を得ることが大前提となります。これらの許可が下りないためにドローンのカット撮影自体がなくなる、ということも少なくないので、この部分は率先して準備を行います。

ただし実際の現場では、通常は制作サイドが撮影そのものの許可と一緒に、ドローン撮影の承諾も得てくることが多いです。

航空法で包括承認等を得ている場合も、承認の有効期限や承認されたマニュアルの内容によっては、飛行させるドローンと飛行させる人が固定されている場合もありますので、増機やオペレーター等の入れ替えが起こりうる場合は、それが可能かチェックしましょう。

また、所轄の警察に予め届け出をしておきましょう。届け出は難しいものではなく、電話一本で終わることも多いものです。

昨今の世の中には、「ドローンを飛ばすことはすべて違法!」と思っている方も少なからずいて、飛んでいるドローンを発見すると闇雲に通報してくれたりします。警察のほうでも予め把握しているものに対してはうるさいことは言わないので、制作サイドから簡単な書式でもいいので、必ず届け出をしておくことをオススメします。

可能な限り本番と同じ機体で電波をチェック

近辺の電波の状況を把握します。事前準備として、電波の発生源になるような携帯電話等のアンテナ、通信設備、発電所・変電所等はグーグル・マップ等でチェックしておきます。

ロケハン現場に到着したら、スペクトラムアナライザ等、電波を可視化できるような機材でチェックをします。ただし、スペアナは人間がいる部分のみの観測になるので、可能な限り本番機と同当機を、それが無理な場合は小型でもせめて同じような周波数・出力の機体を持参して、許可が得られる限り実際に飛ばしてみましょう。離発着場所からでは確認できない、電波障害を出すようなモノを発見したりすることが目的です。

特に気をつけるべきなのは、指向性のあるパラボラアンテナや変電所、大規模なアマチュアの無線施設です。山中の遠隔で動く施設などでは、本部等との通信用に、指向性のある電波を山頂にある反射板などでうまく反射させて、通信しているものがあります。パラボラアンテナの方向をよく確認して、飛行コースにかからないように気をつけます。

またイベントやライブ等、数千人単位で人が集まるイベントでは、お客さんが持つスマートフォンなどからの電波の影響を無視できません。一つ一つは小さい出力ながら、帯域がドローンをコントロールする電波と近いので、群衆からなるべく距離をとるような配慮が必要です。ロケハン時にはその影響は再現できないので実感しにくいのですが、最大限の想像力でリスク管理をしましょう。

地形や建物の形

業界でドローン空撮の活用が進んできた今、初期のように空が開けた場所でののびのびした空撮よりも、クレーンやドリーの代わりとしてシビアな現場での活用を望まれることも多くなってきました。

そうなると、いつも課題を突きつけられる厳しい状況が常になってきます。垂直に50mも掘り下げた採石場や国宝、世界遺産の寺社仏閣のすぐ脇からの離陸ということも珍しくありません。資料等の情報収集を怠らず、周囲の地形や建物の形の全体的な把握を抜かりなく。

地形による風の変化を把握

地形を把握するということは、風の吹き方を把握するということでもあります。離陸地点ではわからない上空の風の状況は、機体を一度飛ばしてみて、技量の許す限りAttitudeモードに入れて飛ばしてみると風の強さを実感できます。またどのような条件の時に、どちらから、どのくらい風が吹くのかを、地元の方に聞いておくのも良いでしょう。

電線の位置

先月の夜間フライトの注意点でも少し触れましたが、夜間フライトが想定される場合は、必ず昼間に周囲の電線及び高圧線の場所、高さをチェックしましょう。離発着場所から確認できない位置にもある可能性もありますので、初めて飛ばす場所では特に慎重になるべきでしょう。被写体から引いていくカットが必要な場合は、まずは引ききった場所から一旦寄って、同じルートで引いていくと障害物を安全に避けることができます。

電源の確保

ロケの場所やフライトする規模によっては手持ちのバッテリーの量が追い付かない時もあり、追加充電をする必要があります。大規模なロケ現場であれば電源の確保もできますが、撮影が小規模な時や、空撮の比重の大きな現場の時は、独自で電源を確保する必要があります。

弊社の撮影用機材車はサブバッテリーと走行充電システムを搭載して、Phantom、Inspire等のバッテリー数本は追加充電できるようなシステムになっていますが、数十本も必要になる時は、エンジン発電機等を用意します。

車等の乗り入れはできるか?

機材・撮影が大掛かりになるとフライト回数も増え、追加の充電設備なども考慮すると機材量も比例して増えます。機材車の脇からフライトできるのとそうでないのとでは人員配置にも影響するので、どこまで機材車を入れられるのかも、チェックしましょう。