【LONESOME VIDEOの流儀32】マンフロットのNitrotechをDSLRで使う


第32回
DSLRになって忘れていたカウンターバランス
ナイトロテックはカメラとの一体感を
あらためて思い出させてくれる

文◎ふるいちやすし

【女優:斉藤佑香】

カメラワーク。つまりカメラをどう動かすかというのは、被写体の意味や意義と撮影者の思いや感性との接点。大袈裟なようだが、本当にそれほど大切に思っている。だからこそ、ちゃんと通じ合えたテイクは、被写体をあるがままに撮ったものや、ただ動かしただけの映像とは次元の違うものなのだ。近頃、残念なことに、電動ジンバルやドローンを使った動きだけの映像をよく目にする。そこに被写体の意味も撮影者の思いも感じない、ただ綺麗に動いているだけの映像。それはただのテスト映像に過ぎない。

マンフロットのナイトロテック(Nitrotech)雲台のデモ機が届いた。この手の新発明にはいつもときめきを感じるが、同時に自分の技術と感性の前に突きつけられた挑戦状のようにも感じる。こちらが成熟して一体化しないとただの「動く映像」しか撮れないからだ。被写体自体にパワーや魅力があればまだいい。それを捉えるだけで報道・記録としては充分だ。ただ映像表現というものは、その魅力を撮影者がどう受け止めているのかがその映像に写り込んでいなければならない。

これは特別高尚なものである必要もなく、種類のことだ。例えば単に自分の子供を撮った映像でも、撮っている人の愛情が感じられるものとそうでないものがある。撮っている時にカメラの操作に集中しているか子供を見ているかの違いだろう。だからこそカメラや撮影機材には慣れまくって血肉化させておかなくてはならないのだ。

新しく手に入れた機材の新機能に酔ったような映像は、いくら綺麗なものでもドヤ映像、または機材自慢にしかならない。だからデモ機を短期間借りて撮影するだけではテストの域を超えないこともあるが、皆さんがこれを使い込んで初めて意味のあるものだということを忘れないでいただきたい。

マンフロットのこの雲台の一番の特徴は0〜8kgに対応するカウンターバランスだ。0kg!? 本当か? 告白すると、実はDSLRを使うようになってからカウンターバランスの調整をシビアに行うことが面倒になって、ついつい手の力で止めていたりした。決して褒められたことではないが、そもそもカメラが軽すぎて跳ね返ってきたり、レンズをしょっちゅう取り替えるごとに変わるバランスを調整するのも面倒だし、じっとヤジロベーと向き合ってる内に感性が薄くなる気さえして怠けていたのだ。この機会に、久し振りに完璧にバランスのとれた雲台で撮影しようと思った。またそんな気にさせるノブ達が並んでいる。

無段階に調節できるカウンターバランスで手を離しても跳ね返らず、お辞儀もせず、スッと止まってくれるようにして、もちろんトラクションも自分好みに縦横まったく同じ、私好みの重さにした。久し振りで勘どころも鈍っていて時間もかかったが、ピシャリと決まった時にしか味わえないカメラとの一体感は格別だ。この日は重さも長さも全く違う二本のレンズを取っ替え引っ替えやってみたが、やはり慣れるまでには訓練が必要だろう。確かにフィックスレンズのカメラを使っていた時は最初に合わせておけばずっとそのまま撮り続けられた。レンズ交換カメラの場合は交換の度に調整し直すと撮影のリズムすら変わってしまうが、その結果がこんなにピタリと止まるのであれば、面倒がらずに毎回やるべきなのだろう。

ただし、やるからには徹底的にやらなければ意味がない。そうしたことで考えられる攻撃的なカメラワークも新たにできそうな気がする。訓練あるのみだ。手軽にスムーズに使えるだけがいい道具とは限らない。必要ならば自分を鍛えて道具を自分のものにするのがロンサムビデオの流儀だ。自戒の意味を込めて!

業務用ビデオカメラと小型ミラーレスの
両方でバランスがとれるのに驚く

▲ 斜めに綺麗に動かすには縦と横のトラクションを全く同じにする。右手は力を入れず、触れるだけでどの方向へも動かせるように私はつまむように持つ。カウンターバランスもちゃんと合わせておけば、止める時、手を離すだけなので、強く握っているとそれだけで動いてしまう。目盛り付きのプレート、大きなトラクションコントロール、カウンターバランス、全てが動かしやすく、また、その気にさせるデザインとレイアウトだ。唯一、不満を言うとしたら、カウンターバランスのノブが大きく飛び出しすぎていて、レンズのフォーカスなどをコントロールする時に当たってしまうこと。

▲ 0〜8kg 対応というのは本当だ。試しにポケットカメラまで付けてみたが上へ向けても下へ向けてもピタッと止まる。この二つのカメラとレンズが一つの雲台の上でバランスがとれているというのは驚きに値する。