【インタビュー取材REPORT】4K 3CMOSカムコーダー Z280とZ190は決定版か?


REPORT●編集部・一柳

ソニーから登場する4K/60pのハンドヘルド
新設計ボディの放熱にノウハウが注ぎ込まれている

▲ お話を伺ったソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ(株)の商品設計担当・酒井康雄氏(左)と商品企画担当・須藤一郎氏。

待ってましたという声

4K/60p対応のハンドヘルドカムコーダーがようやくソニーから登場する。しかも3板(3CMOS)! これからの4K時代のカムコーダーの決定版になりそうなモデルとして期待が高まっている。今号では残念ながらテスト可能なデモ機によるレポートは間に合わなかったが、7月上旬の発売を間近に控えた6月末、開発陣にインタビューをすることができた。

1/2インチ3CMOSのPXW-Z280と1/3インチ3CMOSのPXW-Z190の2台は今年4月のNABで発表され、それぞれ7月、9月に発売される。発表後「思った以上に好評で、待っていました! という声が多い」(商品企画・須藤一郎氏)という。Z280とZ190のどちらも反応がよくて、Z280のほうはハーフインチということで、画質の良さを想像してこちらだという人もいれば、現在持っているモデルがNXシリーズなどで買い替え対象としてZ190を検討する人もいるという。

今年末にはBSで4Kの本放送が始まるというタイミングで、放送局では4K、とくに4K/60pカメラの導入が進んでいるが、それを意識しているのがZ280だという。昨年登場したショルダーカメラのZ450も現場に多数導入されているが、そのサブ機として使われることを想定してメモリーカードをSxSと共通にし、メニューなども違和感なく使えるようにしている。

したがってZ280が放送用、Z190が業務用というイメージがあるが、現在のユーザーはそんなに単純ではなく、フリーのカメラマン、プロダクションが増え、境目がなくなっている。かつてはXDCAMがメディアにSxSを使い、より放送に近い現場、NXCAMは民生と設計を共用し、メディアもSD/メモリースティックProデュオと区分けした時期もあったが、現在はXQDやSDなど汎用メディアを使ったXDCAMモデルも増え、今後はXDCAMがメインになっていく方向だ。

放送にかかわっていなくても、次の買い替えでは4Kは必須、しかも4K/60pと考える人が多いという。世の中には大判センサーのカメラが増え、巷の映像も大判センサーで撮られたものが確実に増えているが、イベントやスポーツではピントの問題もあり、被写界深度が深いほうが使いやすいというニーズはある。また舞台撮影など高倍率ズームが必要という現場も多い。

今回ソニーがビデオカメラの王道ラインナップで提案してきたのは、1/2や1/3といった従来のビデオカメラのセンサーサイズでの4K3板だ。それは従来のX200やX180などの直接の後継機という位置付けではなく、4K時代のハンドヘルドの決定版として、発展的に昇華したモデルとして企画したと須藤氏は言う。

今、4Kであれば1型CMOSという路線もあるが、3CMOSのメリットは色の再現性に優れること。そしてセンサーを3枚使うことによって同じ感度を実現するのであればセンサーサイズを小さくできること。それによってレンズの焦点距離を望遠側に振ることができる。ビデオユーザーや放送局が気にする感度のスペックはF12。当然、画素ピッチの小さい4KではHDよりも感度的には不利になるが、High Sensitivityモードを設け、4KではそれをON、HDではOFFにすることで、4KとHDで同じアイリスワークのオペレートができる。

▲ 上がZ280、下がZ190。ボディは強度を維持しながら軽量化が図られている。

HLGで新しいビデオ映像のテイストが生まれる

この新規開発のセンサーは1/2、1/3インチともにダイナミックレンジも充分に確保できているので、S-Log/HLG(Z190はHLGのみ)での撮影も可能になっている。ドキュメンタリー用途を想定すると、メインカメラはFS7やFS5、Z280/Z190はランアンドガンスタイルでサブカメラ的に使われることも考えられるので、画調を合わせるためにもS-Logを採用した。

それよりも重視しているのがHLG。ソニーが提唱するインスタントHDRはこの2台でも採用しており、今回Z280で撮影した中国雲南省を取材したデモ映像はHLGで撮られている(YouTubeにアップされ、製品のウェブサイトで見られる)。被写界深度は浅くないが階調がしっかり残っている映像はあまり他に例がなく、新鮮な感じがすると好評だという。

4K時は小絞りボケに注意

レンズは、Z280が17倍でフルマニュアルのFUJINONズーム、Z190が25倍のGレンズ。ベースになっているのは従来機のレンズだが、「部品メーカーの協力を得て内部に手を入れており、4Kの解像度は確保できています」(商品設計・酒井康雄氏)

気になるのはこのセンサーサイズになったことによる小絞りボケの影響だ。「たしかに小絞りボケの影響はあります。HDでは従来の感覚で使っていただいていいのですが、4Kはアイリスを開け気味で使ってもらればと思っています。今回電子式可変NDフィルターを採用しているので、アイリスをほぼ開放に近い状態にし続けることは簡単にできます」(酒井氏)

従来の感覚で絞り込んで使い、小絞りボケを起こし、このカメラは解像度が甘いと判断してしまわないように、ユーザー側では使いこなしに知識が必要だ。

実はボディを軽量化した

ボディは新しいデザインテイストを入れた新規設計。前重を改善し、グリップに重心がくるようになっている。従来のX180などは放熱で苦労し、結果的に重くなり、使用時質量で3kg超。ハンドヘルドとしては限界と感じるほど重くなっていたが、Z190はX180より400g、Z280はX180より200g軽量化している。

実はこのボディにはハンドヘルドカメラを作り続けてきたソニーのノウハウが結集されている。新しく採用した4K CMOSの発熱を冷やすためにセンサーの背後でセンサーの冷却フィンと基板を同時に冷やせるように空冷の構造を見直したという。ファンノイズも極力抑えるようにしているというし、強度にしてもこれまでのカメラのフィードバックでどこが壊れやすいのかという知見が蓄積され、シミュレーションをしながら、各所で「肉抜き」をすることで、強度を保ったまま軽量化を図った。

▲ ボディ右上に排気口。雨が入っても基板やセンサーには入らない構造になっている。

4chオーディオ

両モデルとも4ch音声記録に対応しているが、Z280はENGの現場を想定して、ボディに4つのオーディオボリュームが設けられた。ハンドヘルドでこの仕様は世界初。4chオーディオに対応するカメラのほとんどは内蔵マイクとXLR2系統というパターンだが、Z280はMIシューを利用することで、たとえばXLR2系統とMIシューにつけたワイヤレスとか、MIシューにつけたXLRアダプターでXLR4系統入力も可能になる。

その他、顔検出オートフォーカス機能など現場を想定した機能が追加されているが、そこは実機でのテストで検証してみたいと思う。

▲ 4ch音声というだけでなく、音声ダイヤルがボディに4つあるのは世界初。ボディ下に吸気口が設けられ、センサーの裏にファンを設け冷やしている。

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「来るべき4K時代において、長年使っていただけるモデルとして作りました」(須藤氏)と自信を持って言うように、ビデオカメラを牽引してきたソニーがハンドヘルドの完成形として作ったモデルがこの2台。これから10年は使える定番カメラになりうるのだろうか。仕上がりが楽しみだ。

※1:バージョンアップで対応。 ※2:バージョンアップで対応。要有償オプション 「CBKZ-SLMP

●この記事はビデオSALON 2018年8月号 より転載。他にも充実した記事が盛りだくさん!