VR動画制作の心得 vol.5 Arashi VisionのCEO・JKと Insta360 Pro 2の実機を体験!


レポート◉染瀬直人
撮影協力◉ハコスコ

vol.5
Arashi VisionのCEO・JKとInsta360 Pro 2の実機を体験!

▲ 8月27日にハコスコが開催したInsta360 Pro 2のお披露目イベントのために来日した深圳Arashi VisionのCEO・Jingkang Liu(JK)氏と東京で実写テストを行なった。炎天下の中、自ら撮影に臨み、東京での発表会のために寝る間を惜しんで編集にあたった。

 

昨年発売されたInsta360 Proの後継機が新機能と8K/30pの3DVRを撮影できるスペックを備え、Pro 2として発表。同社のロードマップにはマイクロフォーサーズ・センサー搭載のTitanがあるが、Pro 2が先行した形になる。

発表に先駆けて中国・深に赴いた際には同社のCEOのJingk ang Liu氏(通称JK)自ら、特別にデモしてくれた。また同社チームが来日して、PV撮影を敢行した時も東京でロケをサポートをしたので、感想をレポートする。

手持ちの移動撮影中心の撮影でFlowstateが大活躍

撮影当日の東京は、最高気温36度ととても暑い日だった。撮影は新宿をはじめ、渋谷、原宿、東京タワー周辺などで行われた。JKは新製品ができ上がると、必ず真っ先にカメラを社外に持ち出し、自らテスト撮影を試みる。撮影場所のリクエストは人が多く通行する都心のスポットということだったので、私はロケ場所のアドバイスをした。

激しい炎天下の中、今回もJK自ら、街を歩きながら手持ちで撮影していく。このような移動撮影の際に、威力を発揮するのが、今回Pro 2に搭載された「Flowstate Stabilization」。カメラ内に内蔵された9軸のジャロスコープのデータをSDカードに記録し、後でソフトウェアで分析、揺れを低減させるというもの。

▲ 未ステッチのクリップをPremiere Proでそのまま扱えるプラグインの画面。「Flowstate Stabilization」はPro 2の発売後に搭載。筆者はベータ版で効果を確認できた。

実際にポスプロ編集後の映像を確認してみると、強力に手ブレが抑えられ、スタビライザーを使用したようにスムーズな映像へと変換されていた。これなら、手持ちで撮影された素材でもVR酔いする心配はないだろう。JKはVRのフィルムランゲージを豊かにするには移動撮影が重要だと語った。

Farsightで撮影時の取り回しが格段に良くなった

今回、東京の撮影では使用されなかったが、Pro 2を利用する大きなメリットの一つに、遠隔距離通信システム「Farsight」がある。これは送信機と受信機(スマートフォンやiPadを利用)を5.18GHzの信号で通信させ、障害のない場所であれば、地上では300mの遠距離で、リアルタイムプレビューとカメラ設定ができるというものだ。Farsight自体は初代Proでもオプションで使用できるが、その場合のプレビューのフレームレートは1fps。Pro 2なら30fpsと格段に滑らかだ。

▲ 遠隔距離通信システムFarsight。カメラに送信機、受信機にはスマホやタブレットを接続して使う。受信機ではライブビューと設定の操作が可能。

でデモを披露してもらったところ、いくつもの遮蔽物のある40mくらいの距離でも遅延はほぼなく、プレビューとパラメーターの設定が可能だった。360度VR動画の撮影現場では、スタッフの映り込みの懸念があったが、これならそれが解消される。ユーザーから要望の高かった、REC中の安定的なプレビューも実現した。

 

撮影した8K映像を一般的なデバイスで

また、今回評価したいことに、視聴環境への取り組みがある。せっかく8Kの高解像度でVR動画を撮影しても、現状のVRゴーグルでは、4K程度のサイズまでしか再生ができなかった。

Arashi Visionが開発した「Cryst alView」という技術では、Pro 2で撮影したコンテンツを超解像として変換、専用のプレーヤーにより、GearVRであれば8Kの3Dが、Oculus Goなら6Kの3Dが再生可能となる。これは視聴者が見ている部分だけを高画質で再生する独自の新技術によるものだ。

▲ 筆者がサムスンのヘッドマウントディスプレイGearVRで8K解像度のVR動画を視聴できる「Cristal View」技術のデモ映像を視聴している様子。8Kフッテージが美しく再生され、3D効果も自然に表現されていた。

 

その他、HDRのビデオ撮影(8K /30p 2DVR)が可能なので、今回のようにハイライトとシャドウの輝度差が激しい環境、晴天時の室内の撮影などで有効である。そして、全ての動画モードで、I-Logモードが搭載となったので、本格的なカラーグレーディングにも対応できるようになった。

1つのレンズごとのビットレートは、最大120Mbpsへと大幅に上がっている。これは初代Proでは一枚のSDカードに一括して記録していたが、Pro 2ではマイクロSDカード6枚に記録する方式に変更したことによる。もう1つのSDカードには、手ブレ補正用のデータと、低解像度のプロキシ素材のファイルが保存される。

▲ 各レンズの映像をそれぞれ記録することで画質のポテンシャルは向上したものの、microSDカード6枚のデータを一括して吸い上げるシステムが欲しい。今のところは個別にパソコンにコピーする必要がある。

使用するバッテリーに変更はないが、撮影後に本体に触れるとかなり熱くなっていた。Pro 2の重さは、初代よりよりわずかに増えて1386g。これはデータ処理量の増加に伴う熱対策の影響である。

撮影をサポートしながら、Pro 2は初代のユーザーからのフィードバックに応え、プロの撮影現場に通用するVRカメラを目指したのだ、ということを感じた。

 

●この記事はビデオSALON2018年10月号より転載