誌面で連載している「旅の鉄道ムービー」をwebにもアップ。こちらでは実際の動画も見ることができます。今回のテーマは「撮影ポイントを探す」です。ではどうぞ。


◆撮影地ガイドで撮影ポイントを知る
 撮影をするポイントは、第3回でも書いたように列車がすっきりと見渡せることがあります。しかし、せっかく撮るのならば山や海などのきれいなバックで撮影をしたいものです。鉄道写真のカメラマンの間では撮影名所と呼ばれているポイントが日本各地にあります。
 撮影名所はバックの風景が美しいだけでなく、鉄道車両が通過するときにちょうどバランスが取れるようなアングルがとれて、比較的簡単に美しい映像が撮れます。
 
 撮影名所を知る簡単な方法は数多く出ている撮影地ガイドを利用すること。「お立ち台通信」(撮影名所のポイントを鉄道カメラマンの間で「お立ち台」と呼ぶことが多い)などでは、地図や作例、光線状態やレンズワークまで知ることができます。
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▲「お立ち台通信」(ネコパブリッシング)
には、地図やレンズワークなども書いてある。
◆気に入った写真から撮影地を探す
 雑誌に載っている写真で気に入った写真を見つけた時には、キャプションと地図から撮影ポイントを特定できる場合があります。特に鉄道趣味誌などではキャプションに路線と駅間が書いてあることが多いです。
写真1
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地図1
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 写真1では「伯備線 備中神代-足立 特急スーパーやくも」と書いてあります。また写真を見ると高いところから見下ろしていて、周辺は田んぼ、列車は右カーブから直線を走り緩やかに左カーブに差し掛かっているのが見て取れます。この駅間の地図をたどってゆくと地図1のように田んぼの中を走り、線路のカーブも写真の通りの場所が見つかりました。
 さらに道が線路をオーバークロスしているので、道から見下ろすことができることも想像できます。
 また、北西から南東を向いて撮影するので列車正面は終日逆光、午後には列車側面に日が当たり半逆光になるものの、すぐ西側に高い山が迫っているので午後時間が遅くなると山の影になる。などといったことが分かり、このポイントで撮るなら曇りがちの日、もしくは午後比較的早い時間に半逆光で狙う・・・という計画を立てることができます。
写真2
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地図2
TETSU5_MAP2.jpg
 同じように写真2を見てみると、伯備線足立-新郷間で鉄橋を渡っていて、鉄橋の奥にはゆるやかなS字カーブ、線路近くに道が写ってない、背景は山・・・などの条件で地図をたどると地図2の場所が分かってきます。
線路の横の道から撮影で、南向きに走る列車を撮影なので、順光で撮影したいときには午後に行くという計画が立てられます。
(地図の出典:電子国土 http://cyberjapan.jp/
◆列車に乗って撮影ポイントを探す
 写真から見た条件が足りない場合や、自分で撮影ポイントを探したいときには列車に乗ってロケハンをする方法があります。
 まず、背景になる方向の車窓を見て、きれいなバックになる場所を探します。
「ここは絵になる」と思ったら、すぐに反対側の窓を見て、線路の近くに邪魔な物はないか、撮影をする足場になるところはあるか、などをチェックします。線路近くがすっきりとしていて、道などから線路と背景を見渡せるようであれば、あとは現地に行くだけです。
 自分で見つけた撮影ポイントで撮影するのも楽しいですし、撮影地ガイドや気に入った写真を見て撮影ポイントを探すときも、そのまま撮影するだけでなく、どんな季節に撮影したいか、どんな列車を撮影したいか、どんなアングルで撮りたいかなど自分なりの工夫を加えて自分の作品を作り上げてください。
【今月のムービー】南阿蘇鉄道

撮影ガイドに載っているポイント(南阿蘇鉄道 熊本県)から列車を撮影した。良いポイントに立ったら、作例を参考にしつつも、自分なりの撮り方で作品を作りたい。
【今月のお奨め路線】石北本線

 北海道の旭川とオホーツクに近い網走を結ぶ石北本線、春の訪れが遅い北の地でも6月に入ると新緑が美しく光り始めます。残雪の大雪山や深い山の中を走る特急オホーツクや各駅停車のディーゼルカーを撮影することができます。
 このシーンは旧白滝-下白滝駅間で、冷たい水の流れる湧別川に沿って走るシーンです。撮影ポイントは国道沿いにある「白滝発祥の地」の碑があるパーキングの展望台です。
 列車のアップ、風景全体などいろいろなアングルで撮影することができます。
【筆者プロフィール】佐々倉 実
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鉄道映像作家。小学生の頃から鉄道写真を始め、大学生の頃、当時鉄道員をしていた今井洋氏と出会って以来、製作活動をともにする。現在は、佐々倉氏が撮影、今井氏が編集を担当し、雑誌やDVDパッケージを中心に鉄道ビデオを製作している。DVDに『魅惑の蒸気機関車 四季SL紀行』、『日本の鉄道 新幹線・特急編/蒸気機関車ローカル線編』などがある。2010年7月に『感動の美景鉄道』(MAXAM)が発売予定。
鉄道写真どっとネット(http://www.tetudousyasin.net)を運営。
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