◆ビデオカメラを持つことで、より深く「旅」を感じる
 高速で走る特急列車、煙を上げる迫力のSL、窓の外を流れる緑の風景。
鉄道の魅力はなんと言っても、その動きにあります。スチール写真の動く被写体の一瞬を切り取る楽しみとはまた違う、動きや時間の流れを表現出来るのがビデオの楽しみです。自分の気に入った列車を追いかけて作品集を作るのもいいし、季節の風景を行く映像もいい。汽車旅に出るのならば人に見てもらって楽しんでもらえる作品を目指しましょう。


 列車の走る素晴らしいシーンであっても写真のようにワンシーンでは成立しません。“誰に見せる”、“どんな作品を作ろう”という思いをもって撮影したいものです。
 足元に咲く小さな花が持つ季節感、シートに置かれた旅行鞄、そんな小さなシーンが作品の臨場感を高めてくれます。映像を撮る視点は、そのまま風景を細やかに観察し、感動する気持ちに繋がっていくのだと思います。
 ビデオカメラを持つことで、より深く旅を感じる。そんな映像撮影の旅を楽しんでください。
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 百花繚乱のビデオカメラにデジタル一眼ムービーも加わって、鉄道映像を撮影する環境は、どんどん良くなってきています。
 連載の中で鉄道映像撮影の基本や注意点、鉄道ならではのテクニックを紹介したいと思います。
◆鉄道撮影ならではのルールは知っておきたい
 さて、鉄道撮影では独特のルールがあります。何より高速で走る列車からの危険回避や安全運転のためなので必ず守ってください。
 線路への立ち入りは厳禁です。柵がなくても線路中央から3メートルは線路内とみなされます。列車走行時には強い風(列車に引き込むように吹く)もあり、何より運転手から見て不安にならない場所に立つことが大事です。
 駅での撮影の場合は、必ず駅員の指示に従ってください。ホーム上では乗客の安全のため三脚の使用は禁止なので、駅での撮影は旅映像のように手持ちでスナップ的に撮る時を除いて向いていません。列車の走行映像を撮るときは駅以外の場所が良いでしょう。
 自然の中の風景を撮影する場合でも畑のあぜ道や、私有地で撮影することがあります。この場合には可能な限り地元の方の許可をいただき、ゴミ捨てなど、トラブルにならないようにしてください。心ない一人の行動で、後々撮影ができなくなることもあります。
 また、紅葉や桜の季節、SLやイベント列車が走るとき、ベストポイントにはたくさんのカメラマンが集まります。ビデオの場合は三脚を立てる必要もあるので、早めに現地入りして、周りの方と譲り合って撮影しましょう。長時間の待ち時間に、周りの方と撮影談義をするのも、鉄道撮影の楽しみのひとつです。

▲2009年末に磐越西線で運転されたSL X’masトレイン。雪の中で煙を上げて走った。
【今月のお奨め路線】大糸線を走るキハ52

 長野県の松本と新潟県の糸魚川を結ぶ大糸線。その北部(南小谷~糸魚川)は、主に1両のディーゼルカーが走るローカル線です。ここに走る車両は国鉄時代の姿を今に伝えるキハ52、現存する3両が時代ごとの3種類のカラーで走っています。今年の3月13日からは新しい車両になる予定で、現在最期の姿を見ることができます。運転状況や列車ごとの色は「糸魚川地域鉄道部」のホームページで確認してから出かけてください。
糸魚川地域鉄道部のホームページ
【筆者プロフィール】佐々倉 実
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鉄道映像作家。小学生の頃から鉄道写真を始め、大学生の頃、当時鉄道員をしていた今井洋氏と出会って以来、製作活動をともにする。現在は、佐々倉氏が撮影、今井氏が編集を担当し、雑誌やDVDパッケージを中心に鉄道ビデオを製作している。DVDに『魅惑の蒸気機関車 四季SL紀行』、『日本の鉄道 新幹線・特急編/蒸気機関車ローカル線編』などがある。2010年春に『感動の美景鉄道(仮題)』(MAXAM)が発売予定。
鉄道写真どっとネット(http://www.tetudousyasin.net)を運営。
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