【目次】
①素材の取り込み、編集、グレーディング、出力までの基本操作をマスターする
②メディア~素材の取り込み~
③カラー〜 プライマリ・カラーコレクション〜
④プライマリ・カラーコレクションで使うその他のツール
⑤セカンダリーでのカラーグレーディング編
⑥セカンダリーでのカラーグレーディング編(続き)
⑦パワーウィンドウ・ベース、カラーベース、スタビライズ、サイジング
⑧ノンリニア編集ソフトとの連携
⑨拡張された編集機能について
⑩拡張された編集機能について(続き)
⑪知っておくと便利な機能
レポート◎林和哉
◎この投稿は、ビデオサロンが制作したMOOK「Digital Cinema Camera 3~4K映像制作ワークフロー」(2015年)の中の記事をウェブ用に再構成してアップしたものです。したがってソフトウェアはバージョン12段階ものです(現在は12.5)。ちなみに本書は現在も販売中です。こちらからどうぞ。
Chapter 3:セカンダリーでのカラーグレーディング編(続き)
カスタムカーブ〜作用域を指定する
セカンダリーとしてカラーグレーディングする作用域を指定する操作は、画面下部中央のセンターパネルです。
作用域を選択した後、レフトパレットやセンターパレットのカーブ(後述)などを使って色調整をします。初期画面では、「Curves」の「Custom」が表示されています。このカーブは、色調整をしたことがある人は、必ず見るものですね。
斜め線の左下は0、右上を100として、0の入力に対して0を出力、50の入力に対して50を出力、というカーブです。ここでいう入力とは、ソースクリップの色情報で、出力は調整結果です。このカーブを調整して、50の入力を60で出力しなさい、と命令すると、中間域が少し明るくなります。それに付随して、カーブの曲線が生まれるので、周辺域もなだらかに上がっていきます。0と100は固定されているので、とても長大なガンマカーブの調整場所、とも言うことができるでしょう。この調整を受ける場所を指定し「カラー Wheels」や「Custom Curve」で調整するのがセカンダリーとなるわけです。
アンカーの追加
カーブ上でクリックするとアンカーが打てます。それをドラッグして調整します。ポイントは複数打つことも可能です。「メニュー」→「デフォルトのアンカーを追加」すると、ローミッド、ミッド、ハイミッドにポイントが打たれます。
必要のないポイントは、右クリックで消すことができます。
編集可能なスプライン
ポイントは、ベジェ曲線として編集することもできるようになりました。 「メニュー→編集可能なスプライン」とするとハンドルが現れます。元に戻す場合は、同じメニューを再度選びます。
▼
カーブの分離
初期設定では、カーブのどれを触っても同じようにすべてのカーブが動きます。場合によってはRedだけ、Greenだけ動かしたい、ということもあるでしょう。その場合は4色のボックスの任意の色を押します。すると、それぞれを分離して動かすことができます。また、戻すには、一番左の「リンク」のボタンを押します。
作用域を限定する3つの考え方
セカンダリーにおいて、調整の作用域を限定する方法には3つの考え方があります。それは、
- キー・ベース(クオリファイアー)
- パワーウインドウ・ベース
- カーブベース
の3つです。
キー・ベースは、クリップのHSL、RGB、Luminance、3Dを利用し、グレーディングの作用域を限定します。パワーウインドウ・ベースは、円、四角、自由描画などのシェイプを使用してグレーディングの作用域を限定します。カーブ・ベースは、HSLを利用して、作用域をカーブ上で指定し、カーブの変化量で対象チャンネルに働きかけます。上記2つとは性質が少し異なります。
キー・ベース(クオリファイアー)
DaVinci Resolveでは、「クオリファイアー」と呼ばれています。センターパネルの上段に並んだアイコンの左から2番目がそれに当たります。そのアイコンをクリックしましょう。プルダウンメニューにはHSL/RGB/LUM/3D とあります。
HSL〜RGBまで、基本の手順は以下の通り。3Dは「便利な機能」(Chapter 6)にて解説します。
【1】「選択範囲」の一番左、スポイトツールをクリックし、ビューワーの中から指定したい色をクリック。ここでは女性のドレスの赤い色をもっと映えさせるため、ドレスの部分を適当にクリックしました。
【2】選択範囲を視覚的に見るために「ハイライト」を表示しましょう。
「選択範囲」の一番右、「ハイライト(反転)」をクリック。選んだエリアを確認します。
▼
また、ハイライトは、メニューの「表示」→「ハイライト」→「○○ハイライト」でカラー表示、白黒表示、差分を選ぶことができます。
▼
おおよその選択ができたので、さらに“スポイトにプラスマーク”をクリックします。追加で指定したいところをクリックしながらなぞると、その部分もマットとして切り抜かれます。
▼
このとき、他のエリアに含まれるHSLをサンプリングすると、他の場所も含んだマットが生成されます。その時は“スポイトにマイナスマーク”をクリックして、除外したい部分をなぞっていきます。これだけで、かなり綺麗なマットができあがります。
さらに、「羽マークにプラス」をクリックして、サンプリングした境界線をなだらかにできます。行きすぎた場合は「羽マークにマイナス」で修正しましょう。
【3】さらにブラッシュアップするには、狙ったエリアだけに絞れるように、色相、彩度、輝度パラメータを調整します。便宜上、順を追って説明しますが、これまでも、ここからも、どのツール、パラメーターから触っても良いものです。実際の作業では、あれこれ触って行ったり来たりすることになります。
色相
センター…色相のどこを中心にするかを指定します。スポイトツールを使えば、まずは決めてくれます。
幅…センターで指定した色相の前後をどれだけ含めるかを指定します。
ソフト…センターと幅で決めた色相域の境界線を緩やかにします。
対称度…ソフトの境界線の比重を決めます。数値を動かすと、台形の色相のグラフの右側、ないし左側が垂直になっていき、指定エリアが変わっていくのが分かるでしょう。
彩度
Low…サチュレーションを見て、どこまで濃度の薄い部分を含むかを指定します。
High…サチュレーションを見て、どこまで濃度の濃い部分を含むかを指定します。
Low ソフト…Lowの境界を緩やかにします。
High ソフト…Highの境界を緩やかにします。
輝度
Low…ルミナンスを見て、どこまでの低輝度部分を含めるかを指定します。
High…ルミナンスを見て、どこまでの低輝度部分を含めるかを指定します。
Low ソフト…Lowの境界を緩やかにします。
High ソフト…Highの境界を緩やかにします。
パラメーターも調整して、随分ときれいになったマットが以下になります。多少残った細かい部分は、HSLパラメーターだけでは限界に近いところまで追い詰めた結果としましょう。
【4】マットフィネスを調整して、キーイングしたマットをクリーンアップします。
クリップブラック…しきい値より下の黒に成りきれない中途半端な信号を真っ黒扱いにします。
クリップホワイト…しきい値より上の白に成りきれない中途半端な信号を真っ白にします。
クリーンブラック…ブラック部分を綺麗にします。
クリーンホワイト…ホワイト部分を綺麗にします。
ブラー範囲…マットにブラーをかけ、境界線を柔らかくします。
In/Out レシオ…マットの輪郭を内側に縮ませたり、膨らませたりします。
キー・ベースでの調整のコツは「綺麗なマットをつくろう」というよりも、実際の馴染みを見ながら、調整した色味が自然で、かつその調整がシーンを美しくするかどうか、という点で判断することです。
少し雑なくらいでも、境界線が馴染んでいれば、カラーグレーディングの結果に大いに貢献してくれるものです。その自分なりの良い塩梅を見つけるといいですね。