パナソニックAG-HMC155開発インタビュー(前篇)


SDカードに記録するAVCHDカメラとしては、初の本格的な業務用カメラがパナソニックのAG-HMC155だ。9月末から発売された同カメラは販売好調だという。DVの名機、DVX100からの流れを整理し、今後の業務用AVCHDカメラの進展を占うために、パナソニック開発陣にインタビューした。答えていただいのは、パナソニック AVCネットワークス社システムAVビジネスユニット企画グループマネージャーの宮城邦彦氏と同・BCグループ制作カメラチームのリーダー吉岡寛治氏のお二人である。
(本内容はビデオサロン11月号に掲載したものを再構成したものです)



▲左が制作カメラチームの吉岡氏、右が企画グループの宮城氏。
◆DVの名機、DVX100シリーズはまだ売れ続けている
――今日、こちら(大阪)に来る新幹線の社内で取材している撮影クルーを見かけたのですが、カメラは御社のDVX100Aでした。これはたまたまではなくてDVX100シリーズは、こういったドキュメンタリー取材や映画のメイキングビデオなどで、本当によく使われていますね。
宮城 おかげさまで、DVX100シリーズは大ヒットしました。実は最新モデルのDVX100Bはまだ売れているんです。他社はDV専用モデルではなく、HDVに移行していますが、わが社のDV専用モデルがこれだけ好調というのもおもしろい現象です。
――まさに名機ですね。ふと気がつくといまや100万円以下で放送用の技術を投入したカメラが増えてきましたが、先鞭をつけたと言ってもいいかもしれません。まずはこのDVX100の開発経緯から始めたいと思います。スタートはいつ頃でしたでしょうか?
宮城 デジタルシネマ用のバリカムが2000年でしたから、その後に始まりました。DVX100の発売が2002年です。当時はソニーさんのVX2000/PD150があったと思いますが、それにない「とんがった」機能を入れたカメラを作ろうと。それが24Pとシネライクガンマです。
――その「とんがった」機能が、今やこのクラスのカメラにはすべて採用されているスタンダード機能になった。こんな状況は予想されていましたか?
宮城 このモデルは開発にあたって、徹底的に市場リサーチをかけたんです。当時、われわれがバリカムなどで映画用、放送用に開発をシフトしていましたので、業務用のクラスの中で強い商品がなくなっていました。そこで、市場リサーチをして、何が必要なのかを調べていきました。DVXはそのデータに基づいた商品企画をしたモデルだったんです。
――市場調査すると中庸なカメラしか出てこない気がしますが、よくこんな個性的なカメラが生まれましたね。
宮城 アメリカの一部のところで、自主映画などを作っている人たちの声をきいて回っていたんです。彼らは本当はフィルムでやりたいんだけど、なかなかフィルムではできない。ビデオを使った映画っぽい作品を作りたいという声があったんです。すでにバリカムがありましたから、その機能をもう少し低価格ゾーンに持っていこうと。バリアブルフレームレートは無理にしても、24Pとシネライクガンマはやろうということになりました。
――その機能だけでは、これだけの大ヒットにはなりませんよね。
宮城 はい。あとはマニュアル撮影操作へのこだわりです。カメラマン、そして将来の映画が撮りたいと思っている撮影者の卵に方々にとって、自分でコントロールできるレンズ部分が必要だと思っていました。そしてワイド側重視のレンズ。それまではワイコンつけてボディ全体のバランスが悪くなっていましたので、ワイコン不要にしてほしいという声が寄せられました。
――ワイド重視にすると前玉が重くなると思うのですが、ボディのバランスがいいのもこのシリーズの特徴です。
吉岡 全長が短めでずんぐりむっくりしていますが、グリップがボディの中央にあって、バランスが崩れません。スタイルとしては、レンズを強調するとともに、眼にぴたりと当たる大型のビューファーも特徴です。これは実はDV時代のEZ1という業務用DVカメラに端を発しています。あれが当時評判がよかったので、あの感覚のファインダーを継承しました。
――当時は、液晶パネルはなかったですが、レンズとファインダーの一直線の筒型デザインというのが印象に残っています。
吉岡 当時は同軸がいいといっていたんですが、リサーチしていくと、同軸じゃないほうがいいという声が多くて(笑)、DVX以降は、レンズの光軸よりもファインダーの光軸が上にきています。同軸だとちょっと持ち上げぎみにしなかればならないですから。
――ハンドヘルドカメラとして完成した形ですが、すこしずつ変わっている部分もあるんですね。
吉岡 DVXをベースにしながらも少しずつ進化しています。たとえばハンドルの前の柱ですが、まっすぐ下におろすと、カメラマンが目を外して被写体を見ようとした時に、真中に棒があって邪魔です。それで右側にシフトさせているんです。これはHVX200からこの形状になっています。
宮城 それからグリップですが、へんに回転するよりも、しっかりホールドできたほうがいい。このグリップ部分は実は凝った形状をしていますが、手の大きいおおきい人から小さい人までフィットするようにしてあります。重いとどうしても左に傾くんですが、それを防ぐためには、軽くすることも重要ですが、まずはグリップでしっかり持てることが大事です。
このボディのコンセプトは現在にも繋がっています。
HMC-DVX.jpg
▲左がDVX100A、右がHMC155。ボタン配置はほぼ同じである。
HMC155-handle.jpg
▲ハンドルの前方のバーは、カメラマンの視野を確保するために右側にオフセットしている。
中篇に続く