3日間で企画・撮影・編集をやり切る。ソニー主催の実践型ワークショップ「CREATORS’ CAMP」の第7回が、広島県福山市を舞台に開催された。参加したクリエイターたちは何を学び、何を感じたのか。現場に密着しながら、その実態を追った。

取材・文/編集部 岡堀

実践の中で学ぶCREATORS’ CAMPという場

ソニー主催の「CREATORS’ CAMP」は、クリエイターがチームを組み、3日間で地域のPR映像を企画・撮影・編集する実践型ワークショップだ。第7回は2026年1月30日(金)から2月1日(日)までの3日間、広島県福山市にて開催された。福山城や鞆の浦といった歴史的な観光地を持ちながらも、動画によるPRはまだ十分に手が届いていない、そんな状況の中、市側も「行政とは違う発想で、若い世代に届く映像を」と、このキャンプに大きな期待を寄せていた。

今回はA、B、C、Dの4チームに分けられた参加者層は幅広く、下は17歳の高校生、上は写真好きが高じて映像制作に興味を持ち60代にして初参加を決意した女性まで。地元で映像制作を手がける方が多い一方で、趣味の動画制作を副業に発展させたい方、映像を新しい事業の柱にしたいという方も複数参加していた。前回参加者も数名おり、自己紹介の場で「今回こそ優勝を目指したい」と宣言する参加者もいた。普段は個人でひとり制作を続けているからこそ、チームでの制作とプロの講師から技術やテクニックを直接学べるこの場は特別だと参加者は語っていた。

3日間で福山の魅力をどう切り取るか


初日は、福山市の理解を深めるところから始まる。市の担当者によるプレゼンテーションでは、福山城や鞆の浦といった観光地、地域の名産などが紹介され、参加者たちはそれぞれの視点で「何を切り取るか」を考えていく。その後、各チームに分かれて企画会議が行われていく。誰に向けて、どんな映像を作るのか、この段階で作品の方向性がほぼ決まる。今回のキャンプを受け入れた福山市の担当者は「動画は一度上げれば発信できる。紙の発行物は予算が減っている中、動画なら届かなかった層にもリーチできる」と動画コンテンツの魅力に特に若い世代へのアプローチを大きく期待している。鞆の浦には若い観光客も増えてきているが、宿泊施設を利用するのはまだ上の年齢層が多い。そうした状況を変えるきっかけに、今回の映像がなればという思いもあるという。

4チーム4様、企画のスタートラインはそれぞれだった。チームAでは、まず講師のUssiyさんがPR動画の作り方の心得をメンバーに伝えるところから始まった。動画制作の経験者が多くないチームだったが、男女や年齢のバランスがよく、付箋を使ってアイデアを活発に出し合う姿が印象的だった。経験の差を多様な視点で補う、そんなチームならではのスタートだった。チームBはキャンプ経験者が2名いたこともあり、役割分担が早い段階から決まっていた印象だ。取り上げる題材や映像の方向性を落ち着いて模索しながら、着実にコンセプトを固めていった。チームCはメンバーが3名と少数精鋭だが、全員が映像制作に携わっているという強みがあった。ひとりひとりが即戦力として機能し、講師・エムスタさんの企画力も加わることで、チーム全体に一体感が生まれていた。チームDにもキャンプ経験者が2名。高校生メンバーも積極的に意見を出し、それぞれが自分の役割を全うしていた。講師のENDAさんはお兄さん的なポジションで、的確なアドバイスをさりげなく送り続けた。

テーマが決まると、取材先の選定とスケジュールを詰める作業へ。その後、機材説明の時間が設けられ、1日目が終わった。2日目は朝からロケ撮影へ。各チームが市内各地に散らばり、企画に沿った素材を撮影していく。午後には拠点に戻り、そのまま編集作業へと突入する。3日目は朝から仕上げの編集が行われ、昼過ぎに作品を提出。その後、全チームによる上映と発表・講評会が行われた。

今回密着したのはCチーム。彼らが選んだテーマは「出張サラリーマンの視点で福山を再発見する」というものだった。着目したきっかけは、初日に市の担当者から聞いた一言だ。「福山に来られる方はどういった人が多いですか?」と尋ねたところ、「出張のサラリーマンや、倉敷・尾道で宿泊できなかった方の受け皿として使われている」という答えが返ってきた。潜在的な観光客になりうるサラリーマン層——そこをターゲットに据えることが決まった。映像の上映場所の候補に駅のデジタルサイネージもあると知ると、「音がなくても伝わる」「どこから見ても内容がわかる」「飽きずに見切れる」という3点を制作の軸にしたという。注目すべきは、広島を拠点に活動するカメラ歴15年のベテランカメラマンを、あえて単独主役・主演にキャスティングした点だ。存在感のある人物を一人の主役に据えることで、ストーリーはシンプルにまとまり、残りのメンバーは撮影に集中できる。メンバー構成、土地の利、上映場所、与えられた条件をひとつひとつ丁寧に読み解きながら、その中でできることを精一杯やる。そんなCチームらしいアプローチだった。そこに講師のDINさんとエムスタさんの細部へのこだわりや演出へのプロの視点が入ることで、PR動画としてのクオリティが一気に輪郭を持ち始めていくのをそばで感じた。

このキャンプのもうひとつの特徴は、講師陣もまた若く、毎回本気で臨んでいることだ。第1回から参加し続けているUssiyさんをはじめ、回を重ねるごとに各講師の「教え方」が洗練され、個性として際立ってきている。「どこまで手を出すべきか」と講師陣もまた、毎回この問いと向き合いながら現場に立っている。企画段階でアイデアが膨らみすぎて止まらないチームには、映像の完成形から逆算する視点を伝え、撮影では主人公の心情まで掘り下げるよう促す。一方で最終的な判断は参加者に委ねる。教えすぎれば主体性を奪い、放置すれば時間だけが過ぎていく。そのバランスを取ることは、回数を重ねても難しい問題だという。講評会では、各講師が担当外チームの作品に鋭いフィードバックを次々と繰り出した。技術的な指摘、構成への提案、そしてそれぞれにあたたかい言葉を送る。その姿は、担当チームの優勝を本気で目指して伴走してきた者たちならではの眼差しだった。教え方も、映像への哲学も、講師ごとにまったく異なる。参加者にとって毎回違う講師から学べることは、このキャンプの大きな魅力のひとつになっていると感じた。

発表会で見えた4チームの多様性

最終日の発表・講評会では、4チームがそれぞれの作品を上映し、制作意図をプレゼンテーションした。審査は担当チーム以外の講師6名と福山市担当者が行い、「映像美」「企画構成力」「PR映像としての質」「魅力の発信力」の4項目で採点された。

トップバッターは【Cチーム】。コミカルな演出の中に観光情報を詰め込んだ構成が評価された。市の担当者からは「自治体のPR映像でコミカルなものはなかなか作りにくい中、やりきりながら欲しい観光情報もしっかり入っていた」と高評価。一方、講師陣からは「あと2〜3カ所ロケ地を回れたらさらに良かった」という惜しむ声が上がった。

二組目は【Dチーム】鞆の浦を「プロポーズの場所」として選び、過去の恋愛への懐かしさを呼び起こす情緒的な映像。「普通の地方PR動画とは違う、過去の記憶に懐かしさを思い浮かべるような動画にしたかった」と語っていたように、観光地の紹介にとどまらない、感情に訴えるアプローチが印象的だった。キャンプ初の試みとして、AIを活用したオリジナル楽曲のミュージックビデオとして制作。MV制作の経験が豊富な講師・Kai Yoshiharaさんからは「3日間でここまでやりきったのがすごい」と称えられた。「サビでもっとカットを割って展開をつけると映像として良くなる」という具体的なアドバイスも添えられた。

三組目は【Aチーム】は「新幹線を乗り過ごした3人」が予期せず福山を観光するコミカルな旅を描いた作品。コンセプトは「こんないいところ、知らなかった」という発見の驚き。三人の動向を見守る謎の女性が実は観光案内所の職員だったという伏線回収が笑いとともに機能した。講師陣からは「三人のキャラクターを上手く引き出していた」「冒頭の駅ホームで『福山』と書かれているシーンで物語の起点が一瞬で伝わる」と評価された。一方で「各キャラクターの個性にもっとギャップがあれば意外性が生まれた」「背景の余計な映り込みなどにも気を配るとクオリティが上がる」といった具体的な改善点も示された。

最後【Bチーム】テーマは「ものづくりの街・福山」。鉄工(工)、発酵文化のみりん蔵(酵)、人と食の交流(交)という3つの「コウ」を軸に構成された作品。撮影直前にトラブルもあったが、チームは臨機応変に対応してひとつの映像にまとめ切った。講師陣からは「全体的に落ち着いた街の雰囲気が反映されたシックな映像」「インタビューに答えた方々の思いがしっかり伝わってくる」と高く評価。映像の完成度、構成、メッセージ性のバランスが優勝の決め手となった。

福山市観光戦略課の住吉さんはまとめの言葉で、「まるで1ヶ月かけて作ったような完成度だった」と感嘆し、「いろんな魅力を発見して映像にしてもらえた。福山のファンになってもらえたことが嬉しい」と語った。

CREATORS’ CAMPが生み出すもの

CREATORS’ CAMPが見据えているのは、単なる地域活性にとどまらない。地方で活動するクリエイターが技術を磨き、つながりを持ち、それぞれの場所で新たな価値を生み出していく、その循環そのものが、この取り組みの本質なのだろう。

個人制作が中心になりがちな映像制作の中で、チームでつくる経験と他者からのフィードバックを得られる場として、このキャンプの価値は大きい。3日間という制約がむしろ純度の高い集中を生み、4チームはそれぞれ異なるアプローチで福山の魅力を映像に刻んだ。次回はどの街が舞台になるのか。CREATORS’ CAMPは、地方と若い才能をつなぐ場として、静かに、しかし確実に広がり続けている。

ソニー CREATORS’ CAMP