第1回上映 藍河兼一 監督作品 『戦士は櫻の木の下で―樹海の精霊篇』


 EOSムービーの登場を機に、映画的な表現は身近になった。デジタル一眼の価格は手頃であり、レンズを含めても予算的なハードルは相当低い。カメラ本体は小型で、多くを望まなければ、少人数でもロケは組める。夢に思えた映画作りも、あとは自分の創作意欲があれば充分という恵まれた環境になったのだ。
 そこでビデオサロンでは、そのことを身をもって実証するために、1年を通して、10分程度のショートムービーを制作することにした。主演に女優の藤沢玲花さんを迎え、月ごとに異なる方に制作を依頼。完成作品はホームページで毎月公開する。制作の条件は、原則ロケは1日、制作費は5万円というもの。これで「小規模でも映画は作れる」を証明する。
 第1回上映作品の制作を依頼したのは、本誌「実践!絵コンテトレーニング」でお馴染みの藍河兼一監督。「銃弾を一発も撃たない戦争映画」をテーマに平和を訴えたいという熱い要望に応え、17歳直前の藤沢さんには女性兵士を演じてもらうことになった。
 ロケは年も押し詰まった2010年12月28日。実は、第1回目にして原則を破り、1月5日に撮り直しも行なった。女優・監督とも納得のいかないシーンがあったためだ。それはそれで問題なし。さて、上映の時間になりました!


『戦士は櫻の木の下で―樹海の精霊篇』



あらすじ
誰と戦っているのか、何と戦っているのかわからない兵士の少女レイカ。手負いの傷を負いながら、森の奥へと逃げ込む。そこで敵兵でありながら、戦いの最中に友情が芽生えたユウナの死体を見つけ、自分の無力を知る。●カメラ:キヤノンEOS 5D Mark II / ●編集:Final Cut Pro 7 / ●上映時間:14分
監督/脚本/撮影/編集●藍河兼一
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▲劇場公開作品『アディクトの優劣感』の監督を務める。EOSムービー登場後は、積極的にPVやショートムービーの制作に取り組む。
藍河兼一監督の公式HP
主演●藤沢玲花
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▲少女兵士・レイカ役。94年1月20日生まれの17歳。アイドルから女優として大きく羽ばたくために、今回の企画に挑戦することに。
藤沢玲花さんの公式HP(ジェイライブ)
GUEST●池田優菜
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▲敵兵・ユウナ役。声優&グラビア&女優の卵。本誌で制作レポートした『海のみる夢』にも出演。寒さに耐えた彼女の気力に拍手!
池田優菜さんのオフィシャルブログ
制作スタッフ
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▲スタッフは出演者も含めて総勢5人。中央の藍河監督をはさんで、左にレイカ役の藤沢玲花さん、右にユウナ役の池田優菜さん。後列左に敵兵2と音声担当の荒幡信行さん、右はヘア&メイクの齊藤沙織さん。お疲れさまでした!!
荒幡信行さんの公式HP
齊藤沙織さんの公式HP
音楽:江藤雅樹(ビッグメイドミュージック)公式HP

制作後記 / 藍河兼一


 ジャンルとしての「戦争映画」をずっと作ってみたかった。「戦争映画」と聞いただけで何十億の制作費が必要だろうと思うかもしれない。しかし今回の予算は制作費5万円…。私が考えたのは、低予算でもシチュエーションに制限を加えることによって、それを可能にさせる脚本だった。何を作るにしても枷かせ
はある。予算、時間的制約、物理的な制限など、その与えられた枠の中でどうやって映像化するのかを考えた時、まずはじめに、その枠となるシチュエーションを決めるのだ。
 1)少女兵士が2人だけ登場する(敵兵を含めてもキャストは3名まで)。
 2)舞台は人気のない荒野や森の奥深く。
 3)銃火器を持っているが、発砲しない
 これらを枠にして脚本を書き始めた。脚本を書いている中で、爆破シーンを描きたいと思った。そこで、爆発後の画を50㎜の単焦点レンズで、画角の狭い画で表現する方法を考えた。煙と飛び散った小石、枯れ葉をレイカに投げつけて撮影すれば、画面に映り込む狭い範囲の中だけで爆発を表現できる。作品全体を通しても、ほとんどを50㎜の単焦点レンズ1本で撮影し、少女兵士にグッと寄った狭いアップショットで緊迫した状況を表現した(ちなみに、森の中へ入って行くカットとラストカットのみ20㎜の単焦点を使っている)。
 制作部分ではスタイリストをつけず、衣装と小道具は私の私物をベースにかき集めた。主人公レイカはモスグリーン、敵兵のユウナは黒の軍服で統一。ロケ当日はヘア・メイクを入れ、汚しと死体のメイクを役者に施してもらった。撮影現場は戦場だ。気分を高めるため、私もミリタリーファッションで撮影に挑んだ。主観映像を自分で撮影するために、カムフラージュの軍パンを履いて自動小銃を片手にジャングルブーツで草木を分け入ったりもした。
 今回の企画は、私のここ2年ほどの「ミニマム・フィルム」という撮影スタイルにすごくぴったりの企画であった。その枠の中で制作した小さな戦争映画をぜひご覧下さい。