滑らかで自由なカメラの動きができる、フレキシブルアームのようなツールを求めていた
美しい被写体に出会った時、それが動かない物で、風も雲の流れもなく、ましてや室内であったりすると、動画を撮る意味を見失ってしまいそうになる。だがそういう時こそカメラマンが被写体に向き合う姿勢を問われる絶好の時なのだ。その物の存在美を受け止め、自分の心にそれがどう響き、そして視聴者の目にそれがどう現れ、どう消えていくのか。そういうことを考えながらカメラワークという動きに変えてゆく。これはカメラマンにとって、痺れる瞬間である。それは被写体に動きがあったり、ましてや人のように思いがあったりしても同じことなのだが、ついその動きを追いかけてしまうだけの映像になってしまうことがある。それは単なる記録になってしまい、カメラマンの個性が消えてしまうことにもなりかねない。
カメラを動かすことにこだわりまくっている私は、三脚の他にスライダー、ジンバル、一脚、そしてフリーハンドとありとあらゆるものを使う。それぞれにいいところはあるが、同時にどれも自由度と安定度の板挟みだ。そんな中で今回、の「Cパンカメラガイドアーム」というとても魅力的なツールを試すことができた。小さな旅に、ワンマン撮影に、というお手軽なものでは決してないが、それでもキャリーカートにスッポリ収まるので、撮影特機としてはコンパクトだと言える。この連載で取りあげるのも、ギリギリ小さな作品撮影でも使えそうな機器としての可能性を感じたからだ。
Cパンガイドアームは水平、垂直、斜めのカメラ移動が可能なアームで移動幅160cm。水平移動時耐荷重8kgだが、デジタル一眼向きだろう。アームの角度を変えることで被写体に光軸を向けたままののカメラワークも可能。30万円。
自由度と安定度のバランスで言えば、基本は安定したスムーズな動きを生み、それに少し自由度を加えた物。スライダーが直線的な動きしかできないのに対して、それが少し自由になる。それならジンバルのほうがよいと感じるが、大きなポイントはフォーカス等のカメラのコントロールがダイレクトに行えるということ。
実際は初めて使う時にカメラだけに集中するのはかなり勇気がいるが、慣れてしまえばそれも可能になるのではないかと思われ、アシスタントがもう一人いて、脚を支えてくれれば確実に可能になる。従来のスライダーとは違い、純正のパッケージだけで動きが横でも縦でも斜めでもカメラをスライドすることができ、カメラの向きも二本のアームの位置を調節するだけで、内向きにも外向きにも弧を描くことができる。これだけと言えばそうなんだが、これらを組み合わせることで、被写体に対して実に多彩なアプローチができる。
⇧基本の水平の動き。組み立てには慣れるまで少し時間がかかりそう。組み立て時はアームに手を挟まないように注意する。
⇧三脚への設置部を90度回転して上下の動き、斜めに固定して斜めの動きも可能。カメラは平行移動ではなく弧を描くようにした。この時の動きの様子は以下。女優:辛島菜摘
そうなると欲が出て、脚の付け根とカメラマウントにビデオヘッドを付け*、さらにフレキシブルな使い方に挑戦してみた。正直、何がどう動いてそうなるのか完全に把握する前にタイムアップとなってしまったが、いつか長期間トレーニングできることがあれば、ぜひ習得してみたい魅力的なフレキシブルアームだと感じた。(*ビデオヘッドは100mmボール径のマンフロットの509HD(三脚側)とMVH500AH(カメラ側)の2種類を使用した。カメラを持って動かした場合、重量バランスが崩れてセット全体が倒れてしまうので、脚を押さえる人も必要である)
⇧推奨の使い方ではないが、ビデオヘッドを2つ追加して自由に動いてみた。これを意のままに使いこなせば素晴らしいカットが撮れそう。
その追加したヘッドでカメラワークし始めると、スライドの動きにももう少し粘りがあればさらに気持ちよくカメラワークできるのでのではないかと思い、いつかメーカーの方とお話できる機会があれば、リクエストしてみたいと思う。
ずっと前からフリーハンドのように自由でスムーズな動きをしてくれるフレキシブルアームのような機器を望んでいた。電動ジンバルでその夢は叶ったかのように思えたが、マニュアルレンズを多用する私にとって、撮影中にカメラに触れられないのは致命的。まだ100%とは言えないが、Cパンカメラガイドアームのアプローチはかなり私の夢に近づいているように思う。願わくば、もう少し軽量でシンプルに脚ごとすぐに移動させられるようなものはできないだろうか。
⇧代理店の銀一では自社扱いのthinkTANKphotoビデオ・トランスポート 20、ハスキー3段三脚 などと組み合わせたセット販売もしている。このセットだとこのように持ち運びも可能になる。
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目の前にある機材の基本的な使い方だけに縛られるのではなく、それらを組み合わせたり、時には自作してみたりと、常に新しいカメラの動きを求めて想像することもロンサムビデオの流儀だ。