このページはビデオサロン2017年6月号連載「LONESOME VIDEOの流儀」(ふるいちやすしさん)からの流用です。
JVCのLS300が採用した4:2:2記録を沖縄で試す
沖縄へやってきた。去年、撮影監督を務めたドキュメンタリー作品で沖縄国際映画祭に参加するためだが、上映と舞台挨拶を終えた後、派手なセレモニーは遠慮して沖縄の原風景を撮りたいと考えた私は地元のFM局の人にどこかいい所はないかと聞くと、なんと安いレンタカーを手配してくれて、別のパーソナリティーの人に案内を頼んでくれた。結局、地元の人でないと絶対行けないような素晴らしい場所を撮ることができたが、その道中で彼や地元の人と話したことがとても印象的で、新しい映画のアイデアまで生まれた。旅は、人は、素晴らしい。
今回は、間もなくリリースされる新しいファームウェアを一足先に入れてもらったJVCのLS300を持って来たのだが、前回のアップデート同様、今回も無料で本体のSDカードに4K、150Mbps、4:2:2で収録できるようになるなど、なんとも太っ腹なサービスに驚かされる。他のメーカーならMark2とか言って、新機種になってもおかしくないような進化を無料で提供するというJVCの姿勢にも感動するが、改めてLS300というカメラの潜在能力の高さに驚きを隠せない。
ここまで高いスペックのテストとなれば、レンズも高性能でカッチリしたものを使うのが筋なんだろうが、私は敢えていつものクラシックレンズを付け、つまり自分のスタイルに何をもたらしてくれるのかを検証してみることにした。
カメラの機能テストと自分の活動に対してのテストとは根本的に違うもので、ここでも自分の美意識を主軸にしてそのためのツールとして扱わなければ意味がない。次々にリリースされるセンサーやカメラ本体はもとより、4K、4:2:2、HDR、Log、10bit等、進化が止まらない高画質というもの。もちろん画質は「良い」に越したことはないのだが、自分の撮影スタイルや作品の再生環境に対してどう作用するものなのか、何がどう「良い」のかを見極めなくては無駄にデータが大きく重くなるだけで、無用の長物になってしまうこともあり得るのだ。
それはカメラを買う時の品定めでもそうだし、このLS300のように、外部レコーダーを含めると、実に多様なフォーマットの選択肢の中から作品に応じてどのフォーマットで記録するかという選択にも関わってくる。
今回はその中で、本体のSDカードに4K、4:2:2を、しかもデュアルで録画できるというものに集中していろいろ撮ってみたが、もしこれに決定的な魅力を感じたら、いよいよ編集用のコンピュータやグラフィックボード、モニターまでをも買い替えなくてはいけないという覚悟のテストになった。実のところ、4Kには正直に言ってあまり魅力も必要性も感じていない。今回の出品作品もそうなのだが、HDの自分の作品を大きなスクリーンで見ても粗いと感じたことは一度もないし、観客からも美しい画だと言われたことはあってもその逆はないからだ。
ただ、理論的には色調にもエッジにもスムーズに効く4:2:2というのはとても魅力的だった。4Kが鮮明な分、ハードな印象になりがちな画を自然にしてくれるのではないかという勝手な想像もあったからだ。
結論を言うと、あくまでHDの大型モニターでの見え方だが、水面や細かい波の部分はほんの少し艶やかに、立体的になる印象だ。エッジはやはりスムーズに見える。また、極端なエフェクトをかけた時の破綻してしまうポイントも若干違うように思える。しかし、それもそのつもりで見ないと分からないレベルだ。
さて、この差を必要とするかしないかは悩ましいところだが、全体の空気感にも関わることなので、積極的に使っていきたいと思う。少なくともHDでも4Kでもどちらかを選べるLS300では迷わず4:2:2を選ぶだろう。手が届く範囲での高画質の中で自分の美意識にそぐうものを見極めて選択していくのもロンサムビデオの流儀だ。
▲新ファームウェアで本体のSDカードに4K / 4:2:2で収録できるようになるJVC LS300。色調やエッジが滑らかになり、艶が増す印象だが、小さな印刷ではその差は分からないので、比較画像は載せない。さて、どの程度の再生環境でその差が発揮されるか、それによって導入すべき人とそうでない人に意見が分かれるところだろう。自分に適した選択をしてほしい。
▲ビデオサロン2017年6月号連載「LONESOME VIDEOの流儀」(ふるいちやすしさん)の関連動画です。JVCのLS300のファームアップで4K/60p HDMI出力が可能になるだけでなく、内部では4K/30p 4:2:2記録が可能になる。今回は後者のほうを検証すべく、映画祭でやってきた沖縄でカメラを回して見ました。YouTubeにアップした段階で、4:2:0と4:2:2の違いはわからなくなってしまうかもしれませんが。記述のない後半は4:2:2記録の映像です。