Report◉井上卓郎
協力◉日本サムスン株式会社

 

NAB Show 2018で発表されたBlackmagic Pocket Cinema Camera 4K(以下ポケシネ4K)。発表直前に流れてきたリーク情報にExternal RAW recording(外部RAW収録)の文字があった。やっぱり4K RAWの内部収録は無理だったかと少しガッカリした。しかしカンファレンスで発表された外部収録機能は私のガッカリとは正反対の素晴らしいものであった。CFast2.0やSDカードを使ったRAW内部収録はもちろん、容量が必要とされる収録にはUSB-Cケーブルで接続したSSDに収録が可能で、別途外部レコーダーは不要。そしてブラックマジックデザイン社のCEOグラント·ペティ氏の手に握られていたのはSamsungポータブルSSD T5であった。

▲T5は驚くほどコンパクトで軽量だ。また衝撃にも強いので私のようなアウトドアのカメラマンでも安心だ。

▲撮影の際そのままぶら下げておくのはコネクターに負担がかかる。簡易的なホルダーやリグと組み合わせての使用をおすすめする。USB-CケーブルはT5同梱のものを使用すること。

 

容量·転送速度·コストと三拍子がそろう

RAW映像のデータ容量が大きいのは言うまでもないが、SSDはメモリーカードに比べて大容量、低価格であり、データサイズもお財布も気にせず撮影できるのがとてもうれしい。またUSB3.1 Gen2を備えたT5は最大540MB/sの転送速度をいかして高画質なRAWデータを収録できる。

T5が活躍するシーンは、カット数が多かったり収録時間が長いイベントやインタビューなどといった場面だ。大容量なおかげで収録時間を気にせずに撮影できるからだ。また撮影後、転送速度の速いT5をPCにそのままつないで編集をすれば撮影現場での編集作業が可能だ。イベントやウェディングを撮ってその日のうちに納品という1分でも惜しい状況ではデータのコピーをせずにそのまま快適に編集できるので大きく時間を短縮できる。

メディア別記録時間

▲カメラはポケシネ4K。4K DCI 29.97fps時で表示された記録時間。

データ転送速度(単位MB/s)

▲Blackmagic Disk Speed Testによるベンチマークテスト。

 

 

BRAWが実装されたらどうなる?

ここで気になるのは先日ブラックマジックデザインが発表した圧縮RAW形式のBlackmagic RAW(以下BRAW)ではないだろうか? ポケシネ4Kにも後日対応予定のこのフォーマットはCinema DNGの不便さを解消し、データサイズが小さくて、高画質、そしてPCの負荷が小さく編集が軽い、という夢のようなフォーマットだ。

ではこの形式を使えばSSDは不要になってしまうのではないか? ということである。しかしそんなことはない。

BRAWはファイルサイズが小さく1つのプロジェクトのデータは1枚のT5に収められるので収録後、PCに直接接続して編集が可能だ。Cinema DNGなどのRAWでは必須の高価なRAIDを組む必要がなくなるというわけだ。原稿執筆時点ではまだポケシネ4KにはBRAWが実装されていないので、URSA Mini Proで撮影したBRAW素材をT5に入れてMacBook Proで編集してみたが、とても軽快であった。

RAW動画にチャレンジするには新たに大きな投資が必要かと思われたが、T5とポケシネ4Kによって、低予算かつコンパクトなシステムでRAW映像から制作する環境が整ったのだ。

 

▲SSDはEXTERNAL DRIVEとして扱われる。2台のSSDを同時に接続することはできない。

 

 

▲T5のメリットは長時間収録だけでなくワークフローのスピードを上げることも。T5を直にPCにつないでRAW 3:1で撮影した素材を編集してみたが非常に快適だった。

 

 

SamsungポータブルSSD T5を
ポケシネ4Kに載せるためのリグを紹介

【簡易バージョン】
スマホホルダーを利用して固定する

▲スマホホルダーを利用してT5を固定。スマホホルダーにはネジ穴があるので、オスオスの変換アダプターを介することで、ポケシネ4Kのカメラ上のネジに装着できる。これが一番シンプルな固定方法だろう。

 

【リグバージョン】
8Sinnのポケシネ4K用ケージには、
T5を固定するためのパーツが用意されている

▲カメラ専用のケージを数多く揃えている8Sinnにはポケシネ4K用のケージ「8Sinn BM Pocket Cinema Camera 4K Cage」があるが、T5専用ホルダー「8Sinn SSD Holder for Samsung T5 on Cold Shoe Mount」をオプションとして用意している。ケーブルホルダー(小さな金具)も付属し、端子部に負荷がかからないようになっている。