ネット時代の動画活用講座 2-5 ─ 撮影講座 店舗・施設の効果的な撮り方


基礎講座撮影講座制作講座

◎この記事は、書籍『ネット時代の動画活用講座』(玄光社、2015年刊)からの転載です。

ネット時代の動画活用講座 2-5 ─ 撮影講座

店舗・施設の効果的な撮り方

「モノ」だけでなく、店舗や施設なども「動画で紹介したい」というニーズがひじょうに多いジャンルだ。プロのカメラマンやレポーターによるテレビ番組のようなコンテンツは見栄えが良いが、動画を見た人に必要な情報を届けて足を運んでもらうという基本にしっかりフォーカスすれば、一般の人でも有益なツールとなる動画を作成可能だ。

店舗や施設の撮影は、華麗なカメラテクニックよりも、粘り強く、かつポイントを押さえて多くの素材を収録していったほうがより良い結果に仕上がりやすい。特に外観の撮影などは、天候なども含めた「タイミング」が重要なので、状況にかかわらず特定の日にプロが撮影を決行するよりも、いつもその場所で働いている人が絶好のタイミングで撮影したほうがより魅力を引き出せる場合が少なくない。

従って場所の紹介ビデオは、なるべくスケジュールに余裕を持って素材を蓄積していくスタンスで臨むのがよい。

現地までの道筋も映像に

店舗や施設は、動画を観た人が最終的に足を運んでくれるのが一番の目標。場所がわかりにくい場合は、現地までの道筋も動画にすると大変役立つ情報となる。

▲【左】車の場合には、道筋を忠実になぞるより、曲がる交差点などの拠点をバランスよく収録したほうがわかりやすい。【右】駅から徒歩で行けるような場所は、現地までの道筋を一通り連続で撮影し、ノーカットの早回しで見せるような手法も効果的だ。

▲地図は、座標が移動するアニメーション等が作れればわかりやすいが、難しい場合は無理に動画中に入れる必要はない。特にWebの場合は、地図サイトへのリンクや、住所を「テキスト」で載せた方がスマホ上で「情報」として使えるので、動画上だけに載っているよりも意義が大きい。 

外観撮影のコツ

店舗や施設の撮影で欠かせないのが外観の撮影。野外は天候や交通状況などの影響を受けやすいので、撮影のタイミングが大きな課題となる。

▲【左】店舗をほぼ画面いっぱいに撮影。無難に撮れているが、いまひとつ凡庸な印象となる。こうしたアングルの場合は、出入りする人などがいると動画ならではの面白みが出てくる。【右】周囲の光景も含めて広角で撮影。大きく被らない程度に車や通行人がいるのはむしろ躍動感が出てプラスに作用する場合も多い。また、周囲の状況もわかることで訪れた人が建物を発見しやすくなる。

店舗や施設での撮影アイデア①

店舗・施設での撮り方は千差万別だが、「情報量」つまり人物やモノ、そして動作の多さを基準にすると、最適な撮り方を決めやすい。

●外の通行人もアクセントになる

▲外の状況は、窓越しで室内の撮影にも影響を与える。例えば窓辺のインテリアや商品といった静物の撮影は、むしろ外の通行人や車の動きが映り込むことでアクセント的な効果を生むこともできる。

●看板などの小物を利用する

▲【看板】看板はまさに店舗の「顔」なので、かならず「単体」でおさえておきたい。看板を動画のオープニングのテロップ代わりに使うのも演出として面白い。

▲【告知情報】メニューや価格表などは、細かいテロップ挿入の手間をかけずに多くの情報を伝えられる絶好の材料。三脚で固定、または静止画でも良いので、小さい画面でも文字が読めることを意識した大きさで撮影しておこう。

●ゴチャゴチャした場所でどう撮るか?

▲細かなモノや人が多い場所は、あまりアングルが動くと画面が大変見にくくなってしまう。カメラを完全に固定し人自体の動きなどがはっきり分かるようにしたほうが見やすさと面白さを両立できる。ピントもマニュアルで一カ所に定めておくのがベターだ。

 

●カメラの側でゆるやかな動きを作る

▲整然として商品だけが並んでいるようなスペースは、カメラの側でゆるやかな動きを作ると飽きのこない映像となる。ズームなどを使うほか、右の写真のように三脚の足2本を支点にしてゆっくりと前に出すような動きをすると、ドリー等を使ったような効果を簡単に作ることができる。

店舗や施設での撮影アイデア②

店舗や施設内の撮影はどうしても単調で退屈なものになりがちだが、アンルグや目線を変えたり、人物をいれるだけで動画としてのインパクトが違ってくる。

●人間の目線と違うアングルでアクセントをつける

〈ローアングル〉▲人間の目線より大幅に低い(または高い)アングルを織り交ぜると、よりインパクトのある映像になる。一つ一つのカットはアングルが固定でも、数多く撮影して短時間ずつつなぐだけで躍動感のある映像に仕上げることができる。

〈ノーマル目線〉

〈棚越し目線〉

▲同じ場所を直接撮影した映像と、棚に並ぶ完成作品越しで撮影したものを対比させた例。同じ場所でも、メインとなる対象を切り替えるだけでもよりバラエティ豊かに演出することが可能だ。

●「人」を入れて「共感」を呼び起こす

▲無人の室内の映像などは、殺風景である上に、見ている人に「自分がそこにいる状況」を想像させにくい。場所自体をきれいに撮るだけでなく、そこにいる「人」を入れ込むと、その場に「行ってみたい」という欲求をより喚起しやすい。たとえば不動産物件の紹介などでも、部屋だけを映すのではなく、人を入れて生活しているイメージを出すだけでずっと印象深い映像になる。

様々な機器を応用した撮影

普通のビデオカメラや一眼以外に、個性的な機器で撮影された素材も交えるとより一層バラエティ豊かな仕上がりとなる。

●GoPro HEROを使った例

▲人気のアクションカメラ「GoPro」は超広角のレンズを装備しているので、三脚等に固定して場所の撮影を行うのにも活用できる。4K解像度の撮影を行えるモデルもあり、その素材を編集で切り出すことにより、視点を移動させていくような動画も作成可能だ。

●キングジムMR360を使用した例

▲キングジムの「MR360」は、4つのカメラを搭載して360度の撮影が行える新しいコンセプトのカメラ兼レコーダー。撮影される映像は640×480ピクセル内で4分割と多少粗めだが、イベント開催時の雰囲気などを撮影するとかなり面白い素材が得られる。パソコンにUSB接続するとWebカメラとしても使用できるので、Ustreamなどの配信に使用するのも有効だ。

動画に位置情報を付加する

完成した動画をYouTubeにアップロードする際は、撮影場所の「位置情報」を付加しておくと、Google Map上にその場所で撮られた動画として表示が可能となる。

●YouTube上で設定

▲YouTubeの設定画面で「詳細設定」のタブをクリックし、「動画の撮影場所」の欄に撮影場所の住所を入力すると、動画に撮影場所の位置情報が付加される。



●Google Map上に表示される

▲Google Mapでオプションメニューから「動画」にチェックを入れておくと、地図上にその場所で撮影されたYouTube動画を表示することができる。Google標準の地図に加え、この情報を利用したスマホ用アプリなどもあるので、少しでも多く再生の機会を得るためにぜひ位置情報を登録しておこう。

 

 

【Q & A】
地元の魅力をPRするビデオを作りたいと思っています。
多くの人に関心を持ってもらうには
どんなふうに作れば良いでしょうか?

観光に限らずPRビデオで陥りがちな失敗は、「自分が”見せたいモノ”をプッシュしてしまう」ということです。自分たちが見せたいものと、お客が見たいものは必ずしも一致しません。たとえば旅行先で「整備された観光スポット」より、何気ない田園風景に心を動かされたというような経験はないでしょうか? 「顧客目線での魅力」にフォーカスできていると、よりPR効果を確かなものとすることができます。

ひとつオススメのスタイルとしては、自分なりに感動したポイントを外部の人に語ってもらう「お客様の声」型のビデオが挙げられます。第三者が語っていればより説得力も上がりますし、住民では気付かなかったような魅力の再発見にもつながります。一人一言ずつくらいでも構わないので、たとえば「インタビューに応えたら名産品プレゼント!」のようなイベントを行うのも面白いでしょう。

PRのポイントが定まったら、各々の背景にある「ストーリー」を描くと、より深みを出すことができます。歴史あるスポットや名産品を紹介する場合も、発祥など昔の事柄だけでなく「今現在、どれだけの想いと労力でそれを維持しているのか」を映像(作業の様子やインタビュー等)で示すと効果的です。

また、風景には「人」を映し込むと、より視聴者の共感に訴求が可能です。たとえば、老人や赤ちゃん連れなどが映っていると「誰でも安全・安心に散策できる環境が整っている」ことを、言葉を使わずにアピールすることができます。テレビ番組のようなリポートは相当な技術がないと不可能ですが、年齢、性別、体格などの属性を活かして「アイコン」となれば、言葉を一言も発することなく「誰でも名リポーター」になれるのです。

●「お客様の声」を採り入れよう

▲実際の観光客など外部の人の感想は説得力を持ちやすい。地元の人では気付かないような魅力の再発見にもつながる。なお、撮影時はビデオが広く公開される旨をかならず伝えること。

●名物の裏にあるストーリーに注目

▲名産品や名所などは、発祥などの情報と同時に、今それを支えている人々の姿を「ストーリー」として盛り込むことでより魅力的になる。

●画面にどんな人を映し込むかによって印象が変わってくる

 ▲風景に映り込む人物は、その場所の特徴を表現するために有効な「アイコン」となる。そこから語られるものは言葉以上に大きい。

1テーマ1本の短い動画をネットと店頭の両方で活用

ビデオは長い1本にまとめるのではなく、1テーマ1本として数分ごとの「ユニット」として作成しましょう。

まずネットでは、本数が増えることでより発見される可能性も増えますし、再生時間の長すぎることによる敬遠も避けることができます。

Webサイトに埋め込む場合も「町全体のPRビデオです!」という位置づけで一つだけ置くのではなく、個々の名物、スポット、イベントなどの文に添えて画像のように分散させることで、テキストと映像の相乗効果を得ることができます。

同じ手法はウェブ上ではなく、「リアルの場」でも使えます。例えば土産物屋では、名産品全般ではなく、個々の商品のビデオを小型のテレビやタブレットなどを利用して、現物の横に置いて流すのも良いでしょう。現在は「機種変更して使っていない古いスマホ」など、身近にけっこう動画の再生装置があまっているケースも多いものです。POP的な動画の使い方はよりやりやすくなっていると言えるでしょう。

そうやって細かくユニット化されたビデオから、組み合わせによってPRしたい要素に最適化したロングバージョンを作成可能です。

たとえば観光客の誘致と言っても「リタイアした老夫婦向け」と「修学旅行向け」ではまったく異なります。用途や時期に合わせて展開できると同時に、内容のアップデートもすぐに行えます。

現在はスマートフォンを使って四六時中そこかしこで動画が撮られていますので、住民から映像を募る窓口を設けておき、積極的に素材として提供してもらい、それを活用するのも良いでしょう(もちろん動画だけでなく、写真も素材として役立ちます)。

ビデオは「作っただけ」ではあまり有効に活用することができません。外部からの視点を大事にしつつ、素材の収集から発信までを常に意識して継続していくと、外部へのPRと地元の活性化を兼ねた最良の効果を得ることができるでしょう。

●地元住民から映像・写真素材を集める

▲行事や季節の風景などは、個々の画質よりも多彩な視点の素材が多くあったほうが魅力を伝えやすい。スマホ撮影などでも構わないので、地元で広く募るとそれ自体も「イベント」として地域を盛り上げるのに効果的だ。

●動画は分割し、テキストは別に見せる▲1動画1テーマで細分化されていると、文章に対応させながら、動画を画像のようにWebサイトに埋め込められるので、ユーザーの利便性も向上する。

 

【コラム】
インタビューの声をクリアに録るには?

カメラの大幅な進化によって動画の画質は著しい向上を遂げたが、それと必ずしも比例していないのが「音声」の部分。特にデジタル一眼カメラやウェアラブルカメラなどは、マイク周りに最低限の機能しかなく、外部入力がない場合も多いので、本体だけではどうしようもないことが多い。

そんな時に役立つのが、小型軽量かつ高性能なマイクを内蔵したPCMレコーダーだ。映像と音声が別々のファイルにはなるが、26ページで紹介しているPluralEyesのようなツールを使えば比較的簡単に合わせることもできる。

また、まったく個別に動作することになるので、「保険」にもなる。カメラに外部マイクを接続した場合、万一そのマイクが故障した場合など音声が全滅してしまうが、レコーダーが別個に動いていれば最悪の事態は避けることができるからだ。映像よりもむしろ「話の内容」が重要なインタビューや講演などの記録には大きな安心材料となる。

声をクリアに録音するコツだが、これは機材の価格や性能を問わず「いかに声の発生源にマイクを近づけるか」にかかっている。話者に目立たない形でマイクを装備するのにはワイヤレスピンマイクが用いられることも多いが、専門家以外には運用の面倒さや価格の高さがネックになる。

そんな場合は、小型のPCMレコーダーを活かして「直接近づいて」録音しよう。テレビや映画の撮影で、マイクの付いていない出演者の声を録音するために、長い竿の先にマイクを付けて録音しているのをご覧になったことがあると思う。PCMレコーダーには大抵三脚のネジ穴があるので、一脚などに取り付けて話者の頭の上にかざすと、あれとほぼ同じことが行える。

画面中に人物が大きく写っている場合は意外なほど近くによってもレコーダーがカメラに映り込むことはなく、カメラ内蔵のマイクよりはるかに発声源の近くでクリアに集音できる。

「音のクリアさ」は、動画の仕上がりに差をつけるひじょうに大きなポイントだ。

▲小型のPCMレコーダーを一脚などに取り付けて、話者に近づける。カメラ側でも音声を録音しているので、音声のバックアップにもなる。レコーダーはもちろん画面に写り込まないように気をつけながら差し入れる。マイクを音源に近づけるというのが、声をクリアに録るための最大のポイントだ。

 

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