【斎賀教授のアフターファイブ】4Kで撮れるファーストキス キヤノン EOS Kiss M (動画付き)


4Kで撮れるファーストキス
キヤノン EOS Kiss M

Report◎斎賀和彦

EOS Kissと言えば単機種でいちばん売れている一眼レフシリーズ。ビデオSALON読者だと初心者向き過ぎて興味がない方も多いかもしれませんが、キヤノンのスタンダードを考える上で非常に重要な存在です。

そして、そのイオス キスの名がミラーレスカメラに付いたこと、4K動画撮影機能を搭載したこと、は大きな意味を持つはずです。今日は動画撮影を中心に話題のEOS Kiss Mを見てみましょう。

▲(上)左からGX7Ⅲ、Kiss M、EOS 5D3。(下)左からGX7Ⅲ、Kiss M、EOS-1D X Mark Ⅱ。マイクロフォーサーズ、APS-C、フルサイズセンサーとセンサーサイズの小さい順に並べたが、EOS Kiss MはAPS-Cセンサーにもかかわらず非常にコンパクト。

EOS Kissはキヤノン一眼レフの入門機の位置づけで、かつネーミングからもイメージできるようにファミリーユースがメインポジション。だから機能はシンプルでできることは少ない・・・のは確かですが、だから低性能、ではないのがキヤノンの強いところ。

ファミリーユースだとお母さんが子供を撮る、といったシチュエーションがまずイメージされますが、それには子供の動きについていく「速いAF」と後処理なしに満足できる「綺麗な基本画質」そして操作が簡単な「オートで上手く撮れる」ことが必要。これって実は非常に高度なことなのです。

Kiss Mもそのコンセプトは踏襲。ボタン類はEOS M5,M6の先行機種より少なく、シンプルに見せながら上位機同様のデュアルピクセルCMOS AFを搭載、高速・高精度なAFを実現しています。そしてちょっと驚いたのが画像処理エンジンはEOSでもっとも新しいDIGIC 8を積み、Wi-Fi、Bluetoothでスマホと常時接続するなど、上位機「以上の」機能を搭載していること。特に4K動画はEOS M初であるだけでなく、一眼レフでも二桁EOS(80D)では未搭載。

それをあえてキスに積むということは、キヤノンの考える動画のスタンダードはこれから4Kだという宣言に等しいと思います。

実際に使ってみるとスチル、ムービーともオートで軽快に撮影できるのが実に気持ちいい。このオート時の露出、色味の出し方がキヤノンのカメラは絶妙で、特に人物はやや赤みに寄った「記憶色」のバランスがとても良いと思います。一方で露出補正が+/-ボタンを押してからダイヤルを回すという2ステップが必要なのは不便な部分。ただEOS Kissシリーズはずっとそうなので、これは慣れないユーザーが気づかずに露出をずらしてしまわないようにというメーカーの考え方なのでしょう。露出補正を多用するユーザー(ワタシだ)は注意が必要です。

▲同じく4K動画を撮れるLUMIX DC-GX7MK3(実売で2万円高価)、OM-D E-M1 Mark II(12万高価)、EOS-1D X Mark II(55万高価)と並べてみました。写真左上: 1DXII、右上:GX7III、左下OMDEM1-II、右下Kiss M。EOS Kiss Mの先鋭感に注目。どの機種も4Kおよび手ぶれ補正のオンオフで画角が変わる(クロップされる)のは同様ですがKiss Mのクロップ率は大きめ。望遠好きには◎で、広角好きには悩ましいところ。またこの中ではKiss Mだけ4K/24p上限なので被写体によってはパラパラ感が出るのが残念。動画時の手ぶれ補正はOMDの5軸がもっとも自然で効果的でした。

レンズ、ボディ双方のISを併用する手ぶれ補正効果によってか動画での精細感も高く、特に4K動画は上位機に負けないもの。加えてカメラ内で動画から静止画の切り出しが出来るなど(FHD時は不可)動画が当たり前になった時代のスチルカメラの機能について、様々な提案が感じられます。

▲シーンインテリジェントモードでのオート4K撮影動画からの切りだし。金属、人肌、それぞれの質感の出し方が非常に巧み。メリハリの利いたそれでいてディティールを飛ばさないクルマのボディ描写と、パーティ会場の人物はホワイトバランスを過剰補正せずに赤みを残した雰囲気重視の描写。

ただし、EOSのAFを大きくレベルアップしたとされるデュアルピクセルCMOS AFは静止画とFHD動画時のみ。4K撮影時はコントラストAFになります。

較べて見るとAFレスポンスや精度がやはり違います。技術的な制約等があるのかもしれませんが、4K動画は解像度が高い分、フォーカスの精度が画質に大きく影響する部分、基本画質の良さを十分に活かす意味でも4KのデュアルピクセルCMOS AF化に期待したい。

ハイエンド機を使ったときのような昂揚感はないけれど、過不足無く普通に「良い画」が撮れる。それも手のひらに乗るコンパクトで(比較的)安価なカメラで。それが個人的なEOS Kiss Mの印象。例えるなら幕の内弁当的な。個々の品は専門店に負けるけれど、さまざまな品(機能)が満載で、どれも十分に美味しい。

それはiPhoneなどの高機能スマホが席捲しているカメラ像だけど、Kiss Mはその手軽な万能カメラ機能を、高速高精度なAF、手ぶれ補正、暗所で特に差が出る画質、さらに豊富な交換レンズで「カメラの意地」を見せたコンパクト一眼に思うのです。

▲iPhone 7 Plusの面積の中に収まる一眼ミラーレスと考えると面白い。
▲マウントアダプター EF-EOS Mを使うとEOS用ほぼ全てのEFレンズが装着でき、AF、絞り、手ブレ補正等、全機能がそのまま使える。Kiss Mのコンパクトさとは矛盾するけれど、これもまた楽しい。