今号から、連載タイトルを「鉄道ムービーの愉しみ」に変更しました。
路線は変わりません。
引き続き、ご愛顧よろしくお願いいたします。


冬の撮影のポイント


モノトーンの印象が強い冬の風景ですが、撮影をしてみると雪の中で車両の色が浮き立ったり、雪が空を受けて多様な色に染まったりと色彩豊かな映像になるのが分かります。
 同じ雪の表情でも新雪のふわっとした状態から締まった感じの雪まで、いろいろと違いがあります。いったん解けて凍った雪はキラキラと輝き奥行きを見せてくれます。
 雪を巻き上げて走る列車の姿は他の季節に増して迫力の映像になります。
【雪晴れ】
 夜の間に雪が降り積もり、晴れ渡った朝、雪晴れの風景に出会うことがあります。それほど多く出会うことはないのですが、いつも待ち望んでいる風景です。日が差すにつれ、どんどん雪が締まってくるので、可能な限り早い時間帯に撮影をすることが大切です。
 露出は列車が黒くつぶれないように、明るい雪面のディテールが残り、青空も青く出る程度のプラス補正が必要です。

▲花輪線
【吹雪】
 冬の東北や北海道では荒れた天気に出会うことがあります。10メートル先も見えないような雪が吹きつけたかと思うとすっと雪が止み、今度は猛烈な地吹雪、時には青空が見えたり、こんな時の天気はめまぐるしく変わります。地吹雪の中にヘッドライトが光り、次第に見えてくる車両、そして雪煙を上げて通過する。映像ならではシーンに出会うことができます。
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▲特急あけぼの 奥羽本線
【雪化粧】
 雪が止んだ後、低温のままで風がないときに、森の木々が着雪で雪化粧する風景になります。着雪はその重みで電線を切ったり、木の枝を折ったり、鉄道にとっては決してありがたい現象ではないのですが、時に美しい風景を見せてくれます。
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▲磐越西線
【冬の海】
 冬の海も表情豊かです。微かにでも空に青さがあれば、その色を受けて海も青色が冴えます。完全な曇りでは鉛色になり、波が岩に打ちつければ白く泡立ちます。その日の天候や風の状態でまったく違った姿を見せてくれます。波や雲の動きと列車の動き・・・これもムービーならではの表現をすることができるシーンです。
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▲五能線
【冬の山】
 雪が降らない場所でも冬らしい風景は待っています。特に名山をバックにした風景では、空気が澄み、山が雪化粧することで、一段と雄大に見ることができます。
撮影を計画するときに気をつけるのは撮影ポイントと山の位置関係で、順光で山の輝きを見せるか、逆光でシルエットにして山の稜線を強調するかなどです。また朝夕山の凹凸に影ができる時間帯に撮影できる場所では、山が立体的に見えてきて奥行き感のある映像にすることができます。
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▲特急はくたか 北陸本線

今月のおすすめ路線 飯田線



 飯田線は愛知県の豊橋駅から静岡県を通り、長野県の辰野を結ぶ195.7kmの路線です。駅の数は94駅と駅間は短く、全線を乗るのに約6時間かかるという他にはないローカル線です。
 その長野県のエリアでは南アルプスと中央アルプスに挟まれた伊那谷を走ります。線路のある谷間には雪が降ることは少ないですが、アルプスの山々は雪をかぶり、白く輝いて見えます。作例の場所は田切~伊那福岡間にある大カーブです。朝方順光で中央アルプスの山々が美しく見えます。このカーブのすぐ右側にある鉄橋も山バックの撮影地として知られています。
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【筆者プロフィール】佐々倉 実
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鉄道映像作家。小学生の頃から鉄道写真を始め、大学生の頃、当時鉄道員をしていた今井洋氏と出会って以来、製作活動をともにする。現在は、佐々倉氏が撮影、今井氏が編集を担当し、雑誌やDVDパッケージを中心に鉄道ビデオを製作している。DVDに『魅惑の蒸気機関車 四季SL紀行』、『日本の鉄道 新幹線・特急編/蒸気機関車ローカル線編』などがある。2010年7月に『感動の美景鉄道』(MAXAM)が発売された。
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