動画制作会社で経験を積んでビデオグラファーとして独立
もともと映像の仕事で地元に貢献できたらベストだと思っていました
取材・文/編集部 一柳
宮下遥明 さん https://rockfilm.jp/
宮下さんの作品より
『埼玉県立秩父高等学校PR映像』
秩父高校の1日を3人の生徒の正面からのインタビューを軸に時間を追いながらBロールを入れて紹介していく。
『S.Factory 施工事例紹介映像』
4:3アスペクトでスライダーによるゆっくりした移動ショットがメインのイメージ映像で、ヴィンテージカフェスタイルを表現。
『秩父木材協同組合木材利用のすすめ』
秩父と言えば林業もさかん。木材利用を勧めるムービーはシネスコで。インタビューがベースの作品。
『秩父天然自家源泉「星音の湯(せいねのゆ)」 シネアド』
秩父にある映画館ユナイテッド・シネマ ウニクス秩父で放映される15秒のCM(シネアド)も制作した。
動画制作会社から独立
「高校生くらいのときから美術とか音楽が好きで、 それなりに他の人と比べてちょっと秀でているかなということはあって、それがトータルでできるのは映像制作だとなんとなく思っていたんです」という、秩父で生まれ育った宮下さん。ところが、大学に入って専攻したのは数学だった。なにか違うなと思っているうちに大学に通わなくなり、将来を考えて大学を中退。映像の専門学校に入り直す。
卒業して就職したのが、動画制作会社のモバーシャル株式会社だった。正社員としてクリエイターを抱えて動画制作をしてる会社で、6年間、撮影、ディレクターを経験し、 CMや採用映像、 PVなど500本以上の映像制作に携わった。そこで経験したことが、現在フリーランスのビデオグラファーとして活動できる礎になっている。
仕事によっては音声や照明も社内で担当するし、さらに規模によっては録音や照明スタッフにも依頼するので、 クライアントだけでなく、 外部スタッフとの繋がりもできたという。
コロナ禍になった2020年の11月に会社を辞めて独立。その年に結婚するタイミングで秩父に戻ってきた。
「もともと映像の仕事で地元に貢献できたらベストだなと考えていました。最初は現実的ではないと思っていたのですが、コロナになったこともあり、自分の実力もついてきたかなということで決意しました。ただいきなり引っ越すのは怖かったので、モバーシャルとも業務委託で仕事をしつつ、 横瀬町の地域おこし協力隊という制度も利用させていただきました」
秩父は絶妙な立地?
数年経ってこちらでのビデオグラファーの仕事も軌道に乗ってきた。地域おこし協力隊も3年満期になる半年前に卒業。地元のWEB制作会社やデザイン会社との繋がりも生まれて、映像制作を依頼されるようになってきた。もっとも、秩父に限定してしまうと仕事も少ないので、埼玉県全域の仕事を受けられるようになりつつあるという。秩父は東京に毎日通勤するにはさすがに遠く、日常の生活圏にも入らないものの、単発の撮影であれば首都圏の仕事も受けやすいという絶妙な位置にあるのだろうか。
ちなみに宮下さんはお子さんも生まれて、秩父に家を建てようという計画もあるとのこと。大都市の周縁というのはビデオグラファーの居住地として向いているかもしれない。
今後はクライアントワークだけではなく、秩父を拠点にドキュメンタリー作品にも挑戦していきたいと思っている。
「自分はプライベートでは映像を作らないので、作品制作によって自分も地域の人たちもアピールしていきたいですね」
撮影はビデオグラファースタイル。基本的にひとりで音声、照明も対応できるが、アシスタントを使うことも。以前の会社の繋がりでスタッフワークすることも可能。憧れているのはこの連載第1回目に登場した伊納達也さんとのこと。
撮影機材
インタビュー時のマイクと照明のセッティング。地方ではこういう撮影に慣れていない人がほとんどで、いきなりこれだけの機材を持ち込まれると驚かれる。事前にこの写真を見せておくのだそうだ。取材される側の心の準備だけでなく、スペースがどれくらい必要かも具体的で参考になりそうだ。持ち運びはキャンプ用の折り畳みキャリーカートが便利に使えるとのこと。
主な機材リスト
●VIDEO SALON 2023年7月号より転載