SNSで盛り上がりを見せるショート動画。本格制作には高価な機材やアプリが必要と思われがちだが、今やスマートフォンと無料アプリで簡単に作れてしまう。そんなスマートフォンを活用したショート動画の最新攻略術に迫る。

講師   マーク

ビデオグラファー。中学生から動画制作を始め、音楽映像・ドキュメンタリーを中心に制作。大学卒業後、映像制作会社を経て、ビデオグラファーに。2017年から株式会社メルカリ クリエイティブチームに所属し、結婚式企業プロモーション映像、自治体広報動画、音楽フェス映像などを制作。2024年に独立。

Instagram ● @mark_zubora_creator






乗るしかない、ショート動画のビッグウェーブに!

僕は現在、スマホでInstagramを中心にショート動画を投稿していますが、もともとは普通の動画制作から入りました。動画制作を始めたのは中学生のときで、作っていたのは音楽映像やドキュメンタリーなど。そして大学卒業後は好きが高じて映像制作会社に入り、その後、ビデオグラファーとして活動するようになりました。そのころからVIDEO SALONとお付き合いがありまして、2017年12月号にも掲載してもらっていましたね。2017年から2024年までは、メルカリに所属して活動してきました。制作してきたのは、たとえば上場企業の会社説明動画や、WEBのCM、社員を盛り上げるための社内動画などさまざま。直近では、パナソニックのデジタル一眼カメラ「LUMIX G100D」のユースケース動画や、キヤノンのVlogカメラ「PowerShot V10」のチュートリアル動画などを制作しました。

一方、Instagramを始めたのは、実はほんの1年前の2023年2月。それまではInstagramは少し見る程度でした。でも最近、スマホのショート動画の波がとてつもないじゃないですか。全然知らないでは済まされないと思い、育休を取ったタイミングで本格的にショート動画に向き合ってみました。そして、動画の作り方についてのショート動画を投稿していったところ、フォロワーが増えていったのです。

どのような動画を投稿しているのかというと、スマホ用動画編集アプリ「CapCut」の使い方や撮影の方法を紹介したものなど。こうした動画で紹介しているCapCutを使った動画制作術のワークショップも後半で行いますので、ぜひCapCutを操作しながら挑戦してみてください。みなさんがスマホでショート動画をガンガン投稿したくなるように解説していきます!


マークさんがInstagramに投稿しているショート動画

Vlogで使えるカットチェンジ

家族でスカイツリーに行った際に撮影したショート動画。カットが変わるごとに建物や人物がググっと出てきて印象的な仕上がりに。



● 動画を見る




ビフォーアフター3選

見た人に印象を残しやすいビフォーアフター動画。簡単につくれるものをまとめて3本紹介。



● 動画を見る



上着が人に変わっちゃう!?

上着をテーブルに投げたマークさん。投げたのは洋服のはずなのにいつの間にか人になってる!? ちょっとびっくりなトリック動画



● 動画を見る



動画の魅力と大切にしたいポイント

動画を作るべき理由

まず、そもそも「なぜ動画を作るのか?」というところからお話ししていきましょう。動画制作は、本当に大変です。まずクライアントのお話を聞いて、コンテに起こして、許可取りなどをしながらロケハンに出かけて、何とか撮影したあとも編集で四苦八苦して……。このように、やるべき作業がものすごく多くて手間も時間もかかります。しかも正直、お金もそこまで稼げません。費用対効果も怪しいものです。さらに、苦労して作った動画を最後まで見てもらえないこともよくあります。

それでも、僕は仕事として動画を制作してきて、動画にはさまざまな長所があると実感してきました。まず、伝えられる情報量がものすごく多いことです。画像1枚で説明するのもいいですが、動画で背景の情報も含めて説明すれば理解がグッと深まります。映画にしても、あの2時間に主人公の人生のすべてが詰まっているようなものじゃないですか。鑑賞者の人生を変えるぐらいの情報量があるかもしれませんよね。

次に、動画は資産性が高い。これは動画でお金儲けができるという話ではなく、1回作れば、その動画が将来にわたって何度も見てもらえるということです。動画の中で何かについて説明しておけば、動画が勝手に説明してくれるので、もう何度も説明する必要はありません。そういった意味で、動画は資産性が高いと言えるでしょう。

さらに、勝手に話が進む威力がものすごい。再生ボタンを押しさえすれば、勝手に話がどんどん進んでいきます。これが文章だったら、自分でいちいちページをめくって読み進めないといけませんよね。写真の場合も同じです。しかし、動画ならボーっとしながら見ていても勝手に話が進んでいくので、内容を伝えるチャンスがより大きいのです。

動画にはこうした魅力的なメリットがあるので、ぜひみなさんも動画を制作し、そして最後まで見てもらえるように工夫しましょう。


動画制作のデメリットとメリット

・作るのに手間と時間がかかる

・大してお金にならない

・費用対効果が怪しい

・最後まで見てもらいにくい


・伝えられる情報量が多い

・資産性が高い

・勝手に話が進む威力が強



届ける・伝える・関わる

動画を制作してきて大切だと思うのは、「届ける・伝える・関わる」の3点です。まず、作った動画をしっかりと視聴者に見せて「届ける」ことが大切です。そして、ただ動画を見てもらうだけでなく、「こういう美しい景色があるんだ」「このセリフがグッとくるなあ」などと視聴者に感じてもらえるように、高い画質やクオリティで伝えたい内容を的確に「伝える」ことも欠かせません。さらに、動画の作り手と視聴者がコメントやDMなどを通してお互いに「関わる」ことも非常に大切だと感じています。

「高いカメラを使ってかっこいい動画を作ればドカンと集客できるだろう!」と考える人もいると思います。でも、それは「伝える」という部分に注力しているだけであって、視聴者に「届ける」という部分にも注力していなければ、どれだけ綺麗でかっこいい動画であっても見てもらえません。もし少し見てもらえたとしても、心をつかむフックや展開がなければ、3秒でスキップされてしまうでしょう。さらに、動画を見てもらえても視聴者と「関わる」ことがなければ、仕事の幅も広がりません。



動画こそ、むしろスマホで運用すべき

スマホが得意なのは「届ける・関わる」

そんな「届ける・伝える・関わる」の3点のうち、スマホは「届ける・関わる」の2点が得意です。「伝える」という点では、高価なカメラを使った場合に比べると、やはりスマホは及ばないところもあるでしょう。でも、スマホでは魅力的なフック・展開のあるショート動画を作りやすく、視聴者に「届ける」ことが簡単ですし、SNS上で視聴者と気軽にコミュニケーションして「関わる」こともしやすい。だからこそみなさんにも、ぜひスマホでショート動画を作って投稿してもらいたいのです。

まずは、動画をしっかり届けることに注力してください。先ほどもお話ししたように、心をつかむフックや展開がなければ、3秒でスキップされてしまいます。お笑いなんかも同じですよね。最初に心をつかむボケを必ず入れて、お客さんの鑑賞態勢を作ってから、おもしろい展開で飽きさせないように工夫しています。動画によっては、紹介したい内容を詰め込めるだけ詰め込んだりしているものを見かけることもありますが、工夫のない動画は見る側からしても最後まで見たいというモチベーションが保ちづらいものです。しっかりと視聴者に届けるために、フックなどを工夫してスマホでショート動画を作っていきましょう。



スマホなら「届ける・関わる」をクリアできる

— 動画で大切な3つの要素 —



「むしろスマホ」なふたつのポイント

POINT1 — スマホ動画のほうが馴染む

今やYouTubeなどの動画のほとんどがスマホで撮影されている時代です。アイドルや有名人などの動画でも、撮影しているスマホが映り込んでいることがよくあるでしょう。YouTubeどころか、テレビ番組でも普通にスマホで撮影した動画を使っていたりするものです。だからこそ、スマホで撮影した動画のほうが視聴者にとって親近感があり、むしろ馴染んで届きやすいと僕は思います。

POINT2  —  「関わる」こともひとつのデバイスで完結

カメラでは視聴者と直接コミュニケーションを取ることはできません。でも、スマホならそのまま視聴者と関われます。この手軽さ、便利さは大きな魅力だと思います。特にSNSのDMでは、本当にいろいろな人と手軽につながれます。僕自身、DM経由で大きな依頼がどんどん来たり、ものすごい有名人から連絡をもらったりして驚かされてきました。集客やカスタマーサポートの窓口としても使えます。さらに、DMで動画を送れることも魅力。僕の場合、アプリの使い方などについての質問が視聴者からよく来ますが、それに対しても、スマホの操作画面を録画した解説動画で返しています。このように、スマホなら「関わる」こともひとつのデバイスで簡単にでき、手軽に視聴者とのつながりを深められます。だからこそ、スマホでショート動画を作っていきましょう。