ブラックマジックデザインは、北野武監督の最新作『首』のカラーグレーディングに、DaVinci Resolve StudioおよびDaVinci Resolve Advanced Panelが使用されたことを発表した。グレーディングは株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービスのカラリスト、山下哲司氏がDaVinci Resolve Advanced Panelを使用して行なった。

北野 武監督『首』

©️2023 KADOKAWA ©️T.N GON Co.,Ltd

北野 武監督が脚本、監督、編集を務めた『首』は、日本人なら誰もが知っている「本能寺の変」を題材に壮大なスケールで描いた戦国時代劇。圧倒的な暴力描写の中にも、ユーモアが存在する同作は、ビートたけし、西島秀俊、加瀬亮、中村獅童、浅野忠信、大森南朋をはじめとする豪華キャストが出演している。

「この作品のお話をいただいたのが約3年ほど前でした。北野監督の作品は学生の頃から見ていて、この業界に入ったきっかけにもなっているのですごく嬉しかったですね」と話すのは同社カラリストの山下哲司氏。

Slide Industry

北野作品といえば、「キタノブルー」と呼ばれる青いトーンが有名。「北野組の作品のルックをどうするか、というのは他の作品にはない緊張感がありました。『キタノブルー』というキーワードをどう自分の中で受け取るのか。今回は撮影監督も今までの北野組とは違う浜田毅さんなので、全く違うアプローチも考えていました」と山下氏。

撮影前に山下氏がDaVinci Resolveで仮LUTを作成し、そのLUTを使ってテスト撮影をして、さらに同社のスクリーンルームにてその撮影素材を使ってテストグレーディングを行った。撮影が始まってからも、撮影の合間にスクリーンでのラッシュ試写やグレーディングを何度か実施し、ルックのブラッシュアップを行った。また多忙な監督のスケジュールに対応するため、回想シーンなどポイントとなるシーンに対してはオフライン編集用のメディアにもグレーディングを適用し渡したという。

「残念ながらグレーディングには監督は参加することができなかったので、撮影監督の浜田さんと照明の高屋齋さんとルックを作っていきました。撮影のない週には監督がオフライン編集に入って、撮り終えたシーンから繋いでいくので、オフライン用のメディアを見ていただくことがルックのレゼンを兼ねているような気がしていました。」

Slide Industry

「最初はニュートラルなトーンで撮影が行われていましたが、撮影途中で作品全体をブルートーンに変更した経緯があります。ある回想シーンの撮影で、色合いを変えるために撮影部の判断で色温度を下げて青くしたんです。その色をご覧になった北野監督から、全部これでいいんじゃないかという意見が挙がったので、それ以降は色温度を4000Kにして撮影が行われました」と山下氏は説明する。

それまでに撮影した素材は5600Kで撮影されていたので、DaVinci ResolveのRAW設定で色温度を全て変えて監督に確認してもらったところ、ルックの基準としてこの方向でいけるとのことで、そのまま本編で使うことができたという。

山下氏はこう話す。「全体の色をブルーに振るということは、青いフィルターを入れて撮影することに近いです。そのため、色の分離が悪くなったり色がこもってしまったりすることがあります。美術や衣装を含めた作品の狙いを確実に伝えるために、ブルートーンにしつつもフェイストーンや衣装のディテールがきちんと意図したカラーになるように調整してきました。」

「DaVinci Resolveはカラリストなりたての頃から使っています。非常にわかりやすいし、映画のようにカット数の多い作品に対してもスピード感をもって作業を進められるので素晴らしいですね。今回はACESワークフローでグレーディングをしましたが、ACESでの作業も柔軟にできますし、Resolve FXの設定も、映像の質感操作を行う際にカラリストがイメージすることをストレートに実現してくれる機能が揃っており、とても心強く感じています」と山下氏は結んだ。

Slide Industry


カラリストに訊く 映画『首』のルックができるまで

ブラックマジックデザイン
https://www.blackmagicdesign.com/jp