(例)モデルあり都内ハウススタジオで1日完結の撮影

たとえばハウススタジオでモデルありの撮影をした場合、プロプロ、ポスプロを含めて経費だけでこれだけかかる。



経費に利益を忘れずに加える

※1日想定のデッドライン



外注の人件費への思いやり

※先方都合で延長や撮影が遅くなった場合、スタッフの溜飲を下げられる




鈴木さんの現場では必ずケータリングを用意する






編集・MAスタジオに入る場合


ナレーターへの思いやり




気持ちいい現場にするには「食」が重要

現場では食事のことをすごく気にしています。お腹が減るとイライラするし、食事がイマイチだと人は不機嫌になります。こういう現場は茶色い弁当、つまり揚げ物が続きがちなので、極力そうならないように注意します。わたしが実践している食事のルールというのをまとめてみたので、参考にしてみてください。

すべて思いやりなんです。たとえば想定外に待ちの時間になってしまったときは、ウーバーイーツでドーナツを頼んだりします。スタッフにここは気持ちがいい現場だと思ってもらいたい。そういうところを削れば自分の取り分は増えるのですが、現場の雰囲気がよくなることのほうが重要です。

編集やMAでスタジオに入る場合も、スタジオ側のスタッフの分も用意します。そうするとみんな気分がよくなって、いい仕事に繋がりますから。






助手が呼べない時は板レフとCスタンドを持っていく

上の作例で、人物を右側の頬を少し明るくしたいというときに、この位置に板レフに置き、Cスタンドで固定する。屋外の場合は必ずサンドバックでCスタンドが倒れないように固定することを忘れずに!


人物の手前から板レフで顔を起こす。太陽がどんな方向でも、被写体と距離があっても調整できる





ズームレンズを使う

みなさん、気がついてみたら現場に無駄が機材が増えたなと思うことはありませんか。ぜひ断捨離をしましょう。最近わたしはズームレンズを薦めています。もともとズームレンズ派だったのですが、特に最近のズームレンズはとても綺麗です。フルサイズのF4というのは、スーパー35mmではF2.8相当のボケ感になるので、充分です。たとえばソニーのGマスターの単焦点などはとても綺麗で、私も好きなのですが、レンズによって設計思想が違うのでキャラクターが異なります。レンズを変えるとボケ感などがバラバラになってしまいます。ここを合わせようとしたらシネレンズにするしかない。ズームレンズであればそういったことを気遣う必要がなくなります。

なによりもレンズ交換の手間が省けるので、時間短縮にもなります。昨年、一昨年と映画を撮影したのですが、Gマスターのズームレンズですべて撮影しました。それほど大きなボケは必要ないですし、シネレンズを使ってマニュアルフォーカスで送るという行為以外は、もうズームレンズで充分だと感じました。


照明は先達の知恵から学べる

次に照明です。いまでこそLEDライトが普及して、現場にLEDライトを持ち込むことが可能になりましたが、少し前までは、LEDもなく、重くて大きい機材を持ち込むしかありませんでした。それができない場合にどうやって光を柔らかくして、照度を得ていたのか、先達の知恵を知るだけで、できることが増えます。

屋外でどうやってライティングのバランスをとるのか。板レフというのは基本ですが、使い方、置き方によって、映像のクオリティを上げることができます。下の例のように強い光に対して、どうやってバランスを取るのか、板レフの置きどころ、距離を調整することによって、被写体の明部、暗部のバランスをとることができます。

板レフでなくて、白いシーツがあれば、それを地面に置いたり、翳したりして、太陽光を受けてバランスをとることができます。これは先輩の現場で学んだことなのですが、ひとりに持ってもらってもいいし、ふたりいれば角度をつけることもできます。それを知っているだけで安くできるし、装備を軽くできるわけです。シーツがないときには、その場にあったホワイトボードに反射させて急場を凌いだこともあります。これもシーツの例を知っていたからこそできた応用になります。

照明部の現場で昔からやられてきたテクニックも、お金をかけずにできる例です。たとえば病院の夜間窓口の待合室をそれっぽく薄暗くしたいのだけど、天井の蛍光灯の光量を落としきれない時がありました。以下のような方法で、光量を落として対応しました。照明部がスタジオでないロケのときにやっていたテクニックですが、その仕事を見て知っていたので、現場に応用できたのです。



白いシーツをレフ板代わりにしたり、現場のホワイトボードを活用する

白シーツをレフがわりに使う

白いシーツが1枚あるだけでいろいろと使える。日中の屋外では地面に置くだけで、太陽を受けて顔を明るくできるし、室内では、窓を背にした人物も白シーツで太陽を受けることで、顔を起こすことができる。



現場にあるものをシーツ代わりにする

時間が押してしまって、撮影が夜になってしまったが、室内にあったホワイトボードをベランダに出して、そこに2灯のライトを当てることで、ブラインドごしに太陽光が部屋に入ってきているように見せることができた。





黒パーマセルで蛍光灯の光を抑えて、白パーマセルで蛍光灯に見せるテクニック

病院の夜間窓口の待合室というシーン。薄暗い雰囲気を出したかったのに、どうしても蛍光灯と外からの光のバランスをとれずに、求めたバランスにならないときに、久しぶりにやろうかということで、照明部が以前からやっていたテクニックを実践した。黒パーマセルを蛍光灯に貼ることで、光の面積を減らし、光量を落とす。黒が映像に映り込むとバレてしまうので、その外を白パーマセルでカバーすると蛍光灯に見える。







機材を減らしたいがこのモニターは必須!

現場の機材は減らしたいのですが、19インチのモニターATOMOS  SUMO19は現場に優先したい機材です。実は撮影ミスによるリテイクほど効率が悪く、経費がかかってしまうものはないのです。5インチや7インチのモニターでは見逃してしまうものでも、19インチであれば、たとえばマイクが映り込んでいることに気づけたりします。SSDにRECもできるので、すぐにプレビューチェックができます。波形なども表示できるので、Log撮影時の露出計測もしやすいし、LUTを当てることもできます。輝度も充分にあるので、屋外でも視認できますし、このサイズであれば、クランアントチェックまで可能。後からあれこれ言われないためにも、現場でコンセンサスをとってしまうのが一番いいんです。こういったSUMOのようなモニターこそ、本当の時短に繋がる機材だと思っています。


現場でスタッフやクライアントがモニターできる

波形(パレード・波形・ベクターなど)の表示ができるのでLog撮影する際の露出計測に便利。オリジナルのLUTを入れて、それをON/OFFして確認することができる。別売りのバッテリープレートが必要にはなるが、Vマウントバッテリーで運用可能。


19インチという大画面だから、大勢でチェックができる。フォーカスミス・バレものに気づける。


SUMO19ならモニターに装着したSSDにRECできるから、即座にプレビュー、チェックが楽。カメラ操作を介さないでプレビュー可能なので時短に繋がる。



配信の現場ではその場で納品も可能

SDI 接続で4つのカメラをマルチカム収録/プレビューが可能なので1箇所で複数カメラをチェックできる。WEB配信用のトークセッション番組などでも、複数の入力を個別に録画したり、スイッチングした結果を記録することもできるので、現場が終わった段階でスイッチングアウトの収録をそのままアップロード、納品することができる。







スタジオ代の見直しと工夫

実際の香盤(8時〜17時) ※撮影6時間+3時間で見積もり

ハウススタジオにおける1日の撮影の香盤の例。撮影時間だけでなく、機材セッティングやメイクの時間も充分勘案しておく必要がある。




レンタルスタジオ撮影の場合

撮影にかかる時間+3-5Hが基本


レンタルスタジオの場合、撮影にかかる時間のほかに3〜5時間はかかってしまいます。機材を搬入してセッティングしてファーストカットを撮るまでに2時間はかかる。高いスタジオだとメイクだけの待ち時間を使ってしまうのはもったいないので、近くにレンタルスペースを借りて、そこでメイクの準備をしてもらうということもやっています。数時間短縮できるだけでバカにならないし、その分スタッフを増やして、さらに搬入搬出の時間を短縮できるかもしれません。レンタルスペースは増えているので、たとえば喫茶店や居酒屋を借りてのロケのときも近隣に確保しておけば、メイクやスタッフの昼食などでも使えて安上がりになることもあります。



経験値の高い人を現場に呼ぶこと

映像表現のテクニックなどは、YouTubeやセミナーで学べますが、今回ご紹介してきたようなことは、わたし自身が20年の間に現場で体験したり、先達から学んできたことです。こういったことは経験しないと学べないですし、仲間同士では気づけません。一番良いのは経験値が高い人を現場に呼ぶことだと思います。今は昔よりもSNSなどでダイレクトにオファーすることができますから声をかけてみてはどうでしょうか? 他の現場に技術スタッフとして参加してみるのもいいですね。そこでのやりとりによって、現場のホスピタリティも学んでいけると思います。