生成AIを駆使して作品作りに取り組む映像ディレクターが教える少人数・短時間でクオリティーの高い映像作品を作るための秘訣とAIとの向き合い方
『生成AI×映像制作 解体新書』
2024年9月1日発売
B5判 240ページ
定価:本体3,000円+税
ISBN 978-4768319604
TVCM、映画、配信ドラマなどの現場で、映像ディレクターとして活躍する曽根隼人さんが実際に生成AIを活用して作った映像をもとに、その作り方を解説していきます。
生成AIは映像クリエイターの創作活動のためのアシストツールです。これをうまく活用することで少人数・短時間でもクオリティーの高い作品を作ることもできます。
本書では実際の現場で生成AIを活用してきた曽根さんが生成AIとの上手な付き合い方についても優しく紐解いていきます。
【著者】
曽根隼人
BABEL LABEL所属 ディレクター / 株式会社Vook顧問 TVドラマ「憑きそい 」「インフォーマ」「封刃師」「乃木坂シネマズ〜STORY of 46〜」を監督。 無印良品のパリでのプロモーション映像”TOKYO PEN PIXEL”では世界三大広告祭の一つ「ONE SHOW」や、アジア最大の広告祭「ADFEST」、「SPIKES ASIA」をはじめ多くの賞を受賞。大村市のPR動画”大村市なんて大嫌い”では、「福岡広告協会賞」「ぐろ~かるCM大賞2019」で受賞した。 全国にクリエイティブな映像を伝える番組、NHK Eテレ「テクネ 映像の教室」「うたテクネ」では、プロデューサーとして参加。 X
目次
1章:AIツール紹介
ひとえに「生成AI」と言えど、その用途や分野は非常に多岐にわたります。映像制作の分野においても、生成AIは様々な形で利用されつつあります。例えば、物語の構成やシナリオの作成、絵コンテの描画、画像の生成、動画の編集、さらには3Dモデルの生成など、AIにより多くの作業の簡略化が可能となりました。本書で主に使用するAIツールに絞り、操作画面の説明や料金プランによる違い、各AIツールにおける独自の特徴、具体的な活用方法などを紹介します。各ツールの特徴を理解し、どのツールがどのタスクに最適かを見極め、AI×映像制作という新たな潮流に飛び乗ってみましょう。
2章:生成AIでCMを作る
生成AIを活用した映像制作は、近年急速に発展している技術のひとつであり、これから映像クリエイターや映像業界に多大なる影響を与えるテクノロジーになる可能性を秘めています。従来の映像制作では多くの人材や高価な機材が必要でしたが、生成AIを駆使することでその一部を置き換えることが可能になるかもしれません。
小規模な体制でのプロジェクトや自主制作の可能性は生成AIを活用することで広がっていくでしょう。また、生成AIを活用することでこれまでは考えられなかった新しい表現も生まれるかもしれません。さらに、アイデアを迅速に映像化することで、より具体的なプランとして関係者に共有し、アイデアをより精度の高いものにブラッシュアップすることもできます。しかしながら、生成AIはまだ完全に成熟してはおらず、不自然な結果が出力されてしまうことも多々あります。まずは、その結果も含めて楽しみながら、生成AIを使った映像制作がどんなものなのかを体験してみましょう。
3章:最新の動画生成AIを体感する
これまでの動画生成AIは、人物やオブジェクトの一貫性を保つことが難しい状況でした。ここにきて、Luma AIとRunwayが急激な進化を遂げました。Luma AIという企業は「NeRF」という技術を用いて、スマホひとつで3Dモデルを制作できるアプリを提供していました。そんな3Dモデルを大量に学習してきたLumaが突然リリースした動画生成AI「Luma Dream Machine」は、驚くようなクオリティの映像を次々と生み出し、AI業界において大きく注目を集めました。また、Runwayも有料プランで利用可能な高品質な動画生成機能「Gen-3 Alpha」を発表。SoraやVeoなどのハイクオリティな動画生成AIに匹敵する映像を生成し、Web上に公開されました。
カメラワークはよりダイナミックに、被写体の破綻もこれまでの映像生成AIに比べ圧倒的に少なくなり、これらの進化したツールは、映像生成AIサービスにおけるひとつの到達点のようにも感じます。本章では、Midjoruneyで生成した画像をベースに、Luma Dream Machineの「image to Video」、プロンプトから直接映像を生成するRunway Gen-3の「Text to Video」を使い分けながら映像作品を制作していきます。
4章:写真から映像スライドショーを作る
複数の写真をベースにして制作するスライドショー映像は、結婚式のオープニング映像やエンディング映像、また企業の社内イベントなど様々な場面で使用されるため、映像関係の仕事をしている方であれば、一度は制作した機会があるのではないでしょうか? この章では写真をベースにしたスライドショー映像を生成AIを駆使することによって、これまでに見たことないような映像に仕上げる方法を解説します。
5章:Stable Diffusion ComfyUIを導入する
生成AIの多くのサービスはクラウド上で生成されるため、PCのスペックを問われることなく生成ができ、スマホやタブレットからプロンプトを打ち込み生成することも可能です。一方、月額料金が必要だったり、常にオンライン上で管理されているため制作の自由度の幅が狭まるなど、クリエイティブの環境として完璧なものではありません。
Stable Diffusionは他の生成AIのようなクラウド上ではなく、ローカル環境(個人のPC内に構築された環境)で独自に動かすことができます。ローカル化することで、使用しているPCのスペックに依存しますが、制作の自由度が増え、無料でも制限なく生成可能などの恩恵を受けることができます。また、データが自身のデバイス内にとどまるため、機密情報やプライベートなデータを扱う場合にも安心感があります。
Stable Diffusionのユーザーインターフェースは複数存在しますが、中でも本章で紹介するComfyUIを活用することで、その他の生成AIサービスとは一線を画すほどのカスタマイズが可能となり、よりイメージに近い画像や動画を生成することが可能になります。
本章では入門編・応用編に内容を分けComfy UIの導入方法を中心に、カスタムノードを使ったモーフィング映像の作り方を解説します。ComfyUIのノード画面は一見複雑に見えますが、慣れてしまえば快適かつ拡張性の非常に高いツールになるので、この機会にぜひ導入してみましょう。
6章:生成AIと3DCG
ここまで扱ってきたAIを駆使した映像は、短時間でハイクオリティな映像を生み出せる点では優れていましたが、「もっとカメラを下から」「被写体の動きを微妙に変えたい」など痒いところに手が届かないところが難点でした。それは、私たちクリエイターにとって致命的な問題でもあります。そこで、個人的にAI×映像制作のコアとなると考えているのが、この章で取り扱う「生成AI×3DCG」です。
無料で使えるオープンソースの3DCG制作ソフト「Blender」と生成AIと組み合わせることで、従来の3DCGを使った映像制作における膨大な時間を短縮しつつ、カメラワークやライティング、被写体の動きなどを細かくコントロールすることを実現します。本章では、入門編・応用編に内容を分け、テイストの違う3DCG映像を制作していきます。今後の生成AIの成長にも期待しながら、「生成AI×3DCG」での映像制作にぜひチャレンジしてみましょう。
巻末対談 茂木健一郎×曽根隼人
現状では人間の脳のメカニズムは解明されていないことも多く、AIがいくら発達しても人間の意識や感情を再現することはできないと言われています。脳科学者であり、生成AIやクリエイティブへの造詣も深い茂木健一郎さんをお迎えし、AIとクリエイティブをテーマに対談を実施。茂木さんにAIにクリエイターがどう向き合うべきか質問を投げかけてみた。
『生成AI×映像制作 解体新書』
2024年9月1日発売
B5判 240ページ
定価:本体3,000円+税
ISBN 978-4768319604