夏と言えば海、緑が濃くなった山々や高原、青い空に白い雲、総じて色が濃くなる季節です。その色合いを強調することで夏らしさが生まれます。
夏の撮影で重要なのが天気。他の季節以上に、「晴れ」に恵まれることがいい映像を撮るための必須条件になってきます。やはりぎらぎらとした太陽に照りつけられた風景こそ、夏らしい映像になってくれます。
もちろん暑さにやられないように、人も機材も注意が必要です。色を強調するときに有効なのが偏光(PL)フィルターです。普段の使用は好きずきがありますが、夏の海や空を撮影するときには効果的なオプションです。


夏の海


作例①は紀伊半島を走る特急くろしおです。肉眼で見たときには海が少し白く光っていましたが、偏光フィルターを使用することで海面の反射が抑えられ、海の色がより深く表現されました。背景に浮かんだ夏雲も、よりくっきりと見えてきます。

作例① 海岸沿いを走る 紀勢本線 岩代-南部

高原の空


高原で見る青空は爽やかな夏のイメージです。平野では夏の湿気で空が白く見えるような日でも、標高の高い場所では空気がカラッと乾いて、空も高く見える日があります。こんな日は高原の夏を狙うチャンスです。
真っ青な空と真っ白の雲を強調するために、ここでも偏光フィルターを使用してみました。作例②のように夏雲が出ているときには、雲の形を含めたバランスを考えながら撮影してみてください。
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作例② 高原を走る列車 小海線 小淵沢-甲斐小泉

夏の水田


春の田植えから1~2カ月、この時期の水田は緑の絨毯のようになっています。夏の季節感と一面の緑でシンプルな画を作ることができるのが、この季節の水田の良さです(作例③)。
ただ、水田はほぼ全国にあるので、なかなか地域性を出しづらいものです。水田の風景ばかりでなく、その路線を走る特徴ある車両や、その土地ならではの風景も合わせて撮影しましょう。
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作例③ 夏の水田風景の中を行くトロッコ列車 南阿蘇鉄道 阿蘇下田城ふれあい温泉-南阿蘇水の生まれる里白水高原

濃い色の木々


山の木々は暑くなるに従って、どんどん濃い緑色になっていき、夏らしさを演出してくれます。ただし、AEノーマルで撮影すると山の色の濃さでオーバーになることもあるので、露出を決定するときには、山の色の出し方を考えながらアンダーに補正する必要があります。
長良川鉄道を撮影した作例④も、ややアンダーめに設定。こうすることによって、より色の濃さを表現することができます。
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作例④ 渓谷沿いの濃い緑を強調 長良川鉄道 相生-郡上八幡

夜明けの早さ


作例⑤は新潟県の柏崎付近を走る上りトワイライトエクスプレスで、朝6時頃の撮影です。夏の時期は日照時間が長いことも大きな魅力のひとつです。他の季節では日が出ていない時間帯でも、夏であれば撮影をすることが可能になります。特に夜行列車では、普段ならまだ暗いうちに通過する区間を狙うことができます。こんなチャンスには、ぜひ早起きして出かけてみたいところです。
夏の間は1日12時間以上の撮影が可能で、体力的には厳しいですが、充実した撮影ができるのも魅力です。
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作例⑤ 早朝の夜行寝台特急トワイライトエクスプレス 信越本線 青海川-鯨波

今月のお奨め路線 伯備線


伯備線は岡山県の倉敷から姫新線に接続する新見を通り、鳥取県の米子に近い伯耆大山(ほうきだいせん)駅へ至る路線です。山陰と山陽を結ぶ陰陽連絡線として、特急やくも、スーパーやくもが走っています。
近年は夜行列車が極端に少なくなりましたが、電車寝台の特急サンライズ出雲は健在です。伯備線内では北に向かうこの列車が、カーブの関係で珍しく東南方向を向くのが根雨に近いこの場所です。ここでは列車のサイドにきれいに光が当たります。サンライズの通過は8時半頃、山あいの撮影ポイントですが夏の間はしっかりと日が当たります。少しだけ早起きをして出かけたい撮影ポイントです。サンライズ撮影後は、沿線各地で特急やくもを狙いましょう。日中は山深い所を行く姿を、夕方になれば岸本-伯耆大山間で名峰大山(だいせん)をバックに走る姿も撮影できます。

黒坂-根雨 特急サンライズ出雲


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【筆者プロフィール】佐々倉 実
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鉄道映像作家。小学生の頃から鉄道写真を始め、大学生の頃、当時鉄道員をしていた今井洋氏と出会って以来、製作活動をともにする。現在は、佐々倉氏が撮影、今井氏が編集を担当し、雑誌やDVDパッケージを中心に鉄道ビデオを製作している。DVDに『魅惑の蒸気機関車 四季SL紀行』、『日本の鉄道 新幹線・特急編/蒸気機関車ローカル線編』などがある。2010年7月に『感動の美景鉄道』(MAXAM)が発売された。
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