木村博史(クリエイティブディレクター)

こんにちは、クリエイティブディレクターの木村博史です。今回は会社や組織で動画制作をするときにぶつかるふたつの困ったこと、ひとつは作った動画が見るのも辛い素人感のあるものになってしまうこと。もうひとつは会社や組織でどうすると上手くマワる制作チームにできるのか、についてです。

企業や組織で動画内製化のサポートをしていると、撮影と編集が上手になっていくと次にクオリティと運営についての課題が出てきます。この解決法が一般の方には映像制作の世界が別世界すぎて何が解決の糸口になるかもわからないのです。だからこそ少しの気づきでグッとよくなる項目でもあるのです。


動画での表現をふだんとは違うことに気づく

1.動画での話し方を意識しよう

動画が素人っぽくなってしまう原因に「話し方」があります。どうしても語ってしまうので一文が長くなりメリハリがなくなってしまいます。だからこそ「短く区切って話す」ことを意識してもらいます。例えば、以下を比較してみてください。

このように短く区切って話すとメリハリがつき視聴者に伝わりやすくなります。またリズム感が生まれるので素人っぽさの解消にもなります。

2.奥行きのある立体感を意識した表現を心がけよう

動画から素人感を払拭するには奥行き感を意識した表現も効果的です。

例えば、商品を紹介する際に商品を持つ手をカメラに向かってグッと突き出すと、商品が強調されるだけでなく映像に奥行きが生まれ視聴者にグッと伝わります。さらにアクションに間(ま)をとる「タメ」も大切。試食するときなどは口元で一度動きを止めて「タメ」を作ってから口に運ぶことで、見せたいポイントを強調して伝えることができます。

いずれもタレントやアナウンサー、プロのクリエイターなら当たり前と感じてしまう項目なのですが、一般の方には目から鱗。気づいてもらって意識して撮影してもらうだけで急激によい動画になるのです。

制作した動画に自信を持てるようになることは「継続」につながっていきますので、動画で求められる表現を意識できるようになることは内製化を目指すためにとても大切なことなのです。


企業や組織で動画制作を上手くマワすためのチームづくりのポイント

1.プロの制作体制を模倣してみよう

企業や組織でクオリティとは異なるフェイズで壁になるのが動画制作チームの組成です。

どうしても担当が部署単位だったり、ひとりで取り組んでいたり、と本業の業務分掌に合わせて動画制作チームが決められがちです。でもこの本業の業務内容に合わせた担当配置が上手くいかないネックになっていることも多いのです。

この解決には、撮影、編集、出演、ディレクションとそれぞれの役割が明確なプロの制作体制を模倣してもらうようにしています。部署単位でチームを組成するのであれば、課長職がプロデューサー、課長代理がディレクター、主任がアシスタントディレクターというように実際の役職に応じて制作チームを組み立てます。

まず役職で指示系統と責任関係のチーム体制を作って、そこにカメラが得意、PCが得意、クリエイティビティがある、などのスタッフの特性の考慮を加えていきます。さらに本業の業務による制約も意識して、スケジュールを確定しづらく外出も多い営業担当者は撮影の時だけの出演者になってもらったり、内勤は撮影の事前準備などに注力してもらったりとマワるチームを組み立てていきます。この役割分担の組み立てを行うからこそ管理職にもプロデューサーやディレクターのポジションで絡んでもらうことが大切です。


2.本業があるからこその柔軟性も大切 みんなが何でもできる体制づくりを

さらに本業があるからこそチームでの柔軟性も大切。動画制作の過程で予期せぬ問題や人事異動など変更が生じることは当たり前。この状況に対応できるようメンバー全員が柔軟に役割をシフトできる体制づくりも意識して運営します。撮影や編集などの役割を動画単位や期間でローテーションするなどです。プロのようにスキルや経験に応じて明確に役割が組まれていないからこそ、そのデメリットを本業の組織力でメリットに変えるのです。こうすることで本業の繁忙期や人事的な状況変化などで発生する問題に柔軟に対応できるチームができあがり継続へとつながるのです。

この連載では企業や組織の動画制作担当者の立場からを中心にお話ししてきましたがいかがだったでしょうか。企業や組織の皆さんは動画制作の仕組みがわからないから難しく感じているだけ。だからこそ動画制作に取り組めば取り組むほど他の人たちとの差別化ができ、社内で「動画を任せられる人」という立ち位置にもなれるのでリスキリングにも最適です。

プロの皆さんには企業や組織のクライアントは、別世界の人だと理解していただき、クリエイティブでは当たり前のことでも、理由や時にはバックボーンから丁寧にわかるまで伝えてあげてほしいのです。

動画制作は請負の形式だけでもなく内製の形式だけでもありません。適宜適時その目的に応じて制作形式が選ばれる時代の中で、これからますます動画が必要とされるものになっていくようにみんなで頑張っていきましょう。



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VIDEO SALON 2024年10月号より転載