Kenkoから10月25日に発売された可変NDフィルター「バリアブルND-W」。今回、一足先にテストをしてくれたのはビデオグラファーとして活躍するY2さん。自然描写を得意とするY2さんにとってNDフィルターはかかせないアイテムだが、はたしてその使用感はいかに…?
レポート●Y2
協力●株式会社ケンコー・トキナー
Kenkoから新しく発表された可変NDフィルター「バリアブルND-W」とは?
今回、Kenkoから新しい可変NDフィルターである「バリアブルND-W」が発表された。
Kenkoはカメラ撮影において、より良い撮影体験を提供するために、レンズフィルターをはじめとしたカメラアクセサリーを幅広く展開しているブランドである。今回はその中でも多くのユーザーが使用する可変NDフィルターを新たなラインナップに加えた。
NDシリーズと言えば、数年前に発売された「バリアブルNDXII」のアップデートに捉えられそうだが、この「バリアブルND-W」はまた別路線の製品とのことだ。
そんなバリアブルND-Wは今までの製品と何が違い、どのようなオリジナリティがあり、どういった人にオススメなのかをビデオグラファー目線でレビューしていきたいと思う。
可変NDフィルター「バリアブルND-W」
前枠を回転することで減光量を調節できる可変NDフィルター。“Xムラ”を抑えた設計で、これまで可変NDフィルターの課題であった広角側での実用可能範囲を広げた。広角24mm(※1)でND2.5~ND128相当まで使用可能(※2)。枠部分には減光量を絞り段数で表記しており、必要なND濃度に素早くセットできる。希望小売価格は77mmが62,700円、82mmが66,000円(いずれも税込)。
※1:フルサイズ換算値。
※2:最大ND128相当までを推奨。ND1000付近まで減光可能ですがXムラ/色ムラが発生しやすくなります。
動画撮影におけるNDフィルターの重要性
レビューをする上で、まずはNDフィルターの重要性を話す必要があると思う。動画を始めてからある程度の経験をしている人ならご存知だと思うが、動画撮影においてNDフィルターはほぼ必須アイテムとも言える。
基本的に高クオリティな動画撮影をする際には、シャッタースピードを適切なスピードで固定し、被写体の自然なブレを意図的に作ることが多い。しかし、シャッタースピードを固定して撮影すると、屋外などでは露出オーバーで白飛びしてしまうことがほとんどである。その際に、カメラのレンズに入る光の量を調節するサングラス的な役割をしてくれるのがNDフィルターになる。
その中でも可変NDフィルターは明るさの段階(減光量)を、前枠を回すことで調節することができるので、とても汎用性が高く、便利な製品となっている。
NDフィルター使用の有無による比較画像
今回は動画を軸に話をしているが、写真撮影においてもNDフィルターはとても活用する場面が多い。例えば、滝や渓谷などで水の流れを滑らかにしたい場合にはNDフィルターを活用し、スローシャッターにして撮影する。他にも晴天時の日中にF値が小さい単焦点レンズを使用する場合、カメラ側のシャッタースピード限界値(1/4000や1/8000)でも露出オーバーになることがあるため必要になる場面がある。
NDフィルターのデザイン(外観)は重要なのか?
個人的な考えだが、カメラというものは性能だけでなく、見た目も重要だと思っている。カメラ自体が高価な買い物でもあり、身につけるファッション的な要素から所有欲を満たしてくれるものだからだ。だからこそ、カメラの先端につけるフィルターもその一部であり、外観を損なわないものが好ましいと思う。
その点においてバリアブルND-Wはフィルター自体が薄く目立ちにくいため、見た目を損なわずにレンズの持つスタイリッシュさが保たれるデザインになっている。
可変NDフィルター最大の課題。Xムラの耐性について
このバリアブルND-Wを紹介する上で、Xムラの少なさはまず最初に取り上げるべき点だろう。
可変NDフィルターは基本的に構造上Xムラがほぼ必ず発生するといっていい。だからこそ、可変NDフィルターのクオリティ差はこのXムラの出にくさが大きな判断基準になると私は思っている。
Xムラ耐性が低い可変NDフィルターでは、どんなに良いレンズを使用したとしても、画質が劣化し、動画や写真のクオリティが大幅に下がってしまう。その点において、このバリアブルND-Wは Xムラに対して大きなアドバンテージを得ていると言えるだろう。
実際に私は様々な場面で、このフィルターを使用し、Xムラの少なさを実感してきた。特にXムラが出やすい広角レンズを使用した際には明確に Xムラの少なさにはとても感動したのを覚えている。
可変NDフィルターの構造上、まったく出ないわけではないが、一番外のムラが起きやすい部分が自然なグラデーションで変化しており、画質の劣化を感じさせない。
さらにこのNDフィルターのフレーム部分に注目してほしい。よく見てみると、フィルターのフレームに減光量の絞り段数が表記されている。
可変NDフィルターは設計上、一番濃度の濃い部分まで減光量を大きくするとXムラが発生しやすくなってしまう。しかし、この表記で可視化し、把握する事で過剰な減光を防ぎXムラの発生を予防できる。
可変NDフィルターの中からバリアブルND-Wを選ぶ一番の理由
可変NDフィルターを選ぶポイントにおいて私が最も重要視しているのが、すべての撮影がこの一枚で完結できるかである。
可変NDフィルターにおける減光量の範囲は製品によって様々である。よく一般的に多く見かけるのが、絞り1-5ストップ(ND2-32)のカバー範囲だ。
しかし、このカバー範囲では晴天時の日中などの光量が多い場面では減光量がまったく足りない。その場合はフィルターの重ね付けなどをして、カバーしたりするのだが、その都度つけたり外したりするのはとても手間であり、フィルターの重ね付けによる画質劣化のリスクも高まる。
それに対して、2〜7ストップ(ND2.5〜128)で、減光量のカバー範囲がとても広い。それにより、単焦点レンズ使用時においても、この一枚でカバーする事が可能になり撮影におけるフィルター交換の手間を大幅に削減できる。
先ほど話したXムラに対する耐性とこの広い減光量のカバー範囲が、数多くある可変NDフィルターの中からこのバリアブルND-Wを選ぶ大きな理由になっているのは間違いない。
環境を選ばずに使用できる撥水、撥油加工
以前まで使用していたバリアブルNDXIIにはこの機能がなく、旅をしながら撮影する私にとっては撥水、撥油加工はとても嬉しい限りだ。
私は屋外での撮影がほとんどの割合を占めており、夏場の山や海だけでなく、風の強い砂丘、冬の雪山など過酷な場面でも多く撮影している。そのような場面ではどうしてもフィルターに汚れや水滴が付着してしまうリスクがあるので、この撥水、撥油加工はとても嬉しい。
ビデオグラファーにとって至高の一枚
最後に私からみて、どういった撮影スタイルの人にこのバリアブルND-Wがオススメか話したい。
大前提として、多くの動画制作者や動画クリエイターにオススメできる製品なのは間違いない。それに加えて、あえてピンポイントでオススメするのであれば、ラン&ガンスタイルのビデオグラファーにはピッタリな製品だと私は思っている。
まさに私自身がその条件に当てはまるのだが、屋外の自然光で時間帯によって大幅に光の条件が異なる場面では、可変NDフィルターはおおいに活躍する。
さらにこのバリアブルND-Wは一枚でほとんどの撮影をカバーできるので、フィルター変更の手間がいらず偶発的な美しい瞬間を逃さずに記録できるだろう。撥水、撥油などの細かいポイントも、撮影を大きく助けてくれるのは間違いないと言える。
今後、私もこのフィルターを長く使用し、美しい瞬間を記録し続けたいと思う。
Y2(Yusuke Yamasaki)
シネマティックビデオグラファー。
2019年に旅コンテンツをメインに映像制作を開始し、1年半後に前職を退社。現在はフリーランスとして東京を拠点に、観光、スポーツ、アパレルなど幅広い業界の映像制作に取り組む。同時にSNSコンテンツクリエイターとしても活動しており、InstagramやYouTubeなどで映像を発信。
日本では珍しい、壮大な自然をとらえたシネマティック表現と、映像を引き立てるカラーグレーディングを得意とする。自身の活動を通して、「動画」や「映像」の本質的な魅力、素晴らしさをより多くの人に伝えていくことを目指している。