CM撮影も数多く手がけているフォトグラファーの斎藤卓行さんに、オフィスでのインタビューを想定したライティング講座を実践していただく。照明機材は企業内での動画撮影や、ビデオグラファーの取材撮影を想定し、大光量のものではなく、スーツケースに入れて公共交通機関で持ち運べるものとした。単に美しく撮るというだけでなく、内容に合わせてニュアンスをどうやって作っていくのか。

● 本記事は、同テーマで開催されたセミナーをまとめたものです。セミナーに参加された方が映り込んでいます。ご了承ください。動画版はVIDEO SALONプレミアムコンテンツに加入すると視聴できます。また単体で購入視聴することも可能です。記事の最後にあるリンクを参照してください。

講師   斎藤卓行   Takuyuki Saito

約50カ国放浪後、フォトグラファーとして独立。2010年に常盤司郎監督の短編映画『クレイフィッシュ』で初映像撮影。同作品がShort Shorts Film festival &Asia2010のミュージックShortクリエイティブ部門にて優秀賞と観客賞を開催初のダブル受賞。また、新・鎌倉映像フェスティバル2012で最優秀作品賞を受賞。以後、グラフィックと映像を両立しWEB、CMで活躍中。








スーツケースひとつに収まる機材で

使用する照明機材(協力:Aputure Japan)

amaran COB 60x

65W出力の小型のバイカラー点光源LEDライト。31,240 円



amaran 200x

コンパクトな筐体の200W バイカラー点光源LEDライト。52,800円。



Aputure AL – MC

光量5Wの手のひらサイズのパネルライト。18,370円。



amaran P60c

小型軽量の出力60WのマルチカラーパネルLED。51,590円。



Aputure Light Dome mini III

上記の60xや200xで使用できるソフトボックス。このように平たく折り畳めるのでスーツケースに入る。



このようにスタンド含めてスーツケースひとつに収まった。収録時は実際は斎藤さんが持ち込んだしっかりしたスタンドを使用した。







インタビューする場所を決める

コワーキングスペースで撮影する

スタジオではないのでその場所の条件に合わせて最善の策を考える必要がある

今回はあえて下見をせず、打ち合わせもなく、初めていく場所でインタビューを撮影するという設定にしました。私はできるだけ撮影のスペースを広く確保したいと考えます。人物とカメラ、人物と背景がなるべく距離がとれるところということで、シェアオフィスの中でもイベントを行うスペースを使うことにしました。ここはテーブルや椅子を移動させることができます。 

大きく窓があり、入ってきたときは夕方でしたが、撮影時は夜になるので、時間経過によって太陽が動いて条件が変わることもありません。

まず、その場の照明がコントロールできるかどうかを確認します。照明をすべてONにする、もしくはダウンライトのみにすることができます。照明をすべてOFFにすると、シェアオフィスのほうも消えてしまうので、それはできませんでした(シェアオフィスが終了してから、全消灯してからのライティングを後ほど試すことができました)。

スタジオではないので、その場所での制限があるなかで照明を考えていくことになります。ただライトを持ち出す前に、まだまだやっておくことがあります。



シェアオフィス・コワーキングスペースであるGINZA SCRATCHをお借りして、そこでインタビューを撮ると想定して、ライティングを実践していく。天井高はそれほどなく、場所によってはライトを置くスペースが限定され、また窓外からライティングすることはできない場所。スタジオではなく、周囲から光が入る環境でどうやって撮影するか。



もっとも広いスペースを利用して窓外も生かして撮影することに。撮影時間帯は夜で陽は入らない。




その場所の照明事情をチェック

● ライトをすべてON



● ダウンライトのみ



● ライトをすべてOFF







カメラ位置、人物の位置を決め、背景を整える

人物の位置、方向を決める

人物は壁や窓からある程度離れたところ。向きは左右対称なのでどちらからでもいいのだが、実際に窓外を見てみると、逆の方向からだと、店の看板が映り込むことがわかった。不必要な情報は入らないほうが良いので、こちらの方向にする。白い壁ばかりだとつまらないので、斜めにしてちょっと窓を入れようかと、なんとなくのアングル感を肉眼で確認する。どうせ撮るなら、できるだけ美しく撮りたいと思う。そのためにはアングルも大切だ。どういうボケ方をするのかが重要になる。そこでまずカメラはできるだけ引く。一番引いてみて、そこから寄っていくことは簡単だからだ。





カメラの位置の決め、大体の構図を決める

いきなりインタビュー対象であるご本人が登場することはあまりないと思うので、ある程度の情報は持ちながらも、アシスタントやクライアントに座ってもらって構図を決めていく。椅子はできれば背がないタイプのほうが余計な情報が入らないので良いと思う。

レンズの焦点距離はフルサイズで50mmから70mmが多い。85mmより望遠だと表情がメインになるので、1カメだと背景はどこでもよくなってしまう。その場所の雰囲気も生かしながらとなると、50mmから70mmが適当だと思う。

カメラの高さは女性なら目の位置よりも若干上からさらに上、男性は目よりも下、たとえば口くらいにすることが多い。





背景の処理、環境光を処理する


背景を整えていく。会場の人を許可をとった上で、テーブルや椅子の位置が自然かつバランスがとれるように動かし、観葉植物の入り方を画面を見ながら調整していく。人物の左側の頬に不自然な色が入っているが、これはシェアオフィスの天井にある照明からの光を受けていることが分かった。それを消すことはできないか相談してみる。結果的に照明を部分的に消すことができなかったので、次ページのような対策をとることにする。

背景に不自然な光があったが、ダウンライトがひとつだけ色温度が違っていたせいだった。会場の人の許可をとった上で、その電球を外させてもらう。