新幹線映像の魅力は、なんといってもそのスピード。走る車両も多彩で、映像の被写体として魅力的です。ところがいざ撮影するとなると、技術的にひじょうに高度なものが要求され、さまざまな制約もあって難しいことが多い鉄道でもあります。9月号は新幹線特集の第2弾、「基本技術編」として、新幹線を撮影するうえで注意すべきポイントを解説しています。
九州新幹線N700系「さくら」。(この画像はスチル写真です)
【シャッター速度】
シャッター速度は60分の1秒が基本です。新幹線が高速で走るからと高速シャッターで撮影した場合は、在来線の列車以上にちらついて見えます。
【露出】
新幹線は白など輝度の高い塗装のため、背景の明るさや色合いで露出を決定すると白飛びを起こしやすくなります。もうひとつ、白飛びが起こりやすい原因が先頭車の傾斜の長さです。順光で撮影する場合は先頭車の傾斜がもろに太陽方向を向くことで側面に比べて極端に明るくなり、白飛びを起こしやすくなります。
白飛びをしたときの問題は、単に見づらいだけでなく、先頭車の凹凸が消えて平面的に見えてしまうことです。対処法としては、アンダーに補正することになります。アップで正面を撮影する際には、むしろ背景の露出をぎりぎりまで切り詰めて、一部の反射面が白飛びをするのは許容して撮影するようになります。
白飛びを起こした画像。露出を背景に合わせると正面が白飛びしやすい(左)。新幹線の車両の全面は傾斜面が長く、光を多く受けるため露出オーバーになりやすい(右)。
順光撮影の場合、背景をギリギリまでアンダー補正することで白飛びは軽微になり、車両の立体感が出てくる。 山陽新幹線 新山口―厚狭
あえて半逆光で狙うと、白飛びするところが一部になり、より立体感が出る。
【朝夕の光を効果的に使う】
朝夕の印象的な光や夕暮れの青い光などの中で新幹線を撮影すると、白い車体に光が映り込んで、よりその色合いを表現することができます。
夕日を受けて走る700系。白いボディが茜色に染まって、印象的な映像になる。 山陽新幹線 相生―岡山
残照に輝く新幹線は、遠くても存在感がある。 山陽新幹線 相生―岡山
今月のお奨め路線 山陽新幹線
相生-岡山 千種川橋梁
新大阪と博多を結ぶ山陽新幹線には、防音壁がなくて撮影しやすい場所が点在しています。その中でも撮影名所になっているのが、西明石-姫路間の姫路に近い加古川橋梁、相生-岡山間の吉井川橋梁、そして同じく相生-岡山間の千種川橋梁という3つの橋です。
駅間の長い新幹線でも川と交わる橋梁は地図を見れば場所も分かりやすく、遠くから風景的に撮ったり、列車アップのフォロー、比較的近づいて列車中心の映像にしたり、新幹線の撮影ポイントとしては自由度の高い撮影ができます。撮影場所だけでなく、朝夕の光や天候などをうまくとらえて、いろいろな撮影に挑戦してください。
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【筆者プロフィール】佐々倉 実
鉄道映像作家。小学生の頃から鉄道写真を始め、大学生の頃、当時鉄道員をしていた今井洋氏と出会って以来、製作活動をともにする。現在は、佐々倉氏が撮影、今井氏が編集を担当し、雑誌やDVDパッケージを中心に鉄道ビデオを製作している。DVDに『魅惑の蒸気機関車 四季SL紀行』、『日本の鉄道 新幹線・特急編/蒸気機関車ローカル線編』などがある。2010年7月に『感動の美景鉄道』(MAXAM)が発売された。2011年7月には新刊『全線全車種全駅新幹線パーフェクトガイド』(講談社)が刊行。
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